異聞火星物語 〜ドワーフの闇〜
プロローグ
――はるか遠い昔 ……これは人々の忘れてしまった記憶の物語……
水の惑星に住むヒトが、いつも夢見た大地 ―― 火星
火星暦 230年。 地上ではいくつもの王国が生まれていた。
かつてヒトがいた星のように、大きな王国同士が覇権を争い、
科学と商業にしのぎを削っていた。
ここはそんな争いから離れた辺境の王国 『ローラル』。
火星にヒトが到達する以前から地下にも文明は存在していた。
ヒトは彼らを『ドワーフ』と呼んだ。
ドワーフ文明の王国 『サイード』。
ここは王都から離れた小さな村 『サン』。
少年はサンで生まれた。 名前はアルト。 年は14歳。
サンの村人は風使いの末裔。
地上と地下の住人同士はこの200年、さしたる争いもなく暮らしてきた。
それでも、何かが変わり始めていた。
火星にまた風が吹いている。