美術鑑賞社 05(zero-five)ギャラリー
2005年1月10日


 

 第33回日本文人画府展

 畑佐祝融理事長の新体制が、2年目を迎えた。水墨画の世界は、現在、さまざまな表現の可能性を求めて試行錯誤しているが、日本文人画府は、あくまで『南画精神』に基づく表現様式を貫くなかに、新たな可能性を探ってゆかねばなるまい。

 加藤弥寿子会長の「緑陰」(=作品写真右上)は、柔らかな筆使いに、緑陰のニュアンスが繊細に表され、渓谷を流れゆく水音との、しみじみとした情趣を醸成。畑佐理事長「本栖湖」(=作品写真左上)は、雲間から射す陽光が湖面に映るその神秘性に、絵の内面化を感じさせる。今年も幅8mを超える六曲一双の大作を発表した、湯原良江の「かぐや姫」(=作品写真右側下)は、大自然の中の生命の根源的物語性を形象化。

 船木棗月「孤立不動日本海」(=作品写真左側下)は、自然が形作る不思議な造形美を描く。白石有戔「富岳新雪」の冬の冷気の透明性。平山牧秀「四人乗りのゴンドラ」の峨々たる山岳の空間への視点。玉置勤「新緑の忍野」の富士の季節感。橋場き樹の「湯川源流」に見るダイナッミクな水のリズムの描写力。玉野桂慧の「香高山五百羅漢」における、力強い石仏像の実感性。

 今回、受賞をめぐる票が、かなり割れた。同レベルの作品が多かった為である。小沢梅香の「生命」=文部科学大臣奨励賞は、濃密な樹木描写。勝見光雪「春のはさ木」=日本文人画府賞は、樹々の季節感。土端羊石の「峰」=東京都議会議長賞は、山岳の厳しい量感描写。クリティック賞には、力強くユ―モラスな笹川和也「雷神龍」と、石黒隆彦の「兵馬俑の面に」の構成的イメ―ジ。

 その他、新田幹男「愛犬の散歩路」、小池汀雪「早春への兆し」=篩雪賞。岡野美恵子「生命」=美術鑑賞社賞。北村洋子「四方街の人」=全日本美術新聞社賞。及び高野雪堂、宮園美枝子、藤田光藤、高尾和楽などを挙げておく。【佃堅輔】

(10・5〜14、東京都美術館)

 マ日本文人画府のHPはこちらです。

 


第36回 日 展

 第36回日展を迎えて 理事長 橋本堅太郎

 日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の五部門は陳列点数や陳列場所、入選率など、それぞれに問題を抱えてはおりますが、より良い展覧会を目指して、努力し、協力して参りました。

 鑑賞者の方々とは、日展開催中に会場においでいただければ、何かしらのイベントが開かれており、出品者との交流が可能な状態が整いました。

 作家は、時代の底に潜む思潮を模索しながら、自らの表現を追い求めています。そのため、時に孤独に耐え、時に日常の現実の中で心は揺れ動きます。

 その表現は、伝統の技術の結晶として、あるいは新しい感覚の実験として、今度の日展で披露してくれることでありましょう。

 どうか、これ迄以上のご支援、ご鞭撻をお願い申し上げる次第です。

 


 

 第1科 日本画

 審査所感 主 任 鈴木竹柏

 本年度の第三十六回日展日本画の搬入数は、昨年にくらべ若干の減少をみたが、応募作品は、意欲的で前向きの作品を、出来る限りとるようにした。また、伝統的なよい作品もとった。

 残念ながら選にもれた方々も、次回に向かって勇気を出して勉強してほしい。また、新入選が三十四点もあったことは、日展日本画に新風が入り頼もしい。

 特選について

 特選の作品は、新しい感覚と発想の自由さ、そして技術がすぐれ、将来に向かって期待出来る作品が選出された。

牡丹洛陽の朝   高山辰雄
光散華   大山忠作
山気   岩澤重夫

 


 

 第2科 洋 画

 審査所感 主 任 清原啓一

 第36回日展洋画応募作品は、やや少なくなったが、入選者は心もち多くなった。

 よい作品を選び、よい展覧会にしようと、審査員全員の真剣な協力を得て、審査は厳正かつ極めてスム―ズに行われた。その結果、若い人々の気力溢れる新鮮な作品が多く入選となり、反対に、長年同じモチーフを同じ構図で描いていて、自分でわからない内にマンネリ化しているような作品は選外となっていった。

 特に作家として注意したいのは、誰も描いていない特色のあるモチ―フに着眼して、独自の個性豊かな新鮮な作品を描くことで、今後もお互い、よい作品を描くことが、日展をよくすることにつながる。一般鑑賞者の多くの人々も願っているところだと思う。

 このように審査はスム―ズに行われたことは審査員全員のご協力の賜物と感謝し、また、入選された方々に心からお喜び申し上げます。ただ、落選された方々は、入選者よりはるかに多いのですが、これにめげず、来年更なる努力を期待しています。

 特選は、それぞれの表現方法で、自分の性格を出し、バラエティに富んだ作品が選ばれたことは大変嬉しい。

演奏家   庄司栄吉
紅庭に遊ぶ   清原啓一
壁掛けのある部屋

田中 実

 


 

 第3科 彫 刻

 審査所感 主 任 中村晋也

 本年度の出品点数は僅かに減じたが、一方斬新な形態に対する果敢な挑戦や、ユニークな着彩に意欲を示すものなど、今後の活力ある展開への予兆を示す新たな作品が見られた事は一つの収穫であった。唯それらの中には、意余って言葉足らざる風の、いささか未消化な作品もあって、今後一層の研究と努力を期して待ちたいところである。

 審査は写形の技量のみに偏する事なく、そこに宿る精神性の豊かさや、新鮮な感性を大切にしつつ、慎重且つ厳正に行われた。その過程で将来に期待を託するに足る、多くの優れた作品に出会えたことを喜びとしたい。また僅少差で残念ながら選に洩れた作品の中にもその片鱗は感じられた。従ってこれに屈することなく、今後の奮起を望みたいと思う。

 特選について

 練度高く、表現内容と形態の融合に一日の長があり、新鮮にして豊かな可能性を含む秀作が選ばれた。さらに真摯な研鑽と一段の雄飛を望むものである。

新 晴   雨宮敬子
つたえあい   橋本堅太郎
鬱 勃   長谷川 昂
      


 

 第4科 工芸美術

 審査所感 主 任 大樋年朗

 第36回日展第四科工芸美術の応募点数は、1,086点であった。

 工芸美術は、多種多彩で、他のジャンルと比し素材的にも技術的にも極めて複雑な制作である。工芸美術部門の審査は、従来より各種目とも極めて厳選の結果となった。

 今や世界は、第二次大戦後、半世紀の間に徐々に築き上げられてきた秩序の崩壊が起き、各民族間あるいは各文明や宗教間の対立、闘争が続き混乱が続いている。

 我々の工芸美術の世界に於ても思想的、合理的な変化を含めての時代感覚の変容、更に新素材、その処理技術の進歩等、急激な作品の多様化に連動しております。

 今回は、これらの事柄に対応して一点一点審査会で慎重に討議を交えながらの厳しい姿勢で臨んだものである。

 我々の工芸美術第四科は、日展に参加して今年目出度く、77年目の『喜寿』を迎え、まことに嬉しい限りで、これからの世界の工芸のため、日本の工芸美術発展のため、更に次世代の工芸美術に連動すべく、共々作家が心して制作をお願いしたい。

 また、今回残念な結果になった作品の中にも、今後が期待出来る作品も多々あったことを特筆し今後益々のご精進を願うものである。

 特選について

 特選作品は、極めて厳しい審査で選考に当たった。これまでの定番形の作品より、更に更に日展の工芸美術の代表作品であり、次世代に向けての創作性の強い新鮮な作品を決定したものであって日本の工芸の代表作品を選んだものである。

生まれ変わるいのち〔人形〕

奥田小由女

茶畑〔磁〕   河合誓徳
悠久の時〔漆〕   赤堀郁彦

文部科学大臣賞

 


 

 第5科  

 審査所感 主 任 津金孝邦

 中には見当外れの作品もありましたが、八千点を越す出品の中だから、と言うつもりはありません。確信に満ちた作品もあるのですから。書の魅力は、古典を源流とする流れの先に、先人の努力の結晶が現在の姿となった。自然に極く自然に成立したものだと考えています。これに磨きをかけるのは私共でなくてはなりません。だからこそ、八千点に及ぶ作品が応募となって、情熱が一点集中してくるのです。

 漢字作品の諸相は、大字・中字・小字、何れにしても、力のこもった筆致が、作者の心情となって林立の観を呈したと言ってもよろしいかと思います。

 仮名作品では、長文のものから、短文を書きこんで空間を豊かに遊ぶ、という境地の作品が目立ちました。もちろん、帖や巻子といった仮名本来の姿に、情熱をうちこんだ仕事にも感激を深めました。

 篆刻作品では、方寸の世界に刀を当てた渾身の命が、印材に実に良くちりばめられて、ここにも今の時を告知しているものが濃厚です。

 特選作品は、自ら至るところに至ったという趣があります。数々のライバルにせり勝った面々には、何故か格調の高さが目立ちました。或いは強く、或いは繊細に、そして思いきり華やかに、そして剛柔に、夫々が活躍の舞台を得たことに祝福をおくります。

 さて、今年の特長のひとつに、調和体の99点増ということがあります。民族の言語文化と書が、正に一体化することの喜びを禁じ得ません。

 今ひとつ、ご関係のご努力が実り、壁面とケ―スが増え、計16点の陳列増となりました。

柏郷雨花菴口占

村上三島

旅 愁   杉岡華邨
ふゆごもり   池田桂鳳

文部科学大臣賞


 

 日展巡回日程

 既に東京での会期を終了した第36回日展の、今後の巡回予定は以下の8地区。◆京都=平成16年12・18〜平成17年1・18/京都市美術館◆名古屋=1・26〜2・20/愛知県美術館ギャラリ―◆大阪=2・26〜3・21/大阪市立美術館◆福岡=3・26〜4・10/福岡市美術館◆富山=4・23〜5・15/富山県民会館美術館◆長崎=6・11〜7・3/長崎県美術館◆福井=7・16〜8・7/福井県立美術館◆山形=8・12〜8・28/山形美術館

 マ 社団法人日展の公式ホームページはこちらです

   


    

 プロムナード

 新年、明けましておめでとうございます。

 昨年中は一方ならぬご愛顧をいただき、誠にありがとうございました。本年もスタッフ一同、一層の精進をいたす所存でございます。なにとぞ宜しくお引き立てのほど、お願い申し上げます。

 弊社関連のホ―ムペ―ジのアクセス数も、年々増加の一途をたどり、今や年間二百万件に迫ろうとしています。これも一重に読者各位のご支持、ご協力の賜物と、あらためて深謝いたします。

 21世紀を機に、カラ―ペ―ジを含めて復刊した小紙も早五年目を迎え、過ぎ行く時の速さが実感されます。両輪となるインタ―ネットが成熟の域に達した以上、四度目の年男となる今年は、紙面の更なる拡充に、より力を注ぎたいと思います。

 末筆ながら皆様方のご健勝を心より祈念して、年頭のご挨拶と致します。

 


 

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企画・制作 美術鑑賞社 藤谷弥道

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