-LOCUS OF LOVE あの夏の日’98-
Vol.12
再び喪服を着る日がやってきた。
今日は義父を祭壇から仏壇に移す。白木の位牌に代わり塗位牌を持つ駿を、私は萌と共に見守る。
赤とんぼが行き交う墓で
「墓標の墨、褪せるのが早いわね」
と言った姉に
「無事冥途への道が拓けたんでしょう」
と、駿が応えた。
「親父、この世にはもう未練がないんだよ。弥生ちゃんが、今日までの間追善の供養を絶やさなかったからだな、きっと」
信さんはそう続けてくれた。隣では義母が微笑を浮かべて頷いている。ふと気づくと、線香の束に火をつけ終えた駿が私に笑顔を投げていた。
(駿・・・?)
目が合うと、さらにニッコリと頷いてくれた。
-私のために駿が微笑んでいる!-
嬉しくて、ただ嬉しくて…私は愛する人に頬笑みを返した。
【epilogue】
背の低いひまわりは、まんなかの管状花で映し出していた『私たちの夏』を真っ白にしたかと思うとすぐさま元の紫褐色に戻した。ひまわりのスクリーンをたったひとりで見ていた私は、つい先ほど亨のジョークに大笑いした駿の笑顔を思い出し、再び胸を熱くした。
(やっと、やっと大声で笑ってくれたのね、駿…)
今日の駿は正装のモーニングではなく、略礼装の黒のスーツだった。法要にも関わらず、比較的リラックスしているのはそのせいかもしれない。それとやはり、父を亡くした彼の悲しみがこの49日の間に癒えた証拠だろう。幸い、仲間全員で彼の朗笑を見た。
遠い日…私は母を失った後、一体いつ頃みんなに笑顔を見せたのだろう。自分ではすっかり忘れていて思い出せない。でも、きっと仲間は覚えている。今私が【駿にほんとうの笑顔が戻った日】として今日の日を心に留めるように、彼らにも【弥生がまたばか笑いを始めた日】が記されているんだ。それぞれに乗り越えたハードルと同じだけある笑顔の記念日を、いつか・・・いつか・・・笑顔で打ち明けあいたいと思う。
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