プレゼント
妖精が笑っている。すごく寂しそうに笑っている。

僕は心配になって、念を送った。

「どうしたの?なんだかとても寂しそうだよ?」

妖精はやっぱり寂しそうに微笑むと、いつものくすぐったくなるような念を送り返してくる。

「君にプレゼントを持ってきたよ。本当はもっと早く渡さなければいけないんだけど、君といるのが楽しくて、なかなか渡せなかったんだ」

妖精の様子に、なんだか不吉な予感を覚えた僕は、不安な気持ちで念を送った。

「どういうこと?」

妖精は静かに、とんでもないことを念にのせて送り返してくる。

「渡してしまうと、君と一緒にいられなくなってしまうから」

僕はパニックになってしまう。

どうして?どうして?ずっといっしょにいたいのに!妖精が大好きなのに!

僕は急いで妖精に哀願する。

「嫌だよ、そんなの。ずっといっしょにいてよ」

「そうもいかないんだ。いずれは渡さなくてはならないものだから。伸ばし伸ばしにしていたから、色んな人に心配をかけてしまった」

心配?父か?母か?そんなことは、妖精に会えなくなってしまう事に比べたらどうでもいい。

「構わないじゃないか。僕は君といられなくなってしまうのなら、両親だって要らないよ」

妖精はまた寂しそうに微笑む。

「ふふふ、そうも行かないさ。それに君はもう僕を必要としていないんだ。これからは君の力で人とかかわっていかなければいけないよ」

「そんなの……」

「ダメだよ。勇気を出して!プレゼントは君が色んな人と仲良くやっていくために、そして、君自身が成長してゆくために欠かせないものだから」

「いらないよ。君と一緒にいたいよ」

嫌がる僕に首を振ると、優しい目で見つめてくる。

「ぼくはもう、次へ行かなくちゃならないんだよ。ごめんね?その代わり、君へのプレゼントは、この世で一番綺麗なものだから。すごく繊細で、すごく力強い、君の最大の友であり、君の最強の武器にもなる。きっと気に入ってくれるよ」

「いやだよ!いやだよ!」

そうしているうちに、妖精の姿がだんだん薄くなってくる。

「ごめんね?行かなくちゃ。さあ、受け取って」

僕の中にキラキラした何かが入ってきた。それは身体の中に満ち溢れ、やがていっぱいになる。

どうすればいいのかと妖精に聞こうと思ったが、目を凝らしても、そこにはもう何もいない。

妖精は行ってしまったんだ。

僕は泣いた。泣いて泣いて泣き続ける。

それでも妖精は二度と帰ってこなかった。

泣き疲れて眠り、起きてはまた泣きを繰り返して幾日も泣きつづけた。やがて、涙も枯れて、僕は少し落ち着いてきた。

身体の中には、妖精のくれたプレゼントがいっぱいにあふれている。落ち着いて感じてみると、何とか使えそうな気がしてきた。

僕はそれを、いちばん近くにいた人に恐る恐る使ってみる。

 

 

「ママ……」

彼女の顔に、みるみる喜びが満ちあふれた。

「あ……し、喋った……喋ったっ!坊やが喋った!あなた!あなた!ねぇ、ちょっと来て!坊やが喋ったわ!今、ママって……」

母は飛び上がって喜ぶと、父を呼びに駆け出した。

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