アドリブフレーズLabo written by Acousphere Toshi
僕がこれまで耳コピーをし、蓄えてきたアドリブフレーズを紹介します。
指使いやニュアンスなど演奏における注意点の他に、音使いのアナライズも解説しています。
アドリブのアイディアを広げる参考にしてください。

(8)V7b9に使えるディミニッシュアルペジオのフレーズ by Antonio Carlos Jobim



■フレーズの概要
ボサノヴァで有名なAntonio Carlos Jobimの演奏からのフレーズを紹介します。
Antonio Carlos Jobimと言えば、Joan Gilbertoなどと共にボサノヴァを生み出したことで知られています。
リズムの面白さを聞かせることが中心だったそれまでのブラジル音楽に、ジャズのハーモニーやアドリブの要素を取り入れ、洗練された響きの音楽を創造しました。
Jobim本人はヴォーカルと一緒にピアノやギターを演奏します。
今回のフレーズはOnce I LovedというJobim作曲のボサ・スタンダード中で演奏されている、ピアノのフレーズです。
憂いのある独特のフレージングを学んでください。

音使いのアナライズ
曲のキーは?ですが、アナライズのしやすさを考えてこのフレーズが使われている部分をキAmキーで考えます。
そうすると、E7b9 = V7b9、Am7 = Im7となります。
では各音をコード毎にアナライズしてみましょう。
・1小節目:b2, 5, b7, 3, 5, b2, 3, b2, 1, b7, b6, 5
ここではV7b9上で弾かれているフレーズとなります。
V7のコードトーンは1, 3, 5, b7であり、テンションノートのb9 = b2であることを考えると、ほとんど全ての音がV7b9のコードトーン内に収まっているのが分かります。
モードとしてアナライズすると、ハーモニックマイナースケールから派生するMixolydian b2,b6が一番当てはまります。
・2小節目:b3
Im7上で弾かれている音なので、Im7を基準にアナライズするとb3になります。
ここまでは問題なくアナライズできたと思いますが、ここでdom7b9コードの特徴について考えてみたいと思います。
dom7b9コードのコードトーンは1, 3, 5, b7, b9ですが、b9をb2に直して並び方を変えてみます。
・1, b2, 3, 5, b7
ここで新しく入ったb2を軸に、ルート以外の各コードトーン間の音程をアナライズするとこうなります。
・b2から3:短2度(マイナー2nd)
・3から5:短2度(マイナー2nd)
・5からb7:短2度(マイナー2nd)
・b7からb2:短2度(マイナー2nd)
全ての音程が短2度(マイナー2nd)となっているのが分かりますね。
短2度(マイナー2nd)音程はディミニッシュアルペジオと同じ音の並びなので、ディミニッシュアルペジオを弾いているのと同じことになります。
つまり、dom7b9コードはディミニッシュアルペジオとして考えられると言えます。
今回のフレーズでは3拍目3番目の音以降に1やb6が使われているので、3拍目2番目の音までがディミニッシュアルペジオとして捉えられます。
アナライズは以上です。
フレーズ全体をみてモードと捉える方法と一緒に、dom7b9 = ディミニッシュアルペジオという考え方もぜひ覚えてくださいね。

■指使いのこだわりポイント(人差し指:i、中指:m、薬指:a、小指:p)
このフレーズはディミニッシュアルペジオの指使いに習熟するために最適なフレーズと言えます。
テクニカル的には難しいものではありませんが、弦移動が激しいので的確に目的の弦を押さえられるようにしましょう。
譜例は小指から始まっていますが、中指から始まるフィンガリングも使いやすいので挑戦してみてください。
・1小節目:m, i, p, m, i, p, m, p, a, i, p, a
・2小節目:p

■演奏するときの注意点
弦移動が頻繁に行われるので、両手のコンビネーションが重要です。
特に右手のピッキングについて、大抵の場合はダウンピッキングから始めるのが普通ですが、今回のフレーズは弦移動とピックの動きが逆になってしまうので、ミスをする確率が大きいと言えます。
そこで、アップピッキングから始める順番を試してみてください。
ダウンピッキングから始める右手の感覚とかなり異なるので、リズムをキープしながら弾くのが難しく感じるかもしれませんが、John Mclaughlinなどは演奏のしやすさを一番に考えてピッキングの順番を変えている場合があります。
特に速いテンポのときに有効な考え方なので、ぜひ会得してください。

■演奏できるシチュエーションの考察
今回のフレーズはディミニッシュアルペジオを含む、ダークな響きのするフレーズです。
次にくるコードがマイナーコードだとダークな響きの統一感があり、スムーズに聞こえます。
一方、次にメジャーコードが来るとダークからブライトという響きのギャップが生まれ、面白い響きに聞こえます。
E7b9からAmaj7へ、またはE7b9からA7へ、などのコード進行が考えられますね。
ただこのとき注意してほしいのが、2小節目の音。
譜例ではAm7のb3度の音になっていますが、これをそのまま使ってしまうとAmaj7、A7のどちらにもフィットしません。
半音上げて4弦11フレットの音を弾けば、3度の音になるので大丈夫です。
一つのフレーズをいろいろな場面で弾けるようになると、応用力が発揮できますね。
がんばってトライしてみてください。


■参考
Once I Loved / Salena Jones & Antonio Carlos Jobim (from the album "Salena Sings Jobim With The Jobim's)


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