ベーコン男
暗いよ。寒いよ。ココから出してくれよ……

 

男の家に友達のベーコン男が訪ねてきた。名前の通りベーコンが大好きなヤツだ。久しぶりのことだったので、ふたりはそれぞれの近況報告をし合う。

男はこの間ビール工場に行って、試飲のビールをしこたま飲んで来た話をする。酒を飲まないベーコン男は、まるっきり興味がないのだろう。あくびをしながら聞いている。

しかし話が試飲に及ぶと、彼は急に瞳を輝かせ始めた。

「なあ、精肉工場とかでも、そう言うのやってるのかな?」

それこそ男にはまったく興味がないコトだったが、工場見学を行っているところなら似たようなものだろうと考え、男は曖昧にうなずく。

ベーコン男は、夢見るような顔で帰っていった。

それ以来、彼からの音信が途絶えた。

心配になった男は、ベーコン男が向かうと言っていた精肉工場を訪ねることにした。牛肉関係の問題で、消費者の信用を失っていたこのメーカーは随分と親切な対応をしてくれた。が、ベーコン男の行方はわからなかった。

それでも男はあきらめず、ベーコン男の行方を探しつづけていたが、なかなか見つからない。疲れた男は、久しぶりにビール工場へ行った。

そして、男もそのまま行方を絶つ。

 

暗いよ。寒いよ。ココから出してくれよ……

不意に上のほうで「プシュ」っと言う音がする。

ああ、やっと出られるんだ。

缶が傾く。

俺は思いっきり泡を立てながら、缶を飛び出した。

行き先は…ああ、グラスだ……よかった。直接口をつけて飲まれたんじゃ、また暗い中に逆戻りだからな……飲まれる前に、せめて周りの景色を見ておこう。

俺はグラスの載ったテーブルの上を眺めた。すると、盛られたサラダの中に混ざっている、カリカリに焼かれたベーコンと目が合った。

懐かしそうにこっちを見ている。

なんだ、おまえ、こんなところにいたのか……

ふふふ。

お互い、タダで飲み食いしようなんて、少々虫がよすぎたようだな……

 

試飲、試食は、ほどほどに。

食品の原材料名は、よく確かめてから買いましょう。

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