| 金講座 |
| 「金というものは、大切なものだ」 「そうですかね。でも、俺には必要ありません。今の収入で自分の欲しいモノは、すべてまかなえますから」 「本当にそうかな?君がそんな風に言うのは、欲しい物を手に入れられないやっかみから来る、拗ねた考えではないだろうか?」 「私はあなたのように、他の人間を泣かせてまで、そう言うものを欲しいとは思わないのですよ」 「自分と、自分の周りの人間がよければ、それでいいではないか。他人が不幸だろうと幸福だろうと、それに対してどうにかできるなんて思うのは、思い上がりも甚だしい。それを傲慢、と言うのだよ」 「そこまで大きなことは思っていませんよ。それに、あなたを批評するつもりもありません。ただ、あなたが欲しがるものを、他人も欲しがると思ってもらっては困るってことです」 「君がアウトロ−を気取るのは、手に入らないからだよ。最初からあきらめてるんだ。金は力だ。いいかい?誤解するなよ?世の中に金では買えない物があることくらいは私も知っている。だが、金で幸せは買えなくても、金で不幸を追い払うことは出来るんだ」 「それは認めますよ。でも、金に重きをおかないって考えが間違ってるとは思えません」 「それは、金というものの本質を理解していないからだ。金というのは、道具なんだ。それを使って幸福になるためには、それなりの技術がいるんだよ。技術を持たずに、金で物を買うことしか思いつかないような不勉強な人間が、金=汚いものみたいに言うんだ。それは「重きをおかない」のではなく、盲目的に毛嫌いしているだけだ。なぜ、毛嫌いするか?自分に金がない、将来も入ってくる予定がない、と言う事実が気に食わないからだよ」 「金に重きをおいていないのではなく、自分にないことをやっかんでいる、ということですね?」 「そう言う人間ほど、何かの拍子に大金を得たときに、代わりに大切なものをたくさん失うのだよ。金の本質を理解して、金に振り回されず、道具として使うことの出来る者は、幸せを金で買うことさえ出来るんだ」 「モノを得ることが幸せではない、などと言う低次元な話ではなく、幸せとは何か?ということが見えていれば、そのために効果的に金を使うことが出来ると言いたいわけですか?」 「わかっているじゃないか。そこまでわかって、それでも金は大切じゃないなんて言うのかね?」 「いや、あなたの言うことを聞いて、少し考えが変わってきました。今までは、金を持ったものの話というものは結局「強者の理論」であって、持たざるものを一段下に見ているという感じを受けていましたが。たしかに、金というものは大切なものです」 「また、誤解して欲しくないんだが、私は確かに見下しているよ。しかし、それは金を持たないからではなく、金の本質を理解していない、その無知さを見下しているのだ。一日の三分の一以上を金を稼ぐために使いながら、金が大事じゃないだなんていう人間は、愚かと言うより他にないだろう?」 「たしかに。大事じゃないと言うのなら、金を稼ぐことなんてせずに、好きな事をやればいいんですものね?残飯をあさったって、金がなくても好きなことが出来るならそれで幸せなはずだし。金がなければ好きなことが出来ないと言うのなら、金がなければ生きていけないと言うのなら、それはとりもなおさず「金が大事」だと言うことです」 「そうだ。金がなければ好きなことが出来ないくせに、人生の少なくない時間を金を稼ぐために使っているくせに、「金なんて」などと見当違いにセリフを吐いているのは、「金」「幸せ」「自分」といったものが、見えていない証拠だ。漠然と幸せを妄想し、漠然と自分の将来を想像し、漠然と金のことを考えているだけで、それらを手にしたり、よりよくするための努力を一切放棄しているのだ」 「わかりました。あなたのおかげで目がさめました。金というものは、使う方法や管理の仕方や、限界をきちんとわかっていれば、この上なく便利な、人生を彩る道具だと言うことですね?そのためには、自分にとっての幸せがなんなのか、突き詰めれば「自分とは何か?」がわかっていなければならない、と」 「そうだ、ゆえに金というものは、持つ者を選ぶのだよ。汗水たらしたとか、悪事をしたとか、そう言うことは金の本質には一切かかわりがないんだ。過去にこだわっていては、未来は見えないだろう?」 「ええ、私もどうせなら過去の結果としての現在よりも、未来の礎としての現在を選びたいですね」 「ははは、どこかで聞いたセリフだな。しかし、まさしくそのとおりだ。どう言う風に得たかではなく、どう使うか?が大切なのだよ」 「ええ、わかります。あなたのおかげで目がさめました」 「それじゃ?」 「ええ、お願いします」 「じゃ、ここにサインしたまえ。一ヶ月複利で年利12000%になるけど、もちろんかまわないね?」 「あたりまえじゃないですか!どう手に入れるか?ではなく、どう使うか?ですよ!俺、なんだかいろんなことが見えてきたみたいです。よーし、やってやるぞ!」 「返済日は毎月26日だからね。それじゃ、私はこれで」 |