ネロ・ウルフのレシピ公開
レックス・スタウト著『料理長が多すぎる』の舞台はアメリカの保養地カノーワ・スパー。そこで世界の名料理の数々が有名シェフによって作られますが、そのレシピが原書の巻末に載っています。残念ながら翻訳では省かれており、その完成品をうかがい知る事が困難です。そこで各務三郎氏があちこちの本で紹介しているそのレシピをここで公開したいと思います。正直言って材料を集めるだけでも困難なこの料理ですが、是非一度お試しになってはいかがでしょうか?ちなみにスタウト著『ネロ・ウルフの料理本』でもこれらの料理は紹介されています。
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Too Many Cooks 料理長が多すぎる レックス・スタウト 1938 ★★★ |
| ハヤカワミステリ文庫 平井イサク訳 |
あらすじ
15人の世界的有名な料理長が一同に会して開かれる晩餐会にネロ・ウルフは主賓として呼ばれていた。最初の晩に開かれた料理長達のソース味きき勝負の途中で料理長の一人が刺し殺される。当初ネロ・ウルフは事件解決には全く乗り気が無かったが、自分の提案から誤った人物が逮捕されてしまったことをキッカケに真犯人探しにかかった。
感想
全編に渡り豪華料理の数々が披露されることで有名なこの作品。ネロ・ウルフが作中、徹夜をしてまで推理する場面がありますが、こちらまで寝るのを忘れて読みふけってしまいます。アーチー・グッドウィンとの「でこぼこコンビ」も健在で、微笑ましい場面を幾つも見せてくれます。謎解きそっちのけでも読んでいて楽しい作品です。もちろん犯人の意外性も文句無しです。
[コンソメ]
ウエスト・バージニアにある本晩餐会が開かれた場所カノーワ・スパーの料理長ルイ・セルヴァンの作品
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(材料) 5ポンドの鶏1羽 塩ティースプーン1 水2クォート 黒胡椒粒8 ポロネギ4本 ニンジン大4本 タマネギ大1 セロリ1本 パセリ1本 タイムティースプーン1 ベイリーフ1枚 卵白3 トリュフ1 |
(料理法)
鋳物の鉄深鍋に、水2クォート、鶏1羽(てきとうにバラして、ガラ共)を入れ、ゆっくり煮立たせながらアクをとる。ボロネギ(リーク)、ニンジン、タマネギを刻みこみ、塩、黒胡椒で味つけ。セロリ、パセリ、ベイリーフを一束に縛り(ブーケガルニ)、鍋に入れる。タイムは粉にしたのがビンづめで売っている(たとえばジョン・ワグナー&サン社のビンで300円くらい。もし葉の形をしていたらティースプーンで1/4を入れる。スパイス類は、サフランをのぞけば大して高くないから、スーパーで必要なものを買っておくといい。でも何年も貯蔵できないからそのつもりで)。
もう一度煮立たせながらアクをすくい、フタをしてトロ火で3時間。これを濾して、冷めてからもう一度アクをすくう。
これでブイヨン、それも高級なブイヨンができあがったわけ。ふつうなら安い肉、野菜をコトコトやっておけばいい。もっと手軽にゆこうと思えばブイヨン・キューブ。あれでけっこう。とにかく煮こみ料理には欠かせないからねえ。
さて、これからコンソメをつくるわけだ。このブイヨンをパンし移して、卵白3を加えて火にかける。煮立つまでアワ立て器でかきまぜる卵の白味はアクを吸い取る。煮立ったら火を細め、かきまぜながらさらに5分間。火からおろして15分放置。
目の粗い綿布(チーズクロス)を冷水につけてしぼる。それを濾し器に二重にしていれ、スープをゆっくりと注ぎながら濾す。
味をととのえてからセン切りしたトリュフを入れ、フタつき容器でテーブルに出す。
[川鱒のケーパー・ソースかけ]
アメリカ、ボストンにあるウィロー・クラブの料理長レオン・ブランの作品
| (材料4人前) 6〜7インチの川鱒16匹 塩小さじ2 ひきたての黒胡椒小さじ1 小麦粉カップ1 バターカップ1/2+大さじ2 レモン・ジュース大さじ1 タラゴン小さじ1 タバスコ少々 ケーパー少々 |
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(料理法)
鱒は内臓をとり、尾頭つきで塩、胡椒して軽く小麦粉の衣をつける。熱したフライパンにバター2さじをとかし、鱒をいためる。たがいにくっつきあわないようにしながら、二、三度かえしてこんがりと焼目をつける。
ソース ─ バターをソースパンに入れ、トロ火でとかす(明るい茶色になるまで)。レモン・ジュースにタラゴンを入れ、数分後に濾したら、とかしたバターに入れる。タバスコ少々、ケーパー少々で味をととのえてからひと煮立ち。これを熱い皿にのせた鱒にかけてテーブルへ出す。
[鶏だんごのボンファム]
パリ、モンドールの料理長ピエール・モンドールの作品
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(材料4人前) 挽いたチキンの胸肉2/3カップ 卵白2 塩小さじ1/2 白胡椒小さじ1/8 クリーム1/4カップ 白ワイン辛口1と1/2カップ 水カップ1 牛の骨髄大さじ4 刻みパセリ小さじ3/4 卵大2 クラッカー粉(ふるいにかける)大さじ4 パプリカ小さじ1/8 塩少々 バター大さじ3 シャロット(ワケギ)1本 中くらいのマッシュルーム6 小麦粉大さじ2 濃いチキン・ブロス(スープ)カップ3/4 サワー・クリーム大さじ2 |
(料理法)
チキンの胸肉を切れのいい挽肉器にかけてから裏ごしし、卵白、塩、白胡椒、クリームを少しずつまぜる。これを小さじ二つをあやつって卵形にととのえ、ボイルするわけだが、白ワイン1カップ、水1カップをわかしたなかに落とすのだ。10分もゆでれば固くなる。熱い焼皿にとり出す(穴あきシャクシでとればいい)。
骨髄(マロー)を木シャクシでクリーム状になるまでかきまぜる。骨髄をとりだすには、マロー・スプーンという柄の長いのがあるんだけれど、代用できるものもあるね。ほら、カクテルにつかうまどらーみたいなのが台所用品コーナーにあるじゃない?
クリーム状骨髄に卵、パセリ、クラッカー粉、パプリカ、塩少々をくわえて、さっきの湯(水+白ワイン)にスプーンですくってボイルし、焼皿にとりあげておく。
つぎはソースの製法。ソースパンにバター小さじ3をとかして。刻んだワケギ、スライスしたマッシュルームをいためる(カンヅメのマッシュルームなんて死んだワタリガニをゆでたようなものだよ)。茶色になりかけたらメリケン粉を入れてかきまぜる。そこへチキンスープと白ワイン(カップ1/2)を入れて5分間煮る。このソースを鶏ダンゴと骨髄ダンゴにかけてから、オーブンか肉屋器(ブロイラー)で焦げめをつけて食べる。
[リチャード氏の焼若鴨]
ニューヨーク、ラスターマンの料理長マルコ・ヴュクシックの作品
| (材料4人前) 若鴨4と1/2〜5ポンド1羽 刻んだワケギ大さじ1 パセリ2本 刻みパセリ大さじ1 塩小さじ1/2 カイエン・ペッパー(とうがらし)少々 黒胡椒少々 濃厚チキン・ブロスカップ1 タラゴン小さじ1/2 タイム小さじ1/2 コニャックカップ1/4 |
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(料理法)
レバー、内臓をとりだしてよく洗い、塩・胡椒し、さらにワケギ、パセリ、カイエンで調味して、ふたたび鴨の腹におさめる。脚・羽の部分をタコ糸でなどで胴体にしばりつけ(トラスする)、火の通りをよくするためにフォークで幾箇所か突きさす。
これを500度(華氏)に熱したオーブンで15分ローストし、さらに400度(華氏)に火力を落として70〜80分間ロースト。注意、チキン・ブロス(タラゴン、パセリ、タイムをまぜて濾したブロス)とロースト・パンにたまる肉汁をかけるのを忘れないように。おいしそうなツヤと味をよくするために不可欠。焼きあがったときに、天板パン底にブロス、肉汁のミックスが少なくとも1/2カップはたまっているように案配する。
ローストされた鴨を熱い大皿にとりだしてあたためたコニャックをかけて点火。青い炎が消えたら、パンに残ったジュースをかけて切りわける。
[ロッシのサラダ]
イギリス、ロンドンにあるエンパイア・キャフェ料理長ドメニコ・ロッシの作品
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(材料) カラシナの芽 エスカロール(キクチシャ)、すいば(ソレル)、なければホーレン草 ボストン・レタス ノウゼンハレンの若芽 シャポン(後述)カップ1 オリーブ油カップ1 レモン3個分ジュース 塩小さじ1 黒胡椒小さじ1と1/2 タマネギ汁小さじ1 固ゆで卵2 ニンニク少々 |
(料理法)
葉をきれいに洗って、小さくちぎり、清潔なタオルの上で水分をとり去る。これを大きなサラダボウルに入れて冷やす。
ドレッシング。オリーブ油、レモン・ジュース、塩、胡椒、タマネギ汁をまぜたもの。これを葉にふりかけてボウルを上下しながらコーティングする。こまかく刻んでゆで卵とシャポンをかけて、さらにボウルを上下させる。
シャポン─かたくなりかけたパンを小さくサイの目に切り、刻んだニンニクを入れたオリーブ油でこんがりするまで揚げる。
[ソーシス・ミニュイ]
ネロ・ウルフが心底欲したサン・レモのコリドーナの料理長ヘローメ・ベリンの作品
| (材料) タマネギ ニンニク ガチョウ脂 ブランディー 赤ワイン 牛のブロス タイム ローズマリー ショーガ ナツメグ クローヴ パン粉 豚肉 ガチョウ肉 キジ肉 塩 黒胡椒 ピスタチオ・ナッツ 豚小腸 |
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(料理法)
刻んだタマネギ数個とニンニク1かけらをガチョウ脂で茶色になるまで軽くいためる。そこへタマネギがかぶるくらいにブランディーを入れ、その倍量の赤ワインも入れる。さらに赤ワインと同量の濃厚な牛のブロスもそそぎこむ。タイム、ローズマリー(マンネンロウ)ひとつまみと、ごく少量のショーガ、ナツメグ、クローヴを加える。
10分間煮立ててからふるいにかけたパン粉をいれてどろどろにする。5分間ゆでて刻んだベーコン、ざっと切った焼豚、それに焼豚の倍量のガチョウ肉、ガチョウ肉と同量のキジ肉を加える。
塩、胡椒して、いためたピスタチオの実を数個入れながらじっくりと煮て、新鮮なソーセージ肉のかたさにしあげる。完全に冷ましておくこと。
豚の小腸を洗い、よく煮沸してから、ソーセージ肉をつめる。適当なところでくくって形をととのえる。これを腸が破れないていどに弱い火で焼き上げて、できあがり!