宇宙の救助隊
俺はスペースレスキュー隊のナンバーワンだ。

どんな困難な状態の被災者をも、必ず助け出して見せる。俺がどのくらい凄いかって?そうだなぁ、たとえば乙女座……

ウゥゥゥー!

おっと仕事だ。行かなくちゃ!今日も誰かが俺の助けを待っている。

知らせを受けた20分後には、俺は要救助者のすぐそばまで来ていた。救出にはおそらく10分くらいかかるだろう。彼らの手持ちの空気が一時間分だという事だから、あと残り30分。悠々間に合う計算だ。

惑星探査を行っていた地質学者達が落盤事故にあったという話だから、おそらく調査か何かで洞窟にでも入り込んで、そこで落盤にあったのだろう。俺の救助用宇宙艇のパワーアームを使えば、落盤事故から救い出すなんてお手の物だ。

余裕をもって近づいた俺は、調査隊に無線で語りかけた。

「おーい!大丈夫か?今助けてやるからな!」

「ありがとう!助かった。他の連中は落盤に巻き込まれて死亡した。生き残りは私ひとりなんだ。早く助けてくれ」

無線から流れてくる声を聞いて、俺は愕然とする。なぜなら聞こえてきたその声は、三週間前に俺から愛しい恋人を奪った、奴の声だったからだ。

「そちらの状況がわからなければ、救助できない。映像を送ってくれ」

本当はそんなことないのだが、俺は声の主の顔を確認したくてそう言った。しかし、かえって来た返事は、発電機が故障しているために映像を送ることが出来ないというものだった。

そう答える声も、やっぱり奴の声に似ている。俺の可愛い恋人を奪った、憎いあの男の声に。しかし、違うような気もする。だが、こんな緊急の状況だ。誰だっていつもと声の感じは違うだろう。

何度も会話してみたのだが、はっきりと言い切ることは出来ない。一度そう言う先入観を持ってしまったため、冷静に判別することが出来ないのだ。

考えても見ろ。もしこれが奴なら、合法的に復讐する絶好のチャンスではないか。

ボイスレコーダや記録画像は後でどうにでも改ざんできる。このまま見殺しにすれば、彼が酸欠で死んでゆく様を実況中継で聞ける。何よりの復讐ではないか。

助けられると言ったり、やっぱり無理だと言ったりを繰り返せば、何度も絶望を味あわせて、最終的には徐々に酸素が足りなくなる恐怖でおびえる奴の様子を、ゆっくりと高見の見物できるのだ。

しかし、俺はプロフェショナルで、しかもナンバーワンだ。

これがもし奴ではないとしたら、大変なことである。今は確かにこんな悪魔じみた妄想にとらわれてはいるが、俺はナンバーワンレスキューなのだ。宇宙の事故で生命の危険にさらされてる人を放って置くことはできない。

もし万が一関係ない人を救えなかったとしたら、俺の良心と自信は音を立てて崩れ去ってしまうだろう。そんな事態は避けなければならない。

俺は声の主に向かって、なんとしても発電機を直せといった。そのためにこちらからできる、あらゆる手伝いをする。声の主はメカには詳しくなかったが、俺の的確な指示によって、発電機の修理に成功した。

「よし、それじゃあ、そちらの映像を送ってくれ」

俺は期待と不安の入り混じった奇妙な気持ちで、向こうから送られてくる映像を待った。しばらくのタイムラグの後、ついにその映像は送られてきた。

 

残り時間ぎりぎりで、俺は要救助者を救い出した。

本来なら充分余裕を持って救助できたはずなのに、ぎりぎりになってしまったので、少々あせった。しかしまあ、結果的には救助できたのだから問題ないだろう。

何より、救出率95%の俺の経歴にも傷がつかなかったことだし。

時間ぎりぎりで送られてきた映像に現れたのは、やはり奴だった。俺の心をずたずたにした、あの憎むべき恋敵だ。一瞬、殺意が膨れ上がったことは否定しない。

しかし俺は最後の最後で、道を誤らずに済んだ。

プロとしての矜持、人間としての道、男としての懐(ふところ)。全てが試された、最高に難しい仕事だった。しかし、俺はやり遂げたのだ。

プロとして最高の技術を持って彼を救い、人間として助けるべきものを助け、男として最大の度量を示して、俺はやるべきことをやったのだ。

彼はいま、俺の宇宙艇でリラクゼーションカプセルに入って眠っている。彼らが発見したモノの正確な位置を何度も聞く俺に対して、朦朧とした頭で俺に伝えたあと、崩れ落ちるように眠り込んだのだ。

極度の緊張から開放された安堵と、これからの幸せを思って、張り詰めていた糸が切れたのだろう。

しかしもちろん、このまま目覚めることはない。残念ながら、リラクゼーションカプセルが「予想外の」トラブルを起こして、彼は眠ったまま死を迎えることになる。

これは俺が最後の最後に出した、妥協点だ。

恐怖に駆られながら、寸前までおびえて半狂乱で迎える死より、リラクゼーションカプセルに入ったまま安らかに迎える死の方がよっぽど幸せだろう?

これはあくまで、俺のレスキューとしてのプライドが選ばせた方法だ。

モニターに写った映像に、彼が仲間とともに発掘した、大量の金塊を見たこととは何の関係もない。

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