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『捌き』とはなにか
近年の競輪はまさに競りの競輪と言われる。(言われてないけど)ゴールには真っ直ぐ踏まないとたどり着けないのに
競輪の選手はとにかく横に横に行きたがる。それに拍車をかけたのが動けるマーク屋といわれる自由業の出現で、もは
や競輪は常に先頭を走っていないと何が左右から不意打ちを食らわしてくるか分からない。たいへん危険な競技に変身
したと言っていい。捌きというのは要するにヨコに動く事なのだが、彼らの生態はここ数年やたらと夜行性になってきて
Sを取らずにレースも佳境に入った頃にアクションを起こしてくるので実に始末に悪いというか、その存在が極めて
大きくレースに波紋を広げている。彼らは逃げ以外の全ての戦法を肯定しつつも具体的なコメントは一切話さずに地乗りでも
離れて周回しているために、まずSを主張してから様子を見る筈と想定してしまう。というのは彼らはSを権利として
使うので誘導を外す位置を自分で決められる。事故点さえ問題なければ上昇してきた逃げ屋を早駆けさせる事だって出来
たのだが、最近はとにかくスタートから中団にいる。これはもう神山がやり始めた事なんですよね。4分戦のコマ切れで
一つが捌きでラインを組んでいたら、その選手を引き連れて逃げた連中のラインが一番長くなる。もしくは3番手を競らせ
る事ができるわけでここの利害が完全に一致する。特定ラインの番手を指名したわけではないので捌き狙いの選手は
まず間違いなくイン競りになるので勝つ可能性は高い(尤も加倉は競るときは必ずアウトから。これはマーク屋のプライド
なんでしょうかね。泥棒もプロは表玄関から入ってくると言いますし、コソ泥は裏口から入りますから)
イン競りに展開するためには当然後方からの仕掛けに対して自分が併せて動いてインを切るわけです。いわゆるイン切って
イン待ち。ここが古来の競輪と大きく異なる点で。併せて突っ張るとなるとその間脚力も大幅にロスする筈なのですが、そ
れがさほどでもないのです。誘導が全然あがらないからです。神山はそこに気づいたわけですよ。イン切って誘導を下げる
もよし、もう一度誘導の後ろに入って本格的な飛びつきを狙ってもよし。Sを取らなくてもマーク屋は捌ける様になってし
まったのです。捌き選手を切り替えさせるために逃げ屋は後手を踏めなくなり、あわてて早駆けをする様になるが、対して
下がったラインも引き切れずに突っ張るかホームで叩き返しにいく。気が付けば叩きあいで切り替えなんか何もない。
捌きと公言していた選手は素直に自力を使いひと捲り。これが神山が一時代を築いたメカニズムなわけです。では純粋な
捲り屋タイプの選手でも同じ事をやれば毎回勝てるのかと言えばそうではない。やはりマーク屋は番手含みの競走を匂わせ
るためにレースを早く動かせる事ができる。捲り屋が同じタイミングで仕掛けても、それはただ単純に中団取りへの伏線
でしかなく、捲られたくない先団の選手は早駆けをしてくれないからである。
漠然とした自在戦
位置のない選手にとって位置のある選手の集まりはそれこそ目障りなもので、これが長すぎると思ったら
当然イン切りでレースを早く動かすしかない。ここでいう位置のない選手を全て捌きと決め付けてしまうのは
いささか危険なのだが、地区の集まりというものは安易に切り崩しにいくと却って目標が消極的になり
他ラインのカマシを誘発してしまう事になる。最悪捲りの番手で競るなどというアンニュイな事態に成りかね
ない。であるから一定以上の格があってこそ捌きのラインと認めてもらえる。
捌きのラインには大きくわけて3つのタイプがある。
@ラインがなく単騎である
A自力屋が前である
B自力屋を後ろに従えてマーク屋が前である
この全てにおいて先頭を走る選手に一定以上の格があるとすれば、走る前から「前々」「自在」「何でも」
などと意味不明なコメントを発表する手はずになっている。@の人は「○○君の番手」と特定しない限り捌きで
あり、切れ目からの直線勝負、あるいは番手切り込みか、3番手をどかすか。ヨコに強い選手が番手の場合は
3番手をどかせれば一番いい。3番手であれば直線必ず内が開くし、前が残そうとすれば先に外を踏み込む事も
できる。問題は競った後にそこまでの体力が残っているかだろう。Aは捲りも匂わせて捌くわけだが実際問題
誰が逃げても「中団」というのは難しい。レースが読めない様な選手は同じ失敗を何度もするからである。
どういう事かと言うとAのタイプは捲り屋が前回りなのでSを取りやすい。というか編成上彼らがスタートを取らない
とレースが始まらないという気の毒な面がある。自力含みだから中団から併せイン切りという戦法に対し消極的
になってしまい、こういう選手が前にいると誰も押えに来てくれずに最後叩かれて割りを食うわけだ。であるか
らしてAの様なタイプが人気になっているレースは荒れる要素が非常に高いのだ。ただ一つ例外もあり、それは
明らかに格下の選手が前を回っていて、この選手が後ろの選手を好位にもぐり込ませるためだけの役割を担っている
ケースだ。井上−吉岡などという評判の悪いラインがある。前を回る選手が囮になって吉岡を中団に滑り込ませ、自分
はとっとと消えてしまい、暫く外をフラフラ走って捲りを妨害する。あるいは実際に番手を試みるのだがそれは
勝とうとかいう目的でなく、とにかく相手に脚を使わせて背後の選手を大事に運ぼう。そういった競走も良く見る。
もっともこの場合は結局捲りをブロックする人間がいなくなるため「○○がやれば××が生きてくる」といった
結末にはほど遠いものになる。2着に生きてくるのか3着に生きてくるのか。いづれも車券を買う側の発想とみてよい。
BはA級に多いですね。準決などで前日予選を勝ち上がった70点ぐらいの逃げ屋を使ってもしょうがない。そんな
時はマーク屋が前を回るのだが、このケースはまず間違いなく番手に行くでしょう。なぜかと言うと仮にも自力のある
選手を説得して自分が前を回るのだから、これが3番手だとか4番手を狙うのであれば後ろの選手にしてみれば
「話が違うよ」という事になる。
@〜Bのケースを踏まえると「捌きのラインからは複数の連対車は出にくい」という結論になる。これが
ワン・ツーを決めるケースというのは前項で挙げた叩きあいを誘っての自力発揮。ほぼこれしか無いと見ていい。
横に動くという事は競輪ではそれだけ不利だと言う事を物語っている
分断のアプローチ
先日ある競輪場で予想屋がこんな事を言っていた
「いや、分断されそうになったらサッサと自力使って行っちゃうヨ」
どういう番組だったかと言うと90期の予選上がりの機関車に自力のある特選組がつけての2段駆け。
目標のない茨栃勢がここを攻めてくるのではないか?という客の質問に対しこの様に言ってのけたのだ。
私はこの物言いを聞いて笑ってしまった。一体何年商売してるのか知らないがコレは明らかに選手が乗ってる
自転車を全く理解してない人間の言葉だ。スポーツ万能でどれほど体を鍛えた素人でも、最初からこれを
スタートさせるのが難しい。そういう自転車に選手は乗っており、例え誘導が前を走っていたとしても
確実に周回ごとに脚力をロスしているものなのだ。ましてやペースも上がった勝負所で内から捌かれて
急激に風の抵抗を受けた選手がいかに強い自力屋であっても、そうそう簡単に「あらそう、じゃあ自力で」
と踏みあげられる筈など無いのである。番手を主張する利益は番手を奪われた際の損益に等しい。まさに
質量保存の法則だ。
で、あるから分断は何の心配もなくインから強行できる。ではイン切ってイン待ち。あるいはSを取って
飛びつき。どちらを選択してくるかは状況に拠って異なる。中団中団を基本とした純正の捌きは先行選手を早
駆けさせる事が前提となる。ところが分断というのは早い話競りと一緒なので先行選手は後ろが併走状態にな
ったらどうしてもペースを緩めてしまいがちになる。これで後方からカマされたりしたら本末転倒というわけ
だ。また仮に早駆けしてくれたとしても結局後ろで競っていれば捲り展開になるのでサジ加減が難しい。だから
「競り」ではなく「分断」なのだ。番手をあげていけば上げるほど先団の隊列は短くなる。ラインをとにかく短く
して中団を確保する事が最重要課題と考えれば当然番手を上げるのはリスクを背負う。18年伊東で行われた
東王座戦の準決勝で東北は渡辺−佐藤−西丸という布陣で臨んだが神山はこのとき佐藤でなく西丸を捌いて3番
手を確保した。しかし、捌いて戻ってくるときに今度は東京の横田努に更に捌かれてしまった。もしこの時に神山
が番手の佐藤慎太郎と競り、その後ろで横田が西丸と競っていたらどうなったか。おそらく南関東ラインに一気に
捲り切られていたと思われる。分断とはラインを短く切っていく事であり、結局はその後の直線勝負に浮沈が委ね
られる。直線が長めのバンクであれば外踏み出しも可能だが、実際に捌きで脚を使っている以上インを突破していく
のが通常の流れだ。分断→直線内へ。というのはまず第一に想定して車券を買う。あるいはこのケースも注意したい。
4123でバック通過。この23は捌いて3番手を確保したグループで3角1が4との車間を切って残しにかかると
2が外を先に踏みあげる。カントの惰性を利用して1が2をブロックしに行くと3が内に入ってきて4=3または
1=3といった決着になる点だ。弥彦あるいは四日市。たまに松戸でもある。このケースでも言える事だが捌きのライン
でのワン・ツーは実に難しい。だから1,2着である必要のない勝ち上がり条件。準決勝の様にとにかく上位へ
という指針で舵を取っている選手の捌きを警戒するのが穴車券への有効な手立てだと考える
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