音楽の力
「単純、単調、下品。君の演奏しているのは、音楽ではないよ」

「クラシックだけが音楽と言いたいわけか?」

「いいや、ロックなんぞ演奏(や)っている者が、ミュージシャンなどと言っているのを聞くと、こっちが恥ずかしくなるってだけさ」

「どんな音楽も、みな平等だと思うがね」

「ふふん、BBキングの受け売りじゃないか」

「だが、真実だ。音楽は平等であり、音楽こそ唯一の世界共通語だ。魂と魂で語り合うものだ」

「確かにそのとおりだ。しかし、その言葉が通用するのは、正しく「音楽」と呼ばれるべきものだけだよ。君のは雑音だ」

「ロックが理解できないなら、素直にそう言ったほうがいい。貶める言葉を吐けば吐くほど、あんた自身の薄っぺらさが浮き彫りになる」

「冗談じゃない、私は音楽家だ。雑音のことなど、理解したいとも思わないね。君たち雑音製造家こそ理解できないだろうが、クラシックこそ、真の芸術だ。我々は芸術家なんだ」

「ふん、まあ、確かに俺は芸術家じゃない。ロックンローラーさ。まあ、いい。あんたとは永遠に分かり合えないだろうからな。ただ、ひとつだけ言わせてもらうよ。おまえさんも決して芸術家じゃないと思うぜ?」

「私の演奏は、もちろんまだまだ未熟だ。しかし、君のような雑音製造家に、判ったようなことを言って欲しくないね。芸術の道は、遠く険しいのだ」

「くくく、芸術?芸術と言うものは、創作されるものじゃないのか?あんたらがやっているコトを、俺たちの言葉でなんていうか知ってるか?コピーって言うんだよ」

まさに、一触即発。

そこへ背後から声がかかる。

「二人とも、いい加減にしたら?」

つかみ掛からんばかりに怒りをぶつけ合っていた二人は、声のほうに振り向く。そこに立っていたのは、大人気アイドル歌手。

「なんでもいいじゃない。どうせ私より売れてないんだし」

三つ巴の争いが始まる。

「芸術は金じゃないんだよ!」

「おまえらは曲を作ってないじゃないか!」

「私が一番メジャーだもん」

三人の争いは、際限なく続くと思われた、その時。

ちゃらら〜らら、ちゃららららら〜♪

夜の街に響く、チャルメラのラッパの音。

三人、同時に顔を見合わせる。音楽家がぼそりとつぶやいた。

「おなかすいたな?」

残りの二人はうなずき、三人は表に飛び出した。

これも音楽の力……だと思うんだが。

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