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(1)ある男性が深夜に車を運転していた。市街地を外れ、竹林の間を通る細い道で人影の躍り出るのを見たと思った。ブレーキを踏めど間に合わず。人を轢いたことは無いが意外なほど軽い衝撃だと思った。慌てて車の前にまわるとエリンギに似た、けれど人の丈ほどあるきのこが真ん中から折れて倒れて在る。人は居ない。その巨大なきのこの根元には痩せ細った猫が一匹、背中のところでくっついて居るようだったけれど、耳と鼻から血を噴くのを見て、間もなく死ぬと思った。 (2)スペースシャトルでヨーグルトきのこの宇宙遊泳実験が行われた。その結果、絶対零度でも生き続けるヨーグルトきのこが誕生した。しかし牛乳が凍るので意味が無い。 (3)年がら年中、ほとんど布団を敷きっぱなしの男が居た。万年床である。あるとき北海道に出かけることになったので掛け布団を外してみると、敷き布団の真ん中、ちょうどお尻の下あたりに小さな白いきのこが生えていた。そのままにして、北海道でジンギスカンを食べて帰ってくると、やっぱりきのこはそのまま在ったけれど、気にせずそのままの布団にもぐって寝た。その晩、屁をしたと思ったら、あくる日にはきのこは茶色くなって死んだようだった。ジンギスカンを食べて屁をしたせいだと思われる。 (4)果汁98%などと表記されたジュースがある。メーカーにも依るが、のこり2%はきのこである。 (5)世界初の物体デジタル伝送実験の実験体にはマイタケが用いられた。物体を特殊なレーザー光でデジタル化し、デジタル情報を転送して別の空間で再生するという試みだった。実験装置の開発には5億円もの費用が投じられたが、いくらがんばってもせいぜいマイタケが少し焦げる程度だった。 (6)長野の山奥にはきのこをくりぬいた家がある。 (7)岡山県の高校にかつらで有名な数学の教師が居た。本人はかつらで有名になっていることを知らなかったが、上級生から下級生へと語り継がれるので誰もが知っていた。語り継がれるくらい歴史的にかつらを被っている教師であった。ある年、その教師の頭は少しずつ上に伸びているようだった。秋頃には、誰が見ても分かるくらい長くなって居た。不良生徒が悪ふざけでクリップと糸でかつらを釣り上げると、教師の禿げ上がった頭のてっぺんから、えのきが生えていた。 (8)東北の山奥が開発されて分譲地になった。業者が買い取ってバリアフリーのモデル住宅を建てた。段差の無いことが売りだったのに、家中にサルノコシカケが生えて、でこぼこになってしまった。 (9)あるウェブサイトの管理人がオフ会を企画した。集合場所は交差点の角にある目立つビルの前だった。その日は雨で、その管理人はずっと待っていたのだけれど、いつまでたっても誰も来ない。あきらめかけた頃ふと、もしやビルの影の路地のほうに皆来ているのではないかと思い、覗いてみると人影がひとつ。あっ、と思って近づいたら巨大なきのこだった。 (10)ある地方には、きのこ酒というものがある。アルコール度数が1%以下なので子供でも飲めるが、まずいので誰も飲まない。 (11)目がさめたら目覚し時計がえのきに変わっている気がする。 (12)山の中を通るハイウエイを一晩も運転して自宅へ戻り、それから幾日か過ぎると手の甲から肌色の5ミリ程のきのこが無数に生えてきた。見ていて気持ちが悪くなるし、痒くて仕方が無いので病院へ行くと、医者は近頃おなじ症状が数十件もあると言う。同県の衛生管理課が調査したところ、蛾に寄生するきのこの変種であることが分かった。山の中のハイウエイ沿いにある休憩所では、夜になると自動販売機の光に蛾をはじめとした無数の虫が群がってくる。 (13)便に、食べた覚えの無いきのこが混じる。 (14)ヨーロッパのある地方には、きのこ100パーセントの民族衣装がある。 (15)今どきの子供にしてみれば、「ピンポンダッシュ」なんていうイタズラはこれまで散々使い古されてきたので新鮮さにも欠け、スリル面でも全然ヌルい。そんな今どきの小学生の間で賑わっている最新のイタズラは「犬ドラッグ」といい、そこらへんに生えているきのこをやたらめったら大量に採取し、調べもせずに近所で飼われている犬に食わせる、というもの。(マサタカットさん提供) (16)江戸末期に書かれた歴史書の一つには、「化身茸(バケクラゲ)」という名のきのこが登場するものがある。。。その内容を紐解いていくと、どうやらその化身茸、一般的な大きさのものでも人間の子供の背丈くらいはゆうに超え、大きなものともなると1.6〜7m程に成長したと言われている。まさに怪物きのこである。また、危険というほどではないが多少の毒性を持つために、食用として栽培、採取はされていなかった。その代わりに、と言うのも変な話だが、その頃活躍していた忍びの者たちが忍具として使用していた、という非常に興味深い記録が残されており、乾燥させて粉末状にしたものは火薬に、鉄器に結びつけては広範囲向けの武器にと、まさに多種多様の変化を遂げて忍者達に愛されていたという。その巨大きのこを変わり身の術に使うべくそのまま持ち歩いていた忍者も存在したらしい。「バケクラゲ」という独特の名前もそんなエピソードに由来するものであるが、その話を耳にしたある地方の殿様は、その名前を聞いた途端に「食すればその身をどんな生き物にも変化できる」と勘違いし、国中の化身茸を集めてほぼ毎日摂食した結果、本来微量であるはずの毒が積もり積もってある日死んでしまった、という話も残されている。この化身茸、世界中のどこを探してもこれに匹敵する種類のキノコは日本以外に発見されておらず、また江戸時代を境に絶滅したものと思われている。最近の研究で、これがブナシメジの亜種であったことも発表されている。(マサタカットさん提供) (17)大慌てで出かけたので、鍵もかけず電気もつけっぱなしだということに気が付いたときには、もう飛行機の中だった。1週間後、空き巣に入られていることも覚悟して帰宅すると、そのような痕跡は無く、代わりに、居間に置いてあった座布団から子供の背丈ほどもあるきのこが生えていた。 (18)お見合いの相手はきのこだった。 (19)家庭に風呂釜が入りはじめた頃、空っぽの風呂釜の上に載せておいた風呂板がどうやっても取れなくなるという現象が、何軒かの家庭で発生した。特に大金持ちのところで発生することが多く、若い衆でせいのでやっても、力士を呼んできても開けられず、風呂板を壊すしかなかったという。風呂板を壊してみると、中にきのこが数本から数十本生えていて、これが原因であった。湿って密閉された空間できのこが生え、酸素と水分を消費するので気圧が下がり、外との気圧の差が生じて蓋が開かなくなるのである。風呂釜が完全に密閉できるような大きな一枚板の風呂板を使えるのはよほどのお金持ちだけだったので、何枚かの板を並べて使う普通の家庭ではこの現象は起きなかった。現在では、風呂板によって風呂釜が密閉されないように設計する事が義務付けられている。 (20)古くなった蛍光灯の内側の、黒くなったところにだけ生えるきのこがある。MRIやサーモグラフィによってその存在は証明されているが、取り出そうとすると蛍光灯の中のガスが漏れた瞬間に粉々に散ってしまう為、実物を見た人間は居ないと言われている。愛好家の間では、妖精きのこ、シュレディンガーのきのこなどとも呼ばれる。 (21)味噌煮込みうどんは、元々は「味噌煮込みきのこ」という料理だった。 (22)親知らずを抜いた穴からきのこが生えてきた。 |