| 死の理由 |
| 捕まった相手は食人族だった。 全てを捨てて日本を旅立ち、コレから冒険の人生を送ろうとしていた矢先にコレだ。いくら何でもこんな終わり方、あるだろうか? 監禁されている木製の檻には、俺のほかにも色んな人間が入れられている。白人も黒人も東洋人も、何でもござれだ。特に東洋人が多いみたいだ。 「出ろ、日本人」 あぁ、ついに来た。 俺は縛られたまま、族長だと言う男の前に引きずり出された。彼はなんでもヨーロッパのどこだかに留学の経験を持っていて、非常に理知的な男だ。が、それでも、食人族は食人族と言うことか。 いよいよ食われる。そう思ったら自然に疑問が湧いた。せめてコレだけは聞いておかなきゃ死にきれない。 「おまえらは、なぜ人を食うんだ?」 「食いたいからだ」 うわ、シンプル。コレじゃ論破しようがない。だが、無視されると思ったら答えたぞ。このまま話し続ければ、ヤツラも食いづらくなるんじゃないだろうか? 「なぜ食いたいんだ?」 めちゃくちゃなコト聞いてるなァと思いながらも、俺はそう質問する。とにかく会話を続けなくちゃ。 「おまえらには、決してわかるまい。我々は強い戦士と戦って倒したときや、愛するものを失ったとき、その身体を食べる。そうして、戦士の勇気や恋人の愛を自分の身体にとり入れて、その後も共に生きるのだ」 「なるほど、それこそ究極の理解や愛だ、と言いたいわけだな?だが、愛するものを切り刻んで食べてしまうと言うのは俺には理解し難いな」 俺はワザと挑発する。諍いになれば、少しは人間として見てもらえる可能性があるからだ。人は牛や豚とはケンカできない。 「おまえらの食人も、実は足りない動物性たんぱく質を補うため、なんて興醒めのオチがあるんじゃないのか?」 貴様らは、愛する者を埋めたり焼いたりするではないか。それは腐敗するのを見たくないからだろう?腐敗臭を避けたいからだろう?伝染病を防ぐためだろう?ならばそこにあるのは生き残った者達の都合だけではないのか?そのほうが我々には死者に対する冒涜に感じるぞ?」 「う……」 まずい、やり込められた。論旨を変えよう。 「しかし俺は立派な戦士ではないぞ?なぜ俺を食う?しかも、なぜ俺が最初なのだ?聞けば檻の中にいた白人は、もう何年も生かされているらしいじゃないか?」 「それはな、おまえが日本人だからだ。捕まえたと思うといつも中国人や韓国人で、なかなか日本人に会えなかったからな」 「なぜ?日本人に恨みでもあるのか?」 「いや。娘のためだ」 彼の後ろには、年のころ二十歳くらいの女がひとり、ニコニコしながら俺が料理されるのを待っている。 「理知的な人間だと思ったが、そうでもなかったようだな?おおかた「娘の病気は日本人を食わなくては治らない」てな話しを、まじない師かなんかに言われたんだろう?」 族長は首を横に振ると己の娘に視線を移し、呆れたような諦めたような顔で黙りこむ。 ついに合図が出され、俺は調理台の上に載せられた。大きな包丁が振り上げられる。 族長の娘の笑い声と共に、包丁が振り下ろされた。俺が人生最後に見た光景は、族長の苦々しげな顔だった。
「やっと日本人食べられるんだぁ。よかったぁ。今ハヤりだからやっぱ押さえとかないとね?さんきゅパパ。いまどき日本人食べたことないなんて言ったら友達に笑われちゃうもん!」 |