電装系の良くあるトラブル レギュレータのパンクについて
バイクに長い事乗っていると、いるいるなトラブルを体験します。その中でも電装系のトラブルは、直接トラブル原因が見える事はほとんど無いので厄介です。その厄介なトラブルのうち、比較的多くのライダーが体験する[レギュレータのパンク]について書いてみる事にしました。

レギュレータとは…
正確には[レギュレート・レクチファイア]という名前のパーツで、整流と電圧制御を受け持っています。元々は別のパーツだったのですが、一体化されました。
ジェネレータは交流発電機で、ホンダのバイクの場合三相交流(単相×3)が多いようです。このままでは利用できないので、直流に直す(整流)必要があります。この整流を行うのがレクチファイアです(実際の回路など詳しい事は、関連Webサイトを参照して下さい)。
さて、整流されて直流を得た訳ですが、ここで得られた直流は電圧も電流も不安定で、そのままバッテリに流すとあっという間にバッテリが壊れます。なぜならジェネレータからの出力は完全にエンジン回転数に依存していますから、回転数が上下すれは当然変動します。レクチファイアは単純に整流するだけなので変動を抑制する機能はありません。そもそも回転数を上下させないとバイクは走れませんね。
(エンジン回転数を常時最高効率回転数に維持し、発進時はクラッチによる動力伝達割合の制御、発進後はスクーター式のプーリーとウェイトによる変速機構を電子制御する…という機構ならエンジン回転数を変動させず走行可能ですが、大排気量車では不可能ですし現在の量産バイクにそういう構造の機種はありませんね。電圧変動などに対する耐性の確保量を小さくできるので、電気回路はずいぶん簡単になりそうですがどんなものでしょう? 2004/11/09)
特に最近のバイクに使われているMF(メンテナンスフリー)バッテリは入力電圧の変動に対する耐性が以前の開放型に比べて小さいので、正にあっという間に壊れてしまいます。それじゃあ、どうすればいいのか?→バッテリに流しても平気な電流・電圧に規制すれば良い訳で、ここでレギュレータの登場です。
レギュレータはバッテリに供給しても問題ない範囲に電流電圧を制御します(構造や原理は関連Webサイトを見てください)。
ここで右の図の登場です(サービスマニュアルに記載されている物を元に作図しましたが、これ以上にうまく説明できる図をオリジナルで考えられませんでした)。
縦軸にバッテリ端子間電圧、横軸にエンジン回転数が割り当てられています。
回転数が低いうちは充放電がバランスしていて、電圧が変化しません。
スロットルを開け、ある程度回転数が上昇すると、発電量が消費量を追い越し端子間電圧も上昇します。
そのまま開け続けると電圧もどんどん上昇します。でもそのままではバッテリの充電可能電圧をオーバーしてしまうので制限電圧を設定し、それ以上の電圧がバッテリにかからないようにします。この流れを示したのが緑色のラインです。
制御電圧を設定してバッテリに流れる電圧を制御しても、ジェネレータから来る電力はどんどん増加していきますから、これをどうにかする必要がありますが、オートバイに搭載されているレギュレータは捨てています。具体的には電力を熱に変換して、空気中に捨てています(図で言うと緑色黄色のラインに挟まれ余剰電力と書かれた領域です)。
レギュレータの仕事とは
―― バッテリ端子間電圧を緑色のラインの範囲に制御しつつ、余分な電力を熱に変換して捨てる事 ――
と言えるでしょう。


レギュレータがパンクするのは…
メーカーのサイト等を調べても、メーカーに質問をしても、明確に原因を教えてはくれませんでした。場合によっては「半導体による無接点制御なので、基本的に消耗する事はない」なんて返事がきたり…でも、実際の話パンクするんですよね〜。私は3車種で各一回ずつ経験してますから、「偶発的な…」という説明を真に受ける事はできません。でも、パーツ交換をすると復旧するので、釈然としないながらもパーツを注文していました。
ある時、ちょっとバイクで用事を済ませて帰宅し、すぐにシートカウルを外して作業をはじめた時に、何気なくレギュレータを触ったら結構熱かったのでびっくりしました。これがきっかけで色々調べ、この時初めて余剰電力を熱に換えて捨てているという事を知りました。他にはパンクは大排気量車より中小排気量車に多く発生している事、大体シートカウル内という換気されにくい場所に取付けられている事、改良型と言われるものはヒートシンクが追加されている事、が判りました。
これで熱が原因ということがはっきりしました。
ここから先は私の推測ですが、ほぼ間違いがないと思っています。
レギュレータが余剰電力を熱に変換したあと放熱している事は上の方で書いてますが、この時の冷却方法は空冷ですね。熱を受け取るのはシートカウル内の空気ですが、積極的な換気はされていません。だからレギュレータからの放熱が続くとカウル内温度はどんどん上昇するでしょう。するとレギュレータの放熱効率がどんどん悪くなり、排出できない熱がレギュレータ内に溜まります。熱が溜まり続けると、最終的には半導体の耐熱温度を超えて壊れる事になります。また耐熱温度を超えないまでも、それに近い状況が頻繁にまたは繰り返し発生すれば少しずつ劣化し、最終的に故障する事は十分考えられます。
高回転域を使う頻度の高い中小排気量車の方がパンクが頻発するのも道理ですね。


パンクするとどうなるか…
レギュレータがパンクすると、電圧は右図の赤いライン黄色いライン上を推移するようになりますが、瞬間的には200ボルト以上の高電圧が流れます。こうなると以下のような現象が発生します。
  • 正常な充電ができなくなります。
  • 制限電圧以上の電圧が電装系に流れるので、頻繁にヘッドライトバルブが切れるようになります。
  • バッテリも頻繁に上がってしまいます。
  • 開放型バッテリの場合は、セルが干上がったり、信号待ちなどで塩素系トイレクリーナ(サンポールが有名)のようなにおいがします。
  • 放って置くと正常なバッテリまで被害がおよび、寿命が尽きてしまいます。
ついでに修理に必要なパーツ代が高額になって、懐が寒くなります。


パンクさせないために…
バンクする原因が熱である事がわかっているのですから、レギュレータからなるべく多くの熱を継続的に奪うようにすれば、目的は達成できます。
1. ヒートシンクを取付る。
メーカーが対策品として出しているものがこの方法をとっています。個人レベルで新たなヒートシンクを取り付けるのは難しいですが、熱伝導率の高い銅版などをレギュレータとフレームの間に挟み込んで熱容量を増やしつつ放熱面積も稼ぐ事ができます。溝などを掘って表面積を増やすと更に効率がアップします。
2. 強制冷却ファンを取付る。
冷却を自然対流に頼らず、積極的に空気を吹き付けて放熱させます。ファンの取り付けスペースと電装系への加工が必要ですね。原理はCPUクーラと全く一緒です。
3. 外気を取り入れるダクトを取り付ける。
上記二点とも対策として正しいのですが、積極的に換気されていないシートカウル内の空気が温まりきってしまったら、意味がなくなってしまいます。むしろ空気への放熱効率を上げたので温まるのが早くなる位でしょう。そこで新鮮な外気を取り入れてレギュレータの冷却効率を維持するわけです。ダクトの設置場所さえ良ければヒートシンクや冷却ファンによる補助は必要なくなってしまうでしょう。
1+3または2+3という複合的な対策をしても完全にバンクを防止する事は不可能とは思いますが、対策しないままでいるよりはずっと良いと思います。あとは「車検ごと」など期間を決めて定期交換するという方法をとれば、より確実にトラブルを回避できるでしょう。


to Web site Topto Bike Main Page