死後の帳尻
酔っ払って喧嘩して、刺された。どくどく血が流れて意識が遠のく。

で、気づいたらここにいた。ぼけっとつっ立ってる俺に近寄ってきたのは、どっから見ても間違いない悪魔だ。それかコスプレだ。

「ってことはココは地獄か?」

「そういうことです」

「へえ、じゃ俺はココで永遠に地獄の責め苦を味あわされるわけだ?」

「責められるのは間違いありませんが、永遠じゃありませんよ」

「どういうこと?」

「あなた方人間は、どうも大きく勘違いなさっているようなんですが、死後の世界は、特に思想や感情があるわけではありません。単純に規則どおりに組織運営される、システムなんですよ?」

「???」

「つまり、悪いことをしたから地獄、善い行いをしたものは天国、という振り分けが成されるわけじゃないんです」

「んじゃ、どういう基準なんだ?」

「基準というか……まず生き物は死ぬと地獄に送られます。そこで、生前に行った行為を帳消しにしてから、天国に送られるのです」

「へえ、みんな天国にいけるんだ?」

「う〜ん、天国とか地獄って言うから勘違いするんですね。そうじゃなくて、ココでマイナスを補充して、向こうで更にあなたが生きてきた分だけプラスを作る。それでようやく、あなたは生まれ変われるんですよ」

「イマイチよくわからないなぁ」

「そうですね……たとえば、あなたを殺した相手は、あなただけじゃなく何人も殺しているんで、死刑を宣告されてここに来る予定です。そして彼は、ここで同じことをされます。つまり、刺したぶん刺され、首をしめたぶん首を絞められる。もっとももう死んでいるんですから、死ぬことはありませんがね」

「あらら、自業自得とはいえ、気の毒なもんだ。あれ?するってえと、俺の場合はいったいどうなるんだ?」

「当然、あなたがしたのと同じだけ、酔っ払いにからまれるんですよ。行為自体の善悪は関係なく、生前したことをされるんです」

「うわ、たまらねえなぁ……んでも、まあしょうがねえか。それで?それがすんだら、天国に行くんだろう?向こうではなにをやらされるんだ?」

「こんどはさらにプラスするわけですから、あなたはお酒を造るんですよ。消費した分と更にプラスになる分をあわせて、今まで飲んだ量のちょうど二倍の量のお酒をね」

「マジ?つーことは、そこで作りながら味見なんかしたら、その分も作らなくちゃならないってこと?そりゃ天国とは言えないな」

「それはありません。死んでいる間はカウントされませんから、好きなだけ飲みながらゆっくりと作ってください。作るお酒の種類は自由ですよ。要は本質、つまりアルコールの量ですから」

「おぉ!まさに天国!」

「天国じゃありませんよ。我々も、あなた方が天使と呼ぶ向こうのスタッフも、別に悪意や善意はありませんからね。要は、エネルギー保存の法則みたいなものです。生前やっていたことを帳消しにして、更に上乗せする。単純に、それだけのことです」

「なるほどな、そういうもんか。あ、ところで俺を殺したあの男は、向こうではどうなるんだ?」

「彼は命を奪ったのですから当然、命を作らなくてはなりません。今まで殺した分の命をね」

「命を作る……え?まてよ?んじゃなにか?本質が問題ってことは、子供さえ作れれば、相手は誰でも何人でもいいってことか?」

「もちろん、そういうことになりますね」

 

やっぱり天国じゃねえか。

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