curl(2004/1)
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工場は津軽湾の沖の孤島にありまして、島には工場と港と、砂防林と、芋やら葱やらを植えた小さな農園のほかには何もありませン。空港はありませンから、人や材料や色々の物は、コンテナ船の定期便でやって来きます。港は、遠浅の砂浜だった所をわざわざ掘り返して、コンクリで固めて作ったのだと聞いています。何のためにそうまでして、こんな所に工場を作ったのかは分かりませン。

住まいは工場の敷地の中にある寮です。1人に1部屋、4畳、住まいというよりは寝るところです。風呂は共同で広いです。石鹸とシャンプーは自分で買って使うようになっています。飯は、朝と晩は寮の食堂で食っています。食堂にはテレビがあります。昼飯は、弁当が出ます。工場には売店があります、と言うよりは、売店は工場にしかありませン。

寮の玄関の前には、その小さな玄関には不釣合いな、立派な洗い場があります。大きなシャボンのタンクがあって、工場では1日にそれこそ何万個もカールをひねるわけですから、みんな必死に手を洗うンです。油とコーンの粉と香料はすっかり指に染み込ンじまって、臭いはどうやったって落ちやしないのですが、それでもベトベトくらいは落としたいですから、アカギレが出来たって、そのアカギレの割れ目を引っ掻いてでも汚れを落としたもンです。カレー味やチーズ系の担当のときは特に、夜になって寝ようとすると布団の中からムワッときて、たまらンです。どんなに寒くても布団から両手を出して寝ています。

工場ではベルトコンベヤの前に一列にならんで、カールのひねり方は、まず材料の餅を両手に握りまして、親指の腹が人差し指の上を滑る感じで、内側から外にひねり出す感じです。ああ、餅ってのは、コーンの粉と油と他の色々の材料を全部混ぜたやつです。みんな餅って呼んでます。オーブンを通すと膨れますから、薄く、それも均等にやらないといけませン。これを朝から晩まで毎日。

餅を混ぜるのもオーブンで焼くのも、それに袋詰めまで機械がやるのにどうして、ひねるところだけは人がやることになっているのか、偉い人の考える事はちっとも分かりませン。でもまあ、仕事ですから。愚痴ったって始まりませンから、余計なことは考えないようにしています。知っていますか、カールってのは、右手でひねったのと左手でやった奴では、巻き方が逆になっているンですよ。






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