| ブレーキあれこれ |
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マスターシリンダーサイズとレバーレシオ・油圧レシオ・トータルレシオ
| バイクを何回乗り換えてもブレーキには色々とあります。 過去のページを読み返してみると、その時々で様々な事を考え試しています。確固とした根拠無く、伝聞や風聞を参考にしてパーツを交換したものの思った程の効果が得られなかった事もありました。 ブレーキという生死にかかわる非常に重要なシステムの変更について、漠然とした不安を抱え始めた頃にRC46とSC45というに逸材に出会い、幅広い考察をする事ができたのは幸運でした。この経験の結果、不満の原因とその解消について多くのノウハウを得て、より本質的な事に考えが及ぶようになり、結果的により多くの安全要素を取り込むことができるようになりました。 RC46のフロント周り移植の際もブレーキは結構頭を悩ませたポイントでした。じっくり考えて「効果が高くコストのかからない」という都合(虫)のいい方法を考えてます。正しい解答を得るには正確なデータを元に考える必要があり、視覚的に把握しやすい表やグラフを作るのが大好きな私はこんなページを作ってみました。 どこまでデータを生かせるのか不明ですが、自分以外に一人でも「こんなデータが欲しかった」と言う人がいれば嬉しいですね。 注…このページでは特に断りが無い限り、長さと径:mm、面積:muです。 ブレーキシステム ブレーキは減速する為の機構ですが、具体的には運動エネルギーを摩擦によって熱エネルギーに変換する装置です。 現行のスポーツバイクに搭載されているブレーキ100%油圧ブレーキで、大雑把にはフルードを送り出すマスターシリンダー、ディスクロータを締め上げるキャリパー、それを繋ぐホースの3点で構成されています。す。 油圧レシオとレバーレシオ ブレーキ周りの話やチューニングに欠かせない用語を少し。 とりあえずこれだけ覚えておけば、ブレーキ周りに関する大抵の話はOKだと思います。 まずマスターシリンダ |
| @呼びサイズ | A径の増分 | B断面積 | C断面積対比 | |||||
| 1/2inch | 12.70 | - | 126.68 | 100.00 | 79.01 | 64.00 | 52.89 | 44.44 |
| 9/16inch | 14.29 | 1.59 | 160.32 | 126.56 | 100.00 | 81.00 | 66.94 | 56.25 |
| 5/8inch | 15.88 | 1.59 | 197.93 | 156.25 | 123.46 | 100.00 | 82.65 | 69.44 |
| 11/16inch | 17.46 | 1.59 | 239.50 | 189.06 | 149.38 | 121.00 | 100.00 | 84.03 |
| 3/4inch | 19.05 | 1.59 | 286.02 | 225.00 | 177.78 | 144.00 | 119.01 | 100.00 |
| ※数値はいずれも少数第三位を四捨五入 装着例 RC46→1/2inch SC36→9/16inch RC30→5/8inch VTR SP-2→11/16inch VTR SP-1→3/4inch |
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上の表について説明すると、
では次に実際のレバーレシオ、油圧レシオ、トータルレシオの話に進みましょう。観念的な話では説明が難しいので、具体的な数値を挙げます。ブレーキレバー軸中心からレバーを握る位置までを100o、キャリパはSC45純正右側を使ったとします。 SC45純正キャリパのデータは以下の通り。 レバーレシオを算出する為には梃子の支点⇔作用点間の距離を求める必要があります。右の図面はRC30用の5/8inchマスターシリンダとSC45用3/4inchマスターシリンダの、レバー軸とピストン周辺を実測に基づいて書き起こした物で、左:RC30用、右:SC45用です。※RC46用1/2inchiとSC36用9/16inchのマスターシリンダはシリンダ径を除けばRC30用とほぼ同じ数値です。作図段階ではSC36については未確認だったので、RC30/46と記載しています。 データが揃えば後はExcelで簡単に計算できます。
ポンプとしての機械的能力に差が無いのであれば、わざわざラジアルもしくはセミラジアル化するのでしょう? 理由の一つに入力ロスの少なさが挙げられます。 右上の図をもう一度見てください。赤い線で円弧が書き入れてありますが、これがポイントです。この線はブレーキレバーを握り込んだ時、作用点がどのように動くかを表していて、当然ながらブレーキレバー軸を中心とした円の一部を描きます。ピストンロッドは直線運動しかできませんから、円弧上を移動する作用点はピストンロッドの頂上部をこじりながら押し込んでいきます。真っ直ぐにしか動けない物に斜めの力を加えながら押していくのですから、当然大きなロスが発生します。このロスを少しでも小さくする為にレバーレシオを大きくとってストロークを減らし、不足する吐出量をシリンダの大径化(油圧レシオを小さく)で補い、トータル的にピストンロッドをこじる量を少なくしています。 ※フルードの吐出量を基準にとると5/8inchiでのピストン移動量5oと3/4inchiでの移動量3.5o弱が同等で、こじり量は5/8inchの0.5oに対して3/4inchでは0.32oです。入力時のロスが大きければ、逆方向つまりフィードバック情報もロスにかき消されてしまうでしょう。するとブレーキをかけた時に得られる情報が乏しく微妙な操作ができず、いわゆるダメなブレーキになってしまうのではないでしょうか。 ちなみにブレンボのレーシングラジアルマスターはシリンダ径×ストロークの刻印がありますが、ここでいうストロークは一般的なピストンの移動量ではなく、レバー支点とシリンダー/ピストン中心の距離を表しています。市販されている19mmシリーズには×20、×18、×16の三種類があります。数字が小さくなるほどレバー比が大きくなり「奥で効く」ブレーキになります。 次はキャリパ ピストン径からキャリパに組み込まれているピストンの総面積を出しました。 |
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| 車 種 | RC46 | RC30 | SC36 | SC45 | ||||||
| 詳 細 | 純正 | 改造後 | L | R | L | R | L | R | ||
| L | R | L | R | |||||||
| ピストン 直径 (o) |
25.3 | 27.0 | 25.3 | 27.0 | 32.0 | 32.0 | 30.0 | 30.0 | 34.0 | 34.0 |
| - | - | 22.6 | 22.6 | - | - | - | - | - | - | |
| 22.6 | 25.3 | 22.6 | 25.3 | 30.0 | 30.0 | 27.0 | 27.0 | 32.0 | 32.0 | |
| ピストン 面積 (mu) |
903.87 | 1075.27 | 1305.01 | 1476.42 | 3022.18 | 3022.18 | 2558.80 | 2558.80 | 3424.30 | 3424.30 |
| 1979.14 | 2781.43 | 6044.36 | 5117.60 | 6848.60 | ||||||
| 注1…ピストン径はRC46のみ実測。RC30とSC45はバイカーズステーションを、SC36はサービスマニュアルを参照。 注2…ピストン面積はπ≒3.14156として計算し、少数第三位を四捨五入。 注3…RC46のみピンスライド方式。その他は対向ピストン方式。 |
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| パスカルの法則に従う油圧ブレーキは、ピストン面積が重要なポイントです。作用側であるピストンの面積差は、そのままパッドに加えられる力の差に反映されます。 こうしてみるとRC46用のピストン面積が特に少ないですね。純正同士で比較するとSC45用の30%弱の面積しかありません。これは同じマスターシリンダに接続しても、RC46用のキャリパはSC45用の30%弱しか力を発生させられない事になります。とんでもなく少ないような気がしますが、実際にはピストンが無い側のパッドも反作用でロータに押し付けられるので、反作用分として作用分と同等の30%弱が上乗せされると考えて良いでしょう(注)。つまり、60%程度の力は得られる事になります。更にD−CBSによって自動的にリアブレーキも効力を発揮する事、RC46がスポーツ・ツーリングモデル、SC45がレーサーもしくはサーキット走行メインという事を考え合わせれば、それ程無茶な数値ではないでしょう。
まずは純正の組み合わせで、私が乗ってきた大型4車種をピックアップ。 |
| 車種 | マスター面積 | ピストン総面積 | 油圧レシオ | レバーレシオ | トータルレシオ |
| RC30 | 197.93 | 6044.36 | 30.54 | 4.01 | 122.40 |
| RC46 | 126.68 | 1979.14 | 15.62 | 4.01 | 62.62 |
| SC36 | 153.94 | 5117.60 | 33.24 | 4.01 | 133.25 |
| SC45 SP-1 |
283.53 | 6848.60 | 24.03 | 5.25 | 126.07 |
| ツーリングモデルのRC46が一番レシオが小さいですが、こんなに差があるとも思いませんでした。 RC46について補足すると、数値は単純にピストンの面積で計算されているので、上の方で書いている反作用分は考慮されていません。反作用分を含めると倍近い110相当と考えて良いと思います。 その他にピンスライドというキャリパ形式も関係しているかも知れません。オイル・ダストの両シール以外にもスライドピンのブーツによるロールバックが発生するので、一般的対向4ピストンキャリパに比べるとパッドがローターから離れる距離が大きくなります。だから小さ目の油圧レシオでキャリパ自体のロールバック分もカバーするようにしているのでしょう…たぶん。次はRC46のフロント移植に関連してブレーキを更新していった経緯に沿って各レシオを見てみましょう。 |
| 組み合わせ | マスター面積 | ピストン総面積 | 油圧レシオ | レバーレシオ | トータルレシオ | |
| @ | RC46MC 0000+RC46純正 |
126.68 | 1979.14 | 15.62 | 4.01 | 62.62 (112.72) |
| A | RC46MC 0000+RC46改 |
126.68 | 2781.43 | 21.96 | 4.01 | 88.00 (158.40) |
| B | RC30MC 0000+RC46改 |
197.93 | 2781.43 | 14.05 | 4.01 | 56.32 (101.38) |
| C | SP-2MC 0000+RC46改 |
239.50 | 2781.43 | 11.61 | 5.25 | 60.93 (109.68) |
| D | SP-2MC 0000+SC36純正 |
239.50 | 5117.60 | 31.37 | 5.25 | 112.11 |
| ※トータルレシオ下段は、反作用分をロスを含めて80%とした場合の補正値。 その他の社外キャリパについてはこちらを参照して下さい。 |
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| 長い前振りの後でやっと本題に辿り着いた感じですね。 さて、表の@純正仕様からA純正改仕様へ移行した際に、トータルレシオが140.53%に増加してます。この数字はとても大きく、ブレーキフィーリングはかなり悪化しました(→参照)。その後のRC30マスターを導入したBではトータルレシオが純正の89.94%にまで小さくでき、タッチが大幅に改善されました(→参照)。キャリパはそのままでSP-2用マスターを導入したCではトータルレシオは97.3%になりました。最終仕様のDではトータルレシオは99.46%とほぼ純正と同値になると共に、今までのピンスライドキャリパ→対向ピストンキャリパへの移行で入力が無駄なくパッドに伝えられ、コントロール性が云々…という話ができる状態になりました(→参照)。 データと当時のブレーキフィーリングを思い返してみると、トータルレシオが20%以上…特に大きくなる方向に変動すると顕著に悪影響が出るようです。マスターシリンダの交換や6ピストンキャリパへの移行等トータルレシオが大きく変動する可能性がある場合は、予めトータルレシオを計算し悪影響を抑える対策を講じる必要があります。 結果論ですが、RC46に於いて実行した様々なブレーキ関連の試行錯誤は、大筋で正しい方向性だったようです。最終仕様にも不満が残ってはいましたが、310o化を含めて改良途上だった事、可能な限り費用を抑えるという点を考え合わせると及第点でしょう。 RC46最終仕様で感じていたのはブレーキ効力がもうちょっと欲しいという事でした。 これを純正流用で適正化するなら、SC45純正キャリパを導入(ボルトオン)してRC46純正より大きなトータルレシオに設定、パッド面圧を大きくしてブレーキ効力を稼ぐ…という物になったと思われます。まぁ、実際には価格の問題からブレンボの鋳造4ピストンを導入していたでしょう。 NISSIN純正は片側(パッド無し)で\25,000程度ですから、左右+パッドでおよそ\60,000。 色々データを揃えてあれこれ考えてもどうしてもわからない部分がフィーリングやコントロールという部分です。 なぜブレンボのラジアルマスターは、あれほどまでにコントロールしやすいのか? マスター以外を全て同じにしても、ブレンボラジアルは際立ってコントロールしやすいのです。シリンダ径はNISSINのセミラジアルと同等、つまり油圧レシオも同等。レバーレシオもほぼ同じ。でも実際にブレーキング最中の感触はまるっきり違います。 ラジアルとセミラジアルの違い以上の何かがあるのでしょうか? ブレンボラジアルはレース仕様なので無効ストロークが少ないですが、一度ブレーキがかかり始めてからは関係ないですから、これが影響しているとは思えません。この謎については、もっと調べて、随時考察等を追加します。 |
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キャリパー
参考資料
純正以外のキャリパについてのデータ
| キャリパ | マスターシリンダ | マスター面積 | ピストン総面積 | 油圧レシオ | レバーレシオ | トータルレシオ |
| ニッシン6ピストン | SP-1MC | 285.02 | 6311.39 | 22.14 | 5.25 | 116.18 |
| SP-2MC | 239.50 | 26.35 | 5.25 | 138.35 | ||
| RC30MC | 197.93 | 31.89 | 4.01 | 127.80 | ||
| ブレンボ2ピース | SP-1MC | 285.02 | 6459.05 | 22.66 | 5.25 | 118.90 |
| SP-2MC | 239.50 | 26.97 | 5.25 | 141.59 | ||
| RC30MC | 197.93 | 32.63 | 4.01 | 130.79 | ||
| ブレンボ1ピース | SP-1MC | 285.02 | 7288.42 | 25.57 | 5.25 | 134.16 |
| SP-2MC | 239.85 | 30.43 | 5.25 | 159.77 | ||
| RC30MC | 197.93 | 36.82 | 4.01 | 147.59 |