低山彷徨 後編へ

2004.3.27
長柄大山の里
京急「新逗子駅」の南口改札口から1番バス乗り場へ。
2つ目の「長柄交差点」で降り、逗葉新道を避けて静かな住宅地の中へ1本入った道を歩く。正面に見えている阿部倉山が近づいてくる。なんて静かな山里だろう。自転車の二人乗りを大人に注意されている最中の男の子の横を通り過ぎ、まっすぐに阿部倉山の方へ。
ル│ト
  前編
  [ 京急新逗子駅 ]
 → ( バス停「長柄交差点」 ) → [ 御霊神社 ]  → 
  [ 長柄大山の里 ]  → [ 1 大山林道/森戸川 ]  → [ 2 谷沢尾根 ] →
  [ 3 南尾根へ合流 ] → [ 4 地蔵山 ] →[ 5 樫の木の尾根 ] →
  [ 6 新沢尾根を下る ] → [ 上山口 ]
  後編
  [ 水源地 ] → [ 下山口・星山の庚申塔] → [ 7 峰山 ]  → [ 大原鞍馬道 ] → 
  [ 長者ヶ崎 ] → ( バス停「長者ヶ崎」) →  [ 京急新逗子駅 ]
      
6 葉山縦断/森戸川源流・大山林道から地蔵山〜新沢尾根へ(前編)         
  三浦半島 
 10低山彷徨 
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▲葉山は山と川と海の町。北側に、逗子との市境の山あいを森戸川が流れ、眺める山は桜山。南側には下山川が流れ、大楠山塊が西へ向かい、120m〜140mの稜線が長者ヶ崎に落ち相模湾へと消える。横須賀との市境にあるこの稜線が峰山である。▲葉山の北・長柄から大山林道に入り森戸川の川瀬を渡って谷沢尾根へ、渓流を辿りながら深い森を分け入ると、秘境探検をしている気分。▲深山の中で突然人工建造物に出会い面食らう。開通間近の三浦半島中央道路だった。トンネル同士をつなぐ道路が森を裂いている現場でしばし立ち尽くして南尾根にあがり、三面観音が置かれた地蔵山へ。上山口・新沢へ下る尾根は密林を抜けるような藪の深い山路。▲葉山を北から森戸川源流をたどり、南尾根をまたぎ上山口へ。大楠山麓に入り、越えてきた三浦アルプスを眺めて、水源地から下山川が流れる星山の里を歩く。さらに峰山を縦走して長者ヶ崎まで。▲山桜が咲き白く霞んだように見える春の山、時折聞こえてくる鶯の澄んだ音色が心地良い。▲山の上の乗馬クラブと大原鞍馬道を抜けると、最後に絶景に出会える。北から南へ、さらに西へと葉山を縦断する長い行程でも足取りは軽い。低山を彷徨する面白さが凝縮したような三浦半島の小さな山旅である。

途中、左手に鳥居が見えてくる。
この地に居を構えていた長江義景が祖父の鎌倉権五郎景政をまつって建てたという御霊神社が、石段と小さな社殿が桜山を背にしている。

森戸川にかかる橋を渡り、逗葉新道を横断すると、いよいよ阿部倉山を左手にして、森戸川に沿って山あいに入る。
大山林道/森戸川源流
森戸川に沿って続く大山の里が、「山へ入る」という気持ちにさせるプロローグ。林道入り口のゲートを抜けて森戸川のせせらぎを道連れにして歩く。昨日までの雨の影響か・・やや白く濁った流れが速い。
林道に沿って流れる森戸川が蛇行している。
左手に流れていた川が、いつの間にか右手に。良い天気の休日だが、大山林道は人気がない分、せせらぎの音だけが大きい。植林杉が両側の急斜面に峻立し、シダ類が地面を覆い、苔むした切り株も鬱蒼とした森の雰囲気を醸し出す。
林道を15分ほど歩く。
右手の急斜面下に「20番」の山火事防止の立て看板がある。ここから急斜面を登ると南尾根へ上がることができる(下沢尾根)。仙元山からは、逆に森戸川へ下ることができるルートだ。途中にロープをよじ登る急登があり、林道から一気に標高を上げることができるが、体力と登山に準じた装備が必要。

すぐ左にある枝路は、前回私が迷い込んだ沢すじ、最初はしっかり付けられた踏跡が藪に消え、急斜面が両側に迫る足場の悪いルート、大きな崩壊跡も生々しい状態だった。(危険

もう少し林道を歩こう。
ほどなく右手に蛇行して道から離れていた川が目の前に現れる。「鳥獣保護区の赤い看板」の下に「谷沢尾根」とマジックで書かれ、その方向に川が流れている。森戸川と三峰沢支流が出合い、木漏れ日が川面に落ちて明るくひらけた場所。川背を渡り向こう岸にある「谷沢尾根登り口」へ。
谷沢尾根
三峰沢は急勾配の谷間を駆け下りるように流れる渓流だ。
途中に「19番」の看板がある。斜面に付けられた路を登るにつれて谷が深くなり、左手の山が壁のように迫ってくる。
踏跡ははっきりしているが、渓流沿いの山深い雰囲気。この先誰とも出合わないような気がする静けさ。・・こんな場所で人と出会う方がドキッとするかもしれない。杉の倒木が何本も横たわり、細い沢にシダが葉を広げて流れに削られた岩が苔むしている。山ができたときから続いてきた自然の営み。
やがて唐突に渓流がコンクリートで護岸された場所に出る。その先を辿ると山の一画が削り取られ、左右のトンネルをつなぐ道路に出くわす。開通直前の「三浦半島中央道路」だ。その下のコンクリートの溝を沢が流れている。間もなく、ここは「渓流沿いの静かな森」と形容できなくなる。
三浦半島中央道路が葉山の山間部を南北に3本のトンネルで貫通。トンネルの継ぎ目で森を通る道路は2箇所。ここは、新沢トンネルと竜神トンネルの継ぎ目。
トンネルから山路に戻る。
やがて小川が流れる開けた場所に出ると木に付けられた目印がある。再び登り、標高をかせぐと、笹ヤブの間に踏跡がしっかり付けられた尾根路となる。途中に「18番」の看板。南尾根へ合流するまでもう少し。


南尾根と合流
T字に尾根へ合流する。(案内表示あり)
右手は仙元山方面、左手は畠山・田浦梅林までの長い南尾根の縦走路。アップダウンの連続で田浦までは3時間はかかりそうだ。前回はバテバテでこの尾根を上山口まで歩いた。南尾根は畠山縦走ルートとも呼ばれる。畠山(206m)は葉山と横須賀の市境、田浦緑地の南にある。半島を東西に縦断する山塊が東京湾側へ落ちる最後の主峰である。

160mの尾根にいる。ここから見える高い山容は、北尾根の主峰・二子山(208m)と西北に仙元山のピーク(188m)だけである。
左写真の枝越しに見える山は二子山(下)か。若葉が芽吹き始め、山桜が混じる春山はまだら模様。
地蔵山(167m)
合流地点から地蔵山までは仙元山方面へ3分ほど。
(右上写真)見通しのきかない山頂に古木が枝を広げ、寛政11年と彫られた観音二基がまつられている。山頂にある案内表示には「観音塚」とある。馬頭の三面観音を見ると、左右に3本づつ出ている手が何かを持っている。手を合わせて山歩きの無事を祈る。
T字の合流地点へ戻る途中に、南側へ下る枝路がある(一色方面へ下りるらしい)。

樫の木の尾根

合流地点へ戻って、田浦梅林方面へ南尾根を往く。
10分ほどで樫の大木が並ぶ尾根が現れる。(右下写真)根が這う尾根に樫の白い木肌が独特な雰囲気。大楠山麓を望み、下山川が流れる星山方面が春の陽を浴びのんびりと見える。

今のところ、ゆっくり休憩をとり水分を補給しながら、コースアウトで体力を消耗せず、めずらしく順調だ。白く霞んだような春山を楽しむ余裕があり、足取りは軽い。芽吹き始めた山の息吹・・枯れ枝に混じる山桜が愛らしい。樫の木の尾根から新沢尾根への分岐へ向かう。
新沢尾根を下る
樫の木の尾根から15分ほどで分岐がある。
27番」の看板がある分岐を右の上山口方面へ(案内表示はなぜか行き先がわからないようにマジックでぬられている)。少し下ると三角に盛り上がった山が見える。仙元山のピーク(188m)だろうか。すぐに踏跡の薄い密林風の路になる。ヤブが深く、アオキやシュロ、ヤツデ、笹などの低層の茂みがジャングルの様相。夏場は歩けないだろう。


しばらくヤブ路を往き、清水が流れる谷へ下りる。2本の清水が合流して山あいを潤している。新沢沿いに往くと谷間が開けて水辺が広がる湿原の広場に出る。小さな桃源郷のような場所だ。セリだろうか、水辺の植物の間を縫って春の小川はちょろちょろと流れる。
桃源郷を過ぎると、土砂を止めるためにせきが切られている。この先は、山あいに田畑が続く田園風景を眺めながら、上山口の街道へ。
上山口
ようやく人家が見えてきた。
南側にひらいた山あいは陽だまりのように暖か。向こうに大楠山麓の丘陵が見える。「山から来たのか?」とおじさんが珍しそうに声を掛けてきた。
昔は趣味でカメラをやり、蛍を撮りによく山へ入ったという。上山口は姫蛍、長柄には大型の源氏蛍が生息・・光る時期は短く、6月25日から7月上旬までの2週間だという。(写真を取るために25日という日付まで憶えているらしい)。湿原になっている場所は昔は池だったとか・・三浦半島の温泉のことにも話が及び、星山温泉のことを尋ねると、そう言えば・・とか、結構な時間立ち話をしてから、新沢橋を渡り街道へ。
上山口/大楠山麓方面の田園風景
葉山の丘陵/新沢は下山川と合流する
トンネル脇の削った斜面の隙間に咲くタンポポ
街道を渡り、水源地から下山川沿いに星山の里へ(後編)