| スクランブルセックス |
| モネのプラグに、ケーブルをジャック・イン。 続けて俺のプラグに、そのケーブルをジャック・イン。一応お互いにウイルススキャンすると、セックス用の回線だけを開く。 スクランブルの準備が整った。 俺たちはゆっくりとキスをする。俺の唇にモネの唇の感触が伝わる。ほぼ同時に、モネの感じる俺の唇の感触が、プラグから流れ込んでくる。 乳房を優しく包み込み、先端を静かに口に含む。モネがピクンと反応するのにコンマ1秒遅れて、俺も乳首を含まれる優しい快感に反応。 モネの舌を感じながら、俺自身を口に含む感覚も共有する。モネは俺に舐められながら、俺の舌が感じる触感をも味わう。俺はモネに挿入し、俺は俺に入れられる。モネは俺に入れられつつ、自分自身に包み込まれ、締め付けられる。 俺たちは、夢中でヤりあった。 お互いの快感が自分自身にも返って来る。まさに等価交換だ。まあ実際は、女が20%増しなのに比べて男は200%増しだから、厳密に等価とはいかないのだが。 何度もイったあと、ここちよい倦怠感の中で俺たちは朝日を迎えた。スクランブルのあとは、いつもそうだ。
朝食を取って出かけるモネを送り出し、俺は街へ出る。 心地よい緊張感が、俺の体を包んだ。ついに、計画を実行に移す時が来たんだ。俺の顔は、自然に引き締まる。 ルーサーの店に顔を出すと、相変わらずヤツはカウンターで眠りこけていた。俺が声をかけると、半分眠りながら返事をする。器用なもんだ。 「あんまり連絡がないから、忘れているんじゃないかと思ってね」 「あ……?ああ!あれな?おう、入ったよ。忘れてた」 やっぱり。こいつは本当にだらしないんだ。んで、俺がそんなやつの店を何でわざわざ使うかって言えば、もちろん理由なんて一つ。安いからさ。 ルーサーが、店の奥からディスクを持ってきた。俺は支払いしようとレジスタのケーブルを自分のプラグに繋ぐ寸前、我に返り、慌ててバッグの中から紙幣の束を取り出す。 今やドルのほかには世界で唯一といっていい、どこでも通用するキャッシュ、エンで支払いを済ませる。なんだか不思議な感覚だ。 安っぽいカードにプリントアウトされたシリアルキーを受け取ると、俺は家に帰った。 表に物を買いに出るなんて久しぶりだ。ちょっと歩いただけで、俺の足は悲鳴をあげている。しかし、コレばっかりは、オンラインで購入するわけにはいかないのだから仕方ない。 アイスブレイカ。 軍事用のコンピュータネクサス攻撃侵入プログラムだ。もちろん現在の最新モデルではないが、それでも充分強力な代物だ。 こいつはニッポンで開発された対米軍事プログラムで、このディスク一枚に、今までクラッカとして稼いだ蓄えのすべてと、俺が持っていたいくつかのプログラムの権利のすべてを売り払って、更にこれから十年はタダ働きしなくてはならないだけの金を突っ込んだ。 もちろんそれでも格安だ。ルーサーの店じゃなきゃ、こんなものは俺の手に届かない。手に入ると聞いたときは、舞い上がってスクランブルさえ忘れていたくらいだから。 それに、いくら金を注ぎ込んだって、こいつならすぐに回収できる。こいつの侵入を防げるセキュリティなんて、軍事用の最新ICE以外にはありえないのだ。 オンラインでディスクリーダ用のデバイスドライバをインストールする。回線を切断すると、部屋中の盗聴防止システムをすべて作動させる。 途中で電源落ちなんてしゃれにならないので、盗聴防止システム以外の家電の電源をオフにする。 プラグに外接のディスクリーダを繋ぎ、ドライバを立ち上げて、いよいよアイスブレイカの読み込みを開始する。 インストールには二時間かかった。 俺の脳の半分が、この軍事用のアプリケーションで満たされてしまう。それでも俺は満足して、早速、インターネットにプラグインする。
快感。 俺の全身は快感だった。 判るか?俺は世界中のほとんどのセキュリティをまったく無視して、好きな所へ、好きな時に、好きなだけ出入りできるのだ。 今、モニターの前にいるあんたのPCに一瞬で入り込み、中のデータを全部いただいていく事だって可能なのだ。 世界中のほとんどのコンピュータが、自分の前に足を広げて待っているような圧倒的な征服感。 世界中の銀行の金、世界中のほとんどのデータが俺のものなのだ。 これから手に入れられるすべての物よりも、この圧倒的、絶対的征服感のためにアイスブレイカを手に入れたと言ってもいいかもしれない。
それから、モネが帰るまでの10時間、俺はぶっ通しでインターネットのサイバースペースの中を跳んで歩いた。俺はこの10時間で、アイスブレイカにかかった金の半分以上を回収し、洗浄して、自分の口座に放り込んだ。 一息つくとモネを振り返り、満面の笑みで迎える。抱きついてくるモネにキスを返しながら、ふと、思いついたことを実験してみる気になった。 いつものようにお互いをケーブルで繋ぐと、もう一本のケーブルをインターネットに繋ぐ。インターネットを利用して遠距離での乱交をしているサイトを見つけると、サーバにもぐりこむ。こういう所はものすごくセキュリティがきつくて、今まではハッキング出来なかった。 だが、アイスブレイカがあれば、自分の家のトイレに入るより簡単だ。 まともに繋いだら幾ら取られるか判らないような金持ち用のサイトに、俺は鼻歌混じりで忍び込んだ。 とりあえず、何組かのパーティの回線から信号を引っ張り込んできて、俺とモネの中に開放する。 「す、すごっ……」 言ったきり、俺とモネは気を失いかけた。今まで持っていた、セックスへの考えが根底から覆された。 十人近くの人間の性的快感をいっぺんに味わったのだ。それも通常のように全員を繋いでの乱交ではない。十人で分け合うはずの情報を、多少劣化してるとは言え二人で受け取ったのだ。 俺とモネは、それこそ気が狂ったようにヤりまくった。そうしながらも俺は、次々とその手のサイトを見つけ、侵入し、情報を足しつづける。 はじめはいろんな情報を全部受け取っていたが、そのうちコツをつかんだ俺は、イってるヤツの信号だけを選択的に取り入れた。 朝までの残りの時間、俺とモネはイキ続けた。
いつのまにか気を失っていたようだ。 疲れきった体をゆっくりと起こすと、俺はフリーザからビールを取り出す。一息にあおると、冷たい炭酸がのどを心地よく刺激する。 起きてきたモネにもビールを渡し、俺はいつのまにか抜けていたケーブルを繋ぎなおした。 頭の中で不要なファイルの整理をはじめる。「プロジェクト・エデン」と銘打たれたファイルは、真っ先にゴミ箱行きだ。 不必要な人類を皆殺しにして、新しい世界を作り上げようなんてバカな計画に、何であれほど固執していたんだろう…… 今の俺に、不必要な人類なんてひとりもいない。みんな俺のために快感を製造してくれる、大切な存在なんだから。 俺はこれから先の快感にあふれかえる人生を思って、とてつもない幸福感に包まれながらインターネットに接続する。 すかさずモネが俺のプラグと自分のを繋ぐ。何かやろうとしていたような気がするんだが、気づいたときには、乱交サイトのサーバに接続していた。また、快感の大波が俺たちを包む。 俺とモネはよだれを流しながら、えんえんとイキ続けた。 あぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ……… 立て続けに達しながら、不意に思い出す。 ああ、飯を食おうとしていたんだっけ…… もう20時間以上何も食ってないな…… ま、いいか…… |