| トシさんとナオコさん |
| 先輩のトシさん夫妻と呑みにいった。 「トシさん。そういえば俺のPCが最近調子悪いんですよ」 「かみくん。君の場合、調子悪いと言ってくるときは、ほぼ100%酔っ払って余計なことをしたときに限ってますよね?今回も何かやらかしたのに覚えていないんじゃないんですか?」 俺はコンピュータ関係のことでわからないことがあると、いつもトシさんに助けを求める。トシさんはその手の専門家なのだ。 「いや、そーゆーわけでもない……と思うんですが……」 「うん。かみくんに聞いても仕方ないですね。かみくんはどうせ酔っ払って覚えちゃいないだろうから」 トシさんは先輩なのにいつも敬語だ。そしていつも冷静だ。出会った頃はこの人はどうしていつもこんなに冷静なんだろうと思っていたが、最近その謎が解けた。 「かみくんはお酒を燃やして動いている生物だからね。酒飲まないと死んじゃうんだよ。ひょひょひょひょ」 人のことを 「酒を燃やして動いている生物」 呼ばわりしながら妙な笑い方をしているこの生物が、トシさんを冷静にならざる得ないような状況に追い込んでいるのだ。 トシさんの奥さん、ナオコさんだ。 「うちのモモンガもさ、ひまわりの種を食べるためならなんでもするからね。かみくんもお酒を飲むとダメ人間に早変わり」 いや、意味わかんねーし。 百歩ゆずってモモンガと比べるのはよしとしても「なんでもする」と「ダメ人間」 のあいだが、一ミリたりともつながってねーから。 トシさん、なんか言ってやってくれないかな。 「ナオコ。食べ物を口に入れたまま笑うのはやめなさい」 いや、突っ込むのはそこじゃ なくて。 「それで?何をやったのか全然覚えてないんですか?」 「トシ、そりゃ無理よ。モモンガだって怒られても全然覚えてないじゃない!元気ならいいのよ」 俺の元気は、あんたには関係ないっ!つーか、どーしてもモモンガと比べるのか!くっそ、こいついっぺん焼きいれなきゃわからねー な。 「まあ、PCはあとで見てあげますよ。それはそうとかみくん、ちょっと見ないうちに君のサイトは創作系になったんですね?」 「あ、見てていただけましたか。ありがとうございます。もともと俺、物語を書くのが好きで……」 「ソーサク系?かみくん子供作る以外になんか作れたんだ?」 だまれ、バカナオコ。 「勘弁してくださいよ、ナオコさん。俺、小説とか書くの結構好きなんですよ。今は短いの書きながら、小説を書く練習をしてるんです」 「アレですね?いずれは雷電みたいに長い話を書きたいんですね?」 さすがトシさん、判ってる。それに俺のクソ長い駄小説の 「雷電」 まで読んでくれてるんだ。嬉しいなぁ。この人とは趣味も合うし、こういう人が喜んでくれるような話を書きたいな。なんて思っていたら、ナオコさん、 「アレだね?字を覚えた子供が、やたらと落書きするのといっしょだ」 こいつには、一編たりとも書いてやらない。 「かみくんの作品は、君の趣味に走らないで、エンターテインメントに徹した話のほうが評価は高いみたいですね。でも、私は趣味に走った話も好きですよ。まあ、私とかみくんの趣味が合っているせいかもしれないけど」 これだよ、嬉しいよねぇ。まあ、無料とは言え物語を配信している以上、読む人のことを一番に考えるのがあたりまえなんだよね。それは判っているんだ。 でも、もともと書くのが好きでやっている以上、てめえの書きたいものを書きたいって欲求はどうしたってある。だから、マスターベーションみたいな作品を書いたりして、しかもそれを公開することもあるわけだ。 別にそれを高く評価してくれってんじゃなくて、俺しか楽しめないような話だから放っておいてくれていい。 でも、中にはそれを面白がってくれる同好の士というか馬鹿な人がいて、そんな人に一般の人の評価が低い作品を誉められたりすると、俺は有頂天になるんだ。 なんて喜んでいたらバカナオコが、失礼全開の発言をしやがった。 「かみくんとトシさんて共通点があるの?人類の男って以外に」 どうやってへこませてやろうかと考えていると、トシさんがカタキをうってくれる。 「きちんと作りこんだ、面白い物語を愛するって共通点がある」 イエイ!さすがトシさん。冷静かつ的確な突っ込みは女房さえ容赦しない!聞いたか、バカナオコ!男同士っていうのはなぁ…… 「かみくんは作りこんだ話なんて書けないでしょ?私が知ってる生物の中では、一番飽きっぽいもの」 ……ちっ!こういうときだけ、突っ込みが的確だよ、この女。 「物語って言えばさ、トシが今度の出張で静岡に行くんだけど、怖いよね?私は行かせたくないのよ」 一から十まで意味が判らねえ……ああ、アレか。富士山が噴火するとか言う物語をどっかで読んだのか。 「おまえが心配しているのは、噴火の後に起こる食料難のことじゃないのか?どうせドラゴンヘッドでも読んだんだろう?」 強烈な突っ込みが、トシさんから入った。オーゲー!そのくらい突っ込まないと、この女は判りませんぜ。 「食料は大丈夫。いっぱい買いだめしてあるから」 「一週間前にもそんなことを言っていて、結局一週間で食べ尽くしてしまったじゃないか」 「そーなんだよねー、あると食べちゃう」 いや、食糧備蓄以前だろ、それ。 「まあ、また買えばいいだろうけど、目の前にあったら食べてしまうんでは、動物と同じじゃないか」 うん、トシさんいいコト言った。その通り!と思っていたら、 「何とか、食べないように工夫しないとな」 いや、トシさん、そうでなくて。喰うなって言えばいいんじゃないかと? 「でもね、目の前にあると食べたくなるのよ。食べたくなくなるようなものならいいんだけど」 なら、牛糞でもおいとけ。 「食べ物と判らなければいいんじゃないか?」 まあ、この人にはそれしかないかもね。 「例えば?」 「生きているとか……あ、そうか!それでナオコはモモンガを飼っているんだね?なるほど、先見の明があるな」 いや、トシさん。そんなわけないと思います。買いかぶりすぎです。 「でも、モモンガってまずそうだよね?」 そんな疑問系には答えたくない。俺を見るな。 「料理の仕方次第だろう」 と、トシさん!モモンガ喰うのはやめようよ。 「じゃ、かみくんに頼んじゃおうかな?創作系だもんね?」 創作料理の創作じゃねーよ、とかの突っ込みさえしたくない。いいから俺じゃなくて、道場六三郎にでも頼めよ。なんて深層心理で突っ込んでいたら、トシさん、 「かみくんのモモンガ料理はきっと美味しくないよ。諦めなさい。そのうち美味しいのを用意してあげるから」 ……え〜と 。
「作らねえよ!」 「モモンガかよ!」 「美味しくないのかよ!」 「何を諦めるんだよ!味か?作るやつか?」 「何を用意するんだよ!美味しい料理か?美味しいモモンガか?」
どれで突っ込んで欲しいですか? |