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2005年01月22日 01:44 タオルレスワールド タオルなんてなかった。手を洗ったのに。顔も洗ったのに。 ひげがびしょびしょだよう。 濡れた手のひらと、顔と、ひげをもてあまし、 タオルレスワールドにたたずんでいる。 せめて走ろう。 空気にこちらから向かってゆけば風がおこるだろう。 乾燥させるのだ。 自動車にのって窓から手を出そう。オープンカーに乗ろう。 |
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2005年01月22日 12:31 タオルレスワールド 目がさめて、トイレへ行き、手を洗う。そしてタオルは無い。 濡れた手でトーストを食べる。 手のひらの水滴をトーストが吸収する。 石鹸の香りがして、歯をもってかける圧力に反撥しない。 冷蔵庫の取手も濡れている。 顔を洗うのは着替えた後にする。 |
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2005年01月23日 14:40 タオルレスワールド 悪い風邪にかかって熱を上げ床に臥していると、松戸に住んでいる姉がわざわざ、洗面器を持って見舞いに来た。姉は洗面器に水を張ると、製氷皿の氷をぜんぶその中に落とし、キンキンに冷えたところで手を突っこみ、そうして冷えた手を僕のひたいに当ててくれた。ひたいにもまぶたにも熱がたまっていたので気持ちが良かった。姉の手から落ちた水滴は僕のひたいから耳の裏のほうへ流れて行き、枕をぬらし始めたので、姉は、いけない、と言って、台所の引き出しから勝手にビニール袋を取り出し、僕の枕をその中に入れた。ビニール袋で包まれた枕はガサガサうるさいし、寝返りをうつと頬にくっついてくるので、あまり気持ちの良いものではなかった。 姉は夕方までいてくれ、その間ずっと、両方の手を交互に氷水に突っこんで、僕のひたいを冷やしてくれた。水滴はもうずいぶん流れて、枕を包んでいるビニール袋と僕の後頭部の間で水音がしており、もう寝返りをうつ気にはなれなかった。姉が帰った後、枕をビニール袋ごと持ち上げ、流しまで運んで行き、たまった水を捨てた。そのあとどうしようか迷ったが、結局そのままビニール袋の枕で寝た。 |
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2005年01月24日 19:05 タオルレスワールド デスクの上の大事な書類にコーヒーをこぼしてしまった。 書類にじわじわとコーヒーがしみてゆくのをただじっと見ている。タオルがないのでどうすることもできない。 デスクの上はコーヒーの水たまりだ。干上がるまでに十日かかるだろう。それまでは別のデスクに移って仕事をする。 |
| 2005年01月26日 10:36 タオルレスワールド タオルが無いので、風呂から上がったら家中の壁と言う壁に水分をなすりつける。あとは少々濡れていても上から肌着を着てしまう。体が十分温まっていればのこりの水分は蒸発してしまうので平気だ。ひとり者なら一部屋ぶんの壁があればなんとか足りる。 銭湯など公衆浴場の場合は脱衣所を十分広く設けるか、土地が足りない場合はわざと入り組んだ形の部屋にして、壁の面積が広くなるように工夫している。扇風機は人ではなく壁を乾かすために置いてあるので当然壁のほうを向いており、暑いからと言って自分のほうに向けたりすると番頭さんに怒られる。 |
| 2005年01月27日 16:19 タオルレスワールド サウナは最悪だ。汗が拭けないとかそういう理由ではない。タオルがないので局部を隠せないのだ。 階段状の腰掛にひとが並んでいる。そして男根も、品評会みたいに整然と並んでいる。見るのも嫌だし、ズラリという品揃えに自分が加わるのも嫌だ。決して見慣れていないわけではない男根も、数が揃うと気持ち悪いものである。 |
| 2005年01月30日 00:51 タオルレスワールド 両親と親しくしている親戚のおばさんが「近くまで来たから」と菓子折りを下げてたずねて来た。ことし小学校に上がった男の子も一緒だった。何も無いが冷蔵庫で冷やしてあったボトルの烏龍茶をグラスにいれて出す。グラスは3つとも違うものだ。男の子がトイレにはいって、出てきて手を洗い、リビングのカーテンで手を拭いた。おばさんがお行儀が悪いと言って叱るので、「仕方ないですよ、タオルが無いですから。僕もよくそうします」と言ったら、おばさんは叱った顔から空気が抜けたような情けない顔して「あら、そうねえ」と笑った。 |
| 2005年02月01日 13:12 タオルレスワールド 寒い日が続く。タオルは無い。 仕事から帰る途中、いつもショートカットのために通り抜ける公園で転んでしまった。膝はつかなかったけれど手が土で汚れてしまった。公園の水のみ場で手を洗う。この季節、濡れた手でいると心底冷える。いっしゅん自分のネクタイで拭こうかと思ったが、止した。家まで我慢してストーブの熱で乾かそう。濡れたままポケットに突っ込むのも嫌なので、バスケットボールをつかむような手の形のまま、上半身を全く動かさない早歩きで家路を急ぐ。 |
| 2005年02月02日 09:01 タオルレスワールド タオルが無いので駅の男子トイレなんかは特に酷い。洗面台のまわりびしょぬれ、入り口付近水溜り、足拭きマットなどは湿原みたいにずくずくである。ところが女子トイレのほうはそうでもない。どういうお作法を用いているのか気になるところであるが、そこは女の子の秘密というやつだろう。 |
| 2005年02月03日 09:18 タオルレスワールド 前にも書いたとおり、タオルが無いので風呂上りには部屋の壁に水滴を擦り付けるのが普通だが、友人のアイデアには驚いた。その友人は自分の家の廊下に背の高い観葉植物を、ずらりと2列に並べている。2列の間は葉と葉が触れ合うくらいに狭くなっていて、風呂から上がったらその間を、葉っぱを掻き分けながら何度か往復するのだ。そうすると水滴がみんな植物の葉について、体は乾くし、おまけに植物への水やりも兼ねている。原始的で画期的な方法に感心した。 |
| 2005年02月04日 12:57 タオルレスワールド 聞いた話。友人の友人は日野のとあるラーメン屋でタンメンを待っていたところ、運んできたおばちゃんがつまずいて、汁を股間にこぼされた。タオルが無いのでそのおばちゃんは、口を股間にあて、すごい吸引力で汁をぜんぶ吸い取ったという。それはさすがに嘘だろうと思う。 |
| 2005年02月06日 17:00 タオルレスワールド 母はテレビやエアコンなどのあらゆるリモコンをラップで包んでいた。ボタンのまわりの隙間に手垢や埃が入るのを嫌った為だと思われるが、ラップというものは食べかけのものを包んでおく為のフィルムだというイメージがあり、ラップで包まれたリモコンからは生活感や貧乏くささが漂っているように思われ、僕はその感じが好きではなく、またよそ人に見られるのが恥かしいと感じ、(めったになかったが)友人を自宅に招くときは、わざわざ前もってリモコンのラップを全部剥がしておいた。母は勘が良い人で、僕がそのラップで包んだリモコンを何となく恥かしいと感じていることを見抜いていたらしく、友人を招くときにラップを剥がしてしまう事について小言などは言わなかったけれど、次の日の朝にはきちんとラップされたリモコンが、これ見よがしに居間のテーブルの上に並んでおり、当時は何とも思わなかったけれど今思えば、それは母の無言の抗議だったのだと思う。 タオルの無い今、手をはじめとする我々の体の部位には水滴がついていることがめずらしくなく、リモコンというリモコンは当然のこと、およそボタンがあり電気が通っているものには水濡れの危険があり、可能な限りラップをするのが普通である。 |
| 2005年02月08日 13:39 タオルレスワールド 僕は物持ちが良いほうで、特に鞄や靴は、くたびれて磨り減って、おしまいに穴があいてしまうまで同じものを使い続ける。実は鞄のほうは穴があいても使い続けているのだが靴はさすがに、ぼろぼろのを履いていると足にまめができたり、ちょっとした水溜りで浸水したりするので、地味な色合いだけれど歩きやすくて気に入っていたトレッキングシューズは処分することにした。 処分する前にするべき事は、新しい靴を買うことである。靴屋の店員さんが、ちゃんとした革靴なら穴があいても靴の底を取り替えて履き続けられますよ、と言って黒くて厚い皮の、あひるの足みたいにつま先の広がったかたちをした、丈夫そうな革靴を薦めてくれた。愛嬌のあるかたちをしているし、少々値は張るが同じものを使い続けられるならそれに越したことは無いので、買うことにした。 靴を受け取る段になって、店員さんは「長く使うためには、ミンクオイルを塗ってケアして下さいね」とおっしゃる。レジの目の前に缶入りのミンクオイルが売られていた。先に言わないあたり、商魂たくましいことである。タオルが無いのにどうやって塗るのだと問うたところ、タオルなんかよりもTシャツの古くなったのを使ったほうが、むら無く塗ることが出来て良いですよと教えてくださり、へえ、そういうものですかと感心した。そういえば着なくなった白のTシャツが捨てずにとってあったはずだと思い出し、自分が靴にミンクオイルを塗るところを想像したら、なんだか楽しくなってしまい、そのミンクオイルの缶を2つ買って帰った。 |
| 2005年02月09日 12:40 タオルレスワールド 風呂の話が多いが、タオルが無いので髪の長い女性は大変だろうと想像する。ドラッグストアやホームセンターに行くと髪についた水分を落とすためのアイデア商品を良く見かけ、車のワイパーが2つ向き合ったような道具や、ゼンマイ仕掛けの万力に髪の毛を挟んで雑巾みたいに絞る道具など色々あるから、一度使ってみたい気もするけれど僕は髪を短く刈り込んでいるので使いようがない。仕事の同僚で髪の長いY枝さんにお風呂の後はどうしているのか、あの万力みたいな道具は使うのかと問うてみたところ、あんなもの髪が痛むから使えないわ、ひとに借りて使ってみたこともあるけれど案外効果がないし、ということであった。ではどうしているのかとさらに聴くと、それは女の秘密だよと言ってY枝さんは笑った。女の秘密とは何なのか色々考えたけれど分からなかった。髪の長い女性と付き合ってみたいものだ。 |
| 2005年02月10日 18:17 タオルレスワールド 友人が遊びに来たが特別な話題もやることもないので、ウィスキーの水割りを飲みながらテレビを垂れ流しにして眺めていると、サスペンスドラマが始まった。雪国の温泉旅館が舞台だ。雪で美しく縁取られた温泉に、浮かんだ男性の死因は鈍器の殴打による裂傷および頭蓋陥没。何気なく 「凍ったタオルが凶器じゃないか。」 と言ったら友人に 「タオルは無いじゃないか。」 と返された。 最後まで見なかったので凶器は分からず仕舞い。 |
| 2005年02月14日 21:41 タオルレスワールド 科学系のニュースを扱うサイトを見ていると、遺伝子組み替えの技術によって開発された新種のキノコは水を吸いながら凄い勢いで成長するので、タオルの代用品として期待されているそうだ。一方では、例によって遺伝子組み替えというキーワードに見境なく噛み付く環境団体は早くも人体への悪影響がどうだとか自然界のバランス云々といった内容の抗議文を発表したようだし、タオルの無いことを受け入れようなんてお金に苦労したことのないボンボンが悟りひらいたみたいなこと言う奴もいるかと思えば、神様が創造した自然に対する冒涜だなんて言い出す連中もいて、僕はいつものように傍観だけれど、どちらかといえば持てる能力の全てを使って種族を存続させようと努力するほうが自然で、それに対し浅はかな理屈で抗議なんてする方が不自然だと思うし、それに、なりふりかまっていられるほど人類の明日に余裕は無いと思うんだがなあ。 |
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2005年02月16日 14:25 タオルレスワールド 冬の関東平野はまるで真空のように乾燥して、特にシャワーを浴びた後は腕やら腰やらふくらはぎの辺りが痒くて辛抱たまらず、寝巻きの裾をたくし上げてボリボリ引っかいているが、それだけ乾燥しているにもかかわらず朝、窓に出来る結露はものすごい。窓から垂れたしずくは窓枠を乗り越えて床にまで水溜りを作っており、タオルが無いから放っておくので、だんだんフローリングが黒ずんできている。引っ越すときに敷金から修理代を持っていかれるなあ。この間インターネットで見た遺伝子組み換えの茸、水をどんどん吸って成長するというから窓枠のところに植えたら、それはもうグングン育つことだろう。いや、しかし茸なんて植えたら窓枠がボロボロになるかなあ、なんて冗談みたいな事を真面目に考えた。 |
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2005年02月17日 18:04 タオルレスワールド 真冬のこんな寒い夜に霧のように細い雨が、傘の内側を舐めるように飛んできて僕の衣服をしっとりと濡らし、せっかくの体温は水の蒸発と共に奪われ無慈悲な夜の闇に吸収されて行った。無慈悲。癒しの雨は夏だけだ。冬の雨は、唯、無慈悲。ヘッドライトの自動車が通り抜けると、ずいぶん小柄な犬が急いで道を渡った。よく見えないが、体温を保つはずの体毛は重く不快に濡れそぼって、か細い足や胴体にへばりついているのだろう。不意に飛び立ったカラスの羽はぼろぼろで、こんな暗い夜に何を目指して飛ぶのだろう。当面、僕の灯台は、あの光り輝くコンビニエンスストアー、いいや、もしかしてあのギラギラした光り方はイカ釣り漁船かもしれない。そんな僕の冗談は少し口から洩れていた。タオルなんて無かった。 |
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2005年02月19日 11:33 タオルレスワールド カキの味噌鍋を作ったら鍋の蓋が熱くなって触れない。タオルが無いので素手では取れなくて困った。それ以前に台所のコンロからテーブルまで運ぶこともできないじゃないか。鍋が冷めるのを待っていたら中身も冷めてしまった。卓上コンロを買えばいいんだな。 |
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2005年02月21日 11:08 タオルレスワールド 大学受験の合格発表の時期、なのかな?(違ったらすみません、大学には行かなかったもので・・・)朝使う駅で、いかにも不慣れな感じの学生さんをよく見かけるのである。通勤、通学のひとはみんな殆ど無心で魚群のように迷い無く歩いて行くので、今日だけ何かの用事で来ているようなひとはすぐわかるし、それに「合格発表を装った詐欺に気をつけましょう」というような内容の貼り紙も見たので、そういう時期なのかなと思ったのだ。合格発表へは(受かっても落ちても号泣するのでハンカチよりも)タオルを持っていきましょう、なんて冗談があったが、そのタオルすら無いんだな。受験をする当人が「これで一生が決まる」と緊張しているのをみて周囲の大人が「そんなことで将来は決まらないよ」と笑うことがあるけど、当人からすれば「すでに一生が決まってしまった人の言い分」なのかもしれない、僕は正直言って、どちらが正しいことを言っているのかは分からない。 |
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2005年02月22日 18:03 タオルレスワールド Y畠君の家で桃鉄大会をすることになり、ビール6缶とガーキンの瓶詰めを買っていったのだが、このガーキンの蓋がなかなか開かなくて困った。僕もY畠君も手の皮がねじ切れるくらい頑張ったのだけれど開かなくて、お湯で温めると良いとどこかで聞いた気がしたのでやってみたが、それでも開かない。蓋をタオルで掴んで捻ると結構開いたりするんだけれどね、タオルは無いが。Y畠君は 「桃屋の海苔の佃煮なんかは口に突っ込んで歯で開けるんだけどね。」 なんて言って笑っている。豪儀なことであるが、ガーキンの瓶の蓋は10センチ以上あるのでこれを口に突っ込むのはさすがに無理だろう。試行錯誤の末、マイナスドライバーを持ってきて蓋と瓶の間をこじ開けるようにした後、蓋を捻ったら簡単に開いた。開いてしまった後では、聞いても、なあんだ、としか思わぬ話である。 |
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2005年02月24日 12:50 タオルレスワールド Y畠君の家で行われた、桃鉄大会と称した酒宴は明け方まで続き、目が覚めたとき僕は板張りの床に直にゴロ寝の姿勢で、もう日がだいぶ昇っていた。暖房とアルコールで火照った体に床板の冷たさが良かったらしく、熟睡した。誰があけたのか窓が少し開いており、2月上旬の冷たい風と、捲れあがったカーテンの裾が僕を起こしたのだった。Y畠君の家は洋室1間とユニットバスだけのアパートで、ほんの少し開いた窓のせいで家の中がぜんぶ冷え切っていた。Y畠君は僕のすぐ近くで座布団を抱っこの格好でまだ眠っており、他の友達はすでに帰ったようで玄関の鍵が開いていた。トイレに行って戻るとY畠君がモジャモジャ目を覚まして、それから2人で順番にシャワーを浴びた。タオルが無いので例によって壁を使うが、先に浴びたY畠君は寝ぼけて部屋の壁の八割を使ってしまい、僕のシャワーの水滴をとるには残りの壁の乾いた部分では足らず、テレビの裏、玄関室の壁、それに玄関のドアまで使い、それでようやくどうにかなったのに、Y畠君は玄関のドアに腹をこすり付けている僕を見て、「発情した犬みたいだ」なんて言って笑うのである。誰のせいでこんな、と言いそうになったが、ワハハと笑うY畠君の前歯は昔と変わらず味噌っ歯で、何だか急に懐かしくなり、メシでも食いに行こうかと誘った。 |
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2005年03月03日 09:56 タオルレスワールド メシでも食おうということでY畠君と商店街へ出てきたら、お祭りの屋台が何軒か出ていた。たぶん今日あたり天狗様のお祭りだとY畠君が言った。焼きそばの屋台は麺を焼くときにかける水が蒸発して、寒くて高い冬の空にもうもうと白い煙を立ち上らせており、辺りにはソースの焦げる匂いが満ちて、思わず口の中に涎が溜まった。こっちは3枚も重ね着した上にジャンパーまで羽織っていたが、屋台のオヤジは焼けた鉄板の前に白いTシャツ一枚で立ち、そんな格好でもかなり暑いとみえ、顔面と剥げ頭から汗を鉄板に落としては、ジュウ、ジュウと音を立てる。それを見たら、ああ、この焼きそばにはオヤジの汗が、と少し嫌な気分になった。そんなこちらの思いを見抜いたのか、オヤジは 「タオルが無くってねえ。まあダシだよ、ダシ!」 と言って、勢い良く麺をかき混ぜ、無理矢理に笑った。するとY畠君がいきなり焼きそばを買った。透明なプラスチックの容器に焼きそばと紅しょうがと目玉焼きが乗っており、それに輪ゴムをして割り箸を差し込み400円であった。Y畠君に買われてしまったら、仕方が無いので僕も買った。神社の境内まで歩いて行くと結構な人出があり、破魔矢に甘酒やお神酒なんかも出て、座るところが無いので狛犬の、石で積まれた台座に2人寄りかかり、そこで焼きそばを食べた。うまかった。お茶が欲しいな、なんて話していると、境内に天狗様の神輿が入ってきた。 タオルレスワールド 終わり
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