子育て・児童虐待・家族・子育て支援・DV(ドメステッィクバイオレンス)を考える
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★心理学・精神保健・発達障害に関する本の書評です

★★★
心病める人たちー開かれた精神医療へー
石川 信義

「精神病院」というと「鉄格子」「一生入ったら出られない」「恐ろしい」という漠然としたイメージがあった。しかし、私が知り合った精神患者の多くは精神的なバランスの悪い真面目な人である。確かに世間に通用しないようなバランスの悪さだけに、周囲にとって迷惑だったりするかもしれない。しかし「恐ろしい人」ではなかった。この本の著者の石川さんは精神科医の医者である。精神病院に勤め、そこでの劣悪な環境に辟易した石川さんは自分の信じる医療を実現しようと長野に病院を建てる。精神病院では当たり前の鉄格子をやめ、可能な限り開放施設・開放治療とし、自立支援のためのグループホームを手がけた先駆者である。なぜ開放施設にこだわったのかを含め、精神治療の現実が赤裸々に描かれている。この本を読んで三枚橋病院に行ってみたくなったけれどそんな思いにさせてくれる本である。

 

 
学習の心理学
今田 寛

放送大学試験の1月は大変!この学習心理学はとても難しかったので、かなり勉強を頑張った。でもその割には全然身につかない内容となった気がする。学習と は・・・を動物などの実験結果などによって検証して理論立てをしてている。しかし、その内容はいわゆる臨床心理学などとは程遠い内容で、「心理学ってこん ななの?」とうんざりしてしまった。たとえば、“○ある刺激が提示されてその反応が増えることを正の強化:勉強をしてほめられたので、一生懸命勉強をする ようになった ○反応が減れば正の罰:いらずらをして叱られたので、いたずらをしなくなった ○反応を除去する事で反応が増える事を負の強化:化粧をし て、しわが隠せたので、ますます化粧をするようになった ○反応が減れば負の罰:よそ見をしていて大事な点を見逃したので、よそ見をしなくなった”と書か れているが、だんだん何が何だかよくわからないということになってしまって、何度も本を読み直した。結局、本来心理学とは、統計学だったりするというので これが普通なのかもしれないが、私には向いていないとつくづく思ってしまった一冊。


 

★★
人格障害かもしれない
磯部 潮

「人格障害」や「ボーダーライン」などの言葉をどれだけ多くの人が知っているのだろうか? 私は今の仕事に就くまでまったく知らなかった。では「人格に障害があるってどういうことなの?」と考えてみると「私だって結構“変なやつ”って思われてい るし」とか「いろんな人とうまく付き合えない性格だし」などと不安になってくる。「人格障害」についてこの本を読んでわかったこと…それは人間関係が無け れば起きない「病」だということ。人間関係とくに親密な関係(親子・夫婦・男女)で、考えられないようなバランスの悪い付き合い方しかできない人たち。人 間関係に0(ゼロ)か100しかない。良好な時には「あなたしかいない」「あなただけが私の理解者」と信頼してくれるのに、一度意に沿わないことを言った り行動したりした途端「あなたとの関係は終わりだ」「見捨てられた」「死んでやる」などと極端に関係性を変える人たち。それが人格障害の人たちの特徴的な 行動パターンである。「尾崎豊」「太宰治」「三島由紀夫」などを例にしながら、ものすごい「影」と「光」のパワーを持っている人として書かれているのがこ の本の特徴である。著者が「人格障害」の人々に振り回されながらも、なお「魅力」と感じているそんな姿勢が伝わるような本だ。

 

★★
普通に生きられない人たち
磯部 潮

「人格障害」について書かれた一冊。このところこの系統の本を読み漁っているのは、職業柄「人格障害」と思われる人と接する機会が多く、そのことで対応に悩んでいることが多いからだ。人助けと思われるような相談の現場に携わる者にとって、相談に来た人に対して「受容・共感」よりも「枠を決めて接する」事がはるかに重要になったりする。困っている人ほど、誰かに頼りたい・誰かに助けてほしい・誰かに依存したい、と思っているものだ。そして支援者という者は困っているからこそ力になりたいと思っている。しかし、そういう思いが強いほど、頼り頼られることに心地よさを覚える。所詮、相手の人生は相手しか責任をもてないし、相手を救うのもその人自身だという事実をしっかり見据えなければいけないのに…。結局、支援者にとって「依存関係は相手の生きる力をますます奪うこと」と肝に銘じながら接する事が重要なのだと思う。しかし、人格障害と診断されるような人に多く接している著者でも、最初から「人格障害」だと判断できないと言う。相談者に対して「受容・共感」し「信頼関係」ができあがり、やがて相手が振り回し始めて「人格障害」だと確信にいたる経過を辿るらしい。著者の赤裸々な失敗体験や苦労体験が、同じようなことで悩んでいる私にとって勇気を生むような本である。

 

★★
誇大自己症候群
岡田 尊司

「誇大自己症候群」というのは著者がつけた、現代の大人子どもにはびこる病気とはいえないが、あきらかに社会を病的なものに変化させようとしている人たちのことをさす言葉である。その特徴は@根底にある自己否定とそれを補うべく肥大化した幼い万能感や誇大な願望、A他者に対する非共感的態度、罪悪感の乏しさ、責任転嫁と自己正当化、B現実感の乏しさや自己愛的な空想、解離的傾向、C性格の二面性と突発的に出現する激しい怒りや攻撃性、D安心感の乏しさ、傷つきやすさや傷つきへの囚われであるそうだ。今、社会があっと驚くような事件を起こす人にこの傾向が見受けられるように思う。神戸の酒鬼薔薇事件も池田小の事件でも、そして今話題の母親に毒を持った少女の話を新聞報道などで聞いても、罪悪感の乏しさなど共通の問題が浮かんでくる気がする。このところの話題になる犯罪は「成績の良い子どもによる単独犯」が目に付く。必ず「成績が良かった」という証言する人が多い犯人像。いまや「成績が良い」ことで安心している時代ではない。というより岡田さんの別の本では頭の良い子どもの方が犯罪の更正に失敗した時に難しい状態になっている、という事実である。昔が良かったとは思わないけれど、昔のように金がない・教育水準が低い子どもの犯罪の方が問題解決には単純だったという気がする。これからどんどん「誇大自己症候群」が幅を利かすようになってしまったら、どんな社会が来るのだろう?恐ろしい気がする。せめて、自分の誇大自己的な部分を自覚することから始めないといけないのだろう・・・。小心者で実直で目立たない性格が重宝がられる世の中だということだろうか?

 

★★★
自己愛型社会
岡田 尊司

「自己愛型社会とは、一言でいえば、自己愛の充足に最大限の価値をおく社会である。そこでもっとも大切にされるのは、自分である。〜中略〜表に表れる姿がどうであれ、その本質は、自分が主役であることに価値をおく社会である。おおっぴらな形であれ、ひそやかな形であれ、ヒーローやヒロインでありたいという願望が人々の心を支配する。」(文中抜粋)現代の日本社会は自己愛型社会の様相を呈している。なぜ自己愛型社会が出現したのかは歴史的必然があるから・・・。ローマ帝国にせよアメリカにせよオランダにせよ、歴史を学べば今の社会と類似した社会が出現し、やがて栄華を極めた社会も衰退していくことになる。その先にある未来とは?この本は予言書ではないが、予言ともとれる未来像が示されている。「自己愛型社会」が破綻し向かう未来は「強迫型社会」か「妄想型社会」と歴史は教えてくれる。しかし第三の道もあるのではないか?という岡田氏の提起は、悲壮感に満ちている気もする…。小泉首相の「わかりやすさ」に酔いしれ自民党圧勝を導いたこの社会の行く末を案じる私にとって、いろいろなことを考えさせられる本であった。

 

★★★
人格障害の時代
岡田 尊司

たまたま友人に薦められた本が先月読んだ「パーソナリティ障害」を書いた、同じ岡田さんの本だった。前回の本も面白かったけれど、この本は別の意味で面白いと言うのか、恐ろしい時代がくるという予感のする本だった。岡田さんは「人格障害者」が増えているという。なぜ人格障害が増えているのか、それは子育て・子育ち環境の問題であると言うのだ。最もな内容だけあって、私はかなりの不安を覚えてしまった。これは何とかしないと!と。よくよく考えてみると、自分もどうしてこんなに生き辛いのだろうか?と今までは悩んでいたけれど、これは私だけの問題でなく、近代社会の問題であり、子育て環境が年々悪くなる日本全体の問題であると思う。そんなことを考えているこの数日、「17歳の少年が小学校の先生(交流のなかった)を刺し殺した」という事件が起き、やはりそういう人間が増えているのだろうと実感した。人格障害は、一言でいうと自分に極端に自信のない生き方をしている人たちである。自分に自信のある人なんて、どれだけいるのだろうか?物が溢れ、何でも手に入る時代、人との関わりが煩わしくなりつつあるが、その反面、人間関係を避けて生きることはできない。だからこそ、人間関係につまづく人が増えているし、子どもの頃にコミュニケーションのとり方を学べずに大人になった人たちの一部は、たちまち「人格障害」の様相を呈するというのだ。子育ての現場にいるだけに、コミュニケーションスキルを学ぶ機会が減っていると感じるし、親自身が人との関わりを避けている人も多くなっている。本気で「子育て」をみんなが考えないととんでもない世の中になると思う。産めよ・増やせよとを不妊治療を応援する前に、生まれた子ども達が生き生きと生きていける社会を作れるような支援をしないといけないと改めて思う。

 

★★
子どもの精神障害
河合洋・山登敬之

子どもの精神障害に関する本は意外と少ない。今流行りの発達障害などに関する本はたくさん出ているけれど、やはり精神障害といえば主流は大人ということになるだろう。それだけ子どもの精神疾患は大人に比べて少ない、ということであるのなら良いのだけれど、問題はそう単純ではない。

この本は「子どもの精神障害」に焦点を当てて、現場の精神科医(とくに児童精神科医として著名な方たち)が執筆している本である。「子どもの精神障害」の中でも「小児自閉症」「摂食障害」「強迫性障害」「不登校」「非行」など多岐にわたるジャンルにわけ、基礎的な説明だけでなく、その内容において現在どういう問題が起きているのか、詳しく書かれている。

たとえば「小児自閉症」では歴史的変遷や現代での捉え方・問題点などがわかりやすく解説されていて、自閉症というものを理解するうえで大いに役立つ内容となっている。

ただし、そういう子どもへの「対応」に役立つ実用書ではないので、そのあたりは期待していたものと違っていた印象ではあるけれど、どの章も大変興味深く読むことができた。

 

★★
パーソナリティー障害
岡田  尊司

パーソナリティー障害とは、別名「人格障害」とも言われる。“ボーダーライン” と呼ばれる人格障害は、主にその中の「境界性人格障害」を指すようだけれど、人格障害には 色々とあるようだ。人格障害というのは、病気なのか病気でないのか分からないが、 とにかく、周りにいる人たちは迷惑な思いをする。迷惑どころか不幸を背負って 生きていかなければならないこともある。自分がどのタイプに近いか、自分のことを 知る意味でも面白いし、自分の周りにいる人で扱いの困っている人に対処する 方法を自分なりに整理するにも参考になる本である。 あの人は病気か?病気ではないか?ということは、私たちの話題になる。 どうしても自分の理解不能な相手や、思い通りにならない相手に対して、 「病気だ」と言いたくなる気持ちはよく分かるし、私も「病気」と片付けると 楽になる。しかし、「病気」といくら診断を下して、相手を分かった気になっても、 何の助けにもならない。むしろ「病気」とレッテルを貼ることで、差別しているに 他ならないという気もする。そういう人とどう上手く対応していくか、付き合うか、 最終的には相手を抹殺できない訳だし、相手から見るとこちらがまさに病気かもしれない のだから、うまく対処する方法を学んで、自分の対応を変えていくしかないということだろう。 なかなか自分を変えることも難しいけれど、他人を変えようとするよりは、マシだろう。

 

★★
なかなか決められない!
斉藤 勇

グズグズしている人は多い。実は自分もその一人だと思っていた。 たとえばレストランで注文をする時に、なかなか食べるものを決められない。 こちらを食べようか、でも少し高いので、こちらにしようか、 などグズグズと決められない。だから 「なかなか決められない!」という自分を分析しようと思って読んでみた。しかし、 この本の「決められない人」は、生きるうえでの選択ができない人という意味だった。 だから、私はこれにはあまり当てはまらない。なぜなら、色々と迷ったり落ち込んだり するわりには、「結局やってみなきゃ分からない!」というところがあって、 「迷った末に実行しない」という生き方は苦手なのだ。この本を読んでみると、 色々なグズがいると分かった。@抱え込み型グズ Aスリル型グズ Bキカン坊型グズ Cおくびょう型グズ Dお気楽型グズ E生まじめ型グズ しかし、いずれにせよ、 グズグズしている人は自己肯定感がとっても低いのだろう。私も自己肯定感が高くはないが、 かといって、自分は何もできない…とあきらめられるほど、自分の気持ちを捨てることは できない。だからと言って、グズグズしてしまう人を変える事は、その人にしかできない。 どう人間を分析しても、結局その人を変えるのは自分自身。私は私を変えることしかできない。 自分を変えたくない人が読んでも、誰かを変えたいと思って読んでも意味のない本だろう。

 

★★★
「多動性障害児」〜落ち着きのない子は病気か〜
榊原 洋一

子どもを叩いても良い?と質問されたら「良くない」と答える人は多いのではないだろうか。私もその中の一人だ。では、あなたは一度も叩いてませんよね? と聞かれて「もちろん」と答えるママがどのぐらいいるのか。 私は一度も子どもを叩いたことが無い。 しかし、叩いてないからといって、誉められるような子育てなんてしてていない。 子どもをベランダに追い出したり、大きな声で怒鳴りつけたり、 無理やり別の部屋に追い出そうとしたり、 叩く以外のあらゆる脅しを使って子どもを「しつけ」てきた。

この本で、叩いてしつける母親が「それに見合うように子どもを思いっきり可愛がる」 「しつけには、メリハリが大事なのだ」と主張する。 これを読んで「確かに私は叩かなかったけれど、 その分思いっきり可愛がるということもしてなかった」と思った。たたかない派の私が「たたくからこそ、思いっきり可愛がることもできる」 という母親の主張に妙に納得してしまった。 でも暴力反対の気持ちは変わらないけど…。

結局、親の接し方として“可愛がることが無くても叩かないのが一番”か、 “たたくかどうかより、叱ると可愛がるのバランス&メリハリが大事”か、どちらに軍配があがるのか分からない。

この本でわかったことはどこかに必ず正解があると思わされてきた人にとって、子育てには正解が無いことが「子育てのつらさ」なのかもしれないことだったのかも・・・。

 

★★
考えすぎる女たち
S.ノーマンH (吉川奈々子)

「考えすぎる女」という言葉にギクっとした私。やはり考えすぎが破滅を導く?ということだろうか。しかも「女」と限定されている理由は、女の方が考えすぎる人が多いからなのか。その通り・・・!考えすぎは体に良くないし、女に考えすぎが多いと著者は説く。なぜ「女」に考えすぎが多いのかは、社会の問題である。しかしこの本は、いかに考えすぎが物事の解決を遅らせるのか、その考えすぎを辞める方法について徹底して書かれている。確かに考えすぎは良くない。悪い考えが浮かぶと次々に悪い記憶が思い出されるというのは、心理学的にも実証されているようだし。これを読むと「考えすぎは止めよう」と思う。ただ、「女」が考えすぎに陥る社会的差別をなくそうとしない限り、個人の努力だけで何とかなるのにも限界がある。しかも、個人の問題に帰するというのは社会の責任を個人に押し付けて終わりにすることでもあると思う。そのあたりについての視点が今ひとつだ。考えすぎることで、にっちもさっちもいかなくなっている人にとっては具体的なアドバイスが載っていて、利用できると思う。人生なんて「なるようにしかならない」と思うしかないのだろう。ただ、考えすぎてしまう性格だからこそ、考えすぎに気づき前向きな思考になるよう努力した人は、何でも簡単に考えてしまう人よりもより高次の人生を歩んでいる面もあるかと思う。「考えすぎは良くない」だけでなく「たとえ考えすぎの性格でもそれに気がつき、それにとらわれずに解決に向けた有効な手立てを冷静に選択できれば、より良い人生に展開できる人たちの物語」だと思った。考えすぎの人の例文が多く、具体性がある分読みやすいだろう。

 

★☆★
セルフ・アサーション・トレーニング new
菅沼 憲治

子育てや家族関係に参考にもなる…人間関係に悩んでいる人にお勧めの本を紹介します。この本の副題は「疲れない人生を送るために」となっています。「人付き合いに疲れない人」なんていないでしょう? みなさんは「アサーション」という言葉を知っていますか?辞書では「自己主張」と訳されているようですが、この本によると「勝ち負けのない関係性」を表す名詞。分かりやすく言えば、相手を攻撃・非難することなく、自分の意見や感情を自分らしく表現することのようです。 私たちは、相手の意見に同意する時はそれほど悩んだりしません。でも、相手の考えに異論がある時や、他者の行動に怒り・悲しみを感じた時に、それをどう伝えるか難しいと思いませんか? この本はマンガやワークを使って「自分なりの方法」で「自己表現方法」が見出せるような構成になっています。 私は今まで「アサーション」を自分の意見をキチンと伝えることだと考えていましたが、これを読んでそれが勘違いだと知りました。「この場では意見を言わない」と選択することも立派な自己主張なのです。 結局、どんな表現でも不正解はなく“自分で選び”“それを責任を持って実行”でき“自分なりに納得”できれば良いのです。。 だからこの本を読むとなぜか勇気が出ます。おかげで早速、通路が通れない駐車をしていた人に声をかけることができました。今までなら腹が立っても黙っていたでしょう…。どんな小さなことでも、自己表現できるっていいですね!

 

★★
人格障害論の虚像 
高岡 健

児童精神科医として有名な著者が「人格障害」は病気か?を真正面から問い直す一冊。精神疾患の多くは薬を飲むとそれなりに効果がある。しかし「人格障害」もしくは「パーソナリティ障害」については薬が効かないと言われる。この本では人格障害という概念が発生したアメリカの実情や背景が説明されていたり、人格の危機がどういう風にして起きるのかということが説明されている。人格とは社会の中で培われるものである以上、人との関わり=コミュニケーションの中に何らかの問題が発生して状態である。そう考えると、どの人間にも「人格障害」に陥る可能性があるし、「人格障害」として一人の人間に問題を押し付けること自体、社会の問題であるという著者の姿勢が伝わってくる。精神科医は「人格障害」かどうか診断し、レッテルを貼るのではなく、コミュニケーションの上で何らかの問題を起こしている人間の状況を把握し、それを「人」として受け入れる作業をしていくことが大事だと伝えてくれる。私には内容的に難しい面もあったけれど。

 

★★★
性to生
竹下 小夜子

沖縄でさよクリニックを開いている精神科医が、沖縄タイムスで平成9年に掲載されたコラムなどをまとめて本。コラムなので簡単に読める割には書かれている内容はそれぞれ重い内容である。精神科医として臨床の現場から見える男と女の問題をとりあえげている。「妻の役割」「良妻賢母」「男らしさの価値」「男は黙って…」。この著者の講演会にも参加したことがあるが、つらいことに中でも希望を見出すことの意味を力強く伝えるパワーのある女性でとても尊敬している。この本でもいろいろな性的な差別を蒙る女性の話が出てくるが、それでも希望を失わないことへのメッセージいたるところにこめられている内容となっている。特に「先生たちへ」という内容が私は感動した。かつて学校で出会った恩師への思いと、その後その恩師と交わされた往復書簡が掲載されている。そこで伝えたかったのは、直接的何か言葉を交わしたり、先生という立場からのお説教や教授をしなくても、先生は多くのことを伝えることができ、時に生徒の人生を大きく変えることができるという事実である。人と人の関係の素晴らしさを伝える素敵な文章であった。

 

★★★
依存症
信田 さよ子

以前にも一度読んだことがあったが、 このところ自分がパソコンにはまりすぎてパソコン依存症になっているのでは? と不安になって再び読んでみた。 この本は、治療や回復に対するノウハウはほとんど書かれていない。 依存症がいかに近代に必然とされる病気なのか、ということが書かれている。 依存症は社会に要請されて起きていることであって、 個人の資質の問題でないのでは?という信田さんからの提起だと思う。 親子の問題も、夫婦の問題も密室の閉じられた世界で起こる。 みんなで関わりあって生きていかないと生きることができなかった世の中から、 ドアを閉じ部屋を閉じ、すべてを遮断しても生きていける世の中に変化した。 その狭い人間関係の中で、依存症という問題は起きているという。 物に囲まれ、豊かになったのに、ちっとも幸せでなさそうな日本。 人間の幸せとは一体何なのだろう?そんなことを考えさせられる本である。 依存症も共依存も他人事ではない。かく言う私も、 心に虚無感を抱えながら生きているのだ。 その虚無感を何で穴埋めするのか?いや穴埋めするということ自体、 すでに依存症になる一歩手前なのかもしれない。 物質的には生きることを保障されている世の中になったけれど、 精神的に豊かに生きることが難しい世の中になった。そのつけを払っていることに、 人々は早く気がつかなければいけないのかもしれない。

 

★★
乳幼児の心身発達と環境
原田正文・服部祥子

育児に関する調査で「大阪レポート」と呼ばれる調査を分析している本。 この調査は大阪府の1市で昭和55年生まれの子ども約2000人を対象に、 0歳〜6歳まで追跡調査した結果の報告である。「内容は具体的かつ細部におよぶもので、 現代の子ども達が日々どのような生活をして、親と子はどんなかかわりをもっているのか、 社会状況と家庭内力動の間にはどんな関係があるのか、等の実態を調査し、 その膨大なデータを分析、検討、考察を行い、精神医学的視野に立って、 現代の子どもの心身発達と環境という大きなテーマを論じようとするもの」(本文より)。 昭和55年ということで、今の子育て状況とかなり変わってしまった面もあるだろう。 しかし、今の親たちの苦しい子育て環境が、忍び寄っているという感じがする。 このレポートに登場する多くの母親は、現在と同じように子どもを持つ前に育児の体験が少ない。 つまり「育児不安」を高める要因の環境の中で育っているという点で同じなのだ。 全体的には目新しいような内容は無かったけれど、当時の調査としては画期的なものだったのだろう。 そして現在…、昭和55年の子ども達の育児環境の悪さがますます進行している。 根本的な解決は先回しになる一方で密室の親子の間で暴力行為が起きる、20年経っても 有効な予防策を立ててきていない事実を突きつけられた気がする。

 

★★
フィールド社会心理学
放送大学(大橋英寿)

たまたま友人に薦められた本が先月読んだ「パーソナリティ障害」を書いた、同じ岡田さんの本だった。前回の本も面白かったけれど、この本は別の意味で面白いと言うのか、恐ろしい時代がくるという予感のする本だった。岡田さんは「人格障害者」が増えているという。なぜ人格障害が増えているのか、それは子育て・子育ち環境の問題であると言うのだ。最もな内容だけあって、私はかなりの不安を覚えてしまった。これは何とかしないと!と。よくよく考えてみると、自分もどうしてこんなに生き辛いのだろうか?と今までは悩んでいたけれど、これは私だけの問題でなく、近代社会の問題であり、子育て環境が年々悪くなる日本全体の問題であると思う。そんなことを考えているこの数日、「17歳の少年が小学校の先生(交流のなかった)を刺し殺した」という事件が起き、やはりそういう人間が増えているのだろうと実感した。人格障害は、一言でいうと自分に極端に自信のない生き方をしている人たちである。自分に自信のある人なんて、どれだけいるのだろうか?物が溢れ、何でも手に入る時代、人との関わりが煩わしくなりつつあるが、その反面、人間関係を避けて生きることはできない。だからこそ、人間関係につまづく人が増えているし、子どもの頃にコミュニケーションのとり方を学べずに大人になった人たちの一部は、たちまち「人格障害」の様相を呈するというのだ。子育ての現場にいるだけに、コミュニケーションスキルを学ぶ機会が減っていると感じるし、親自身が人との関わりを避けている人も多くなっている。本気で「子育て」をみんなが考えないととんでもない世の中になると思う。産めよ・増やせよとを不妊治療を応援する前に、生まれた子ども達が生き生きと生きていける社会を作れるような支援をしないといけないと改めて思う。

 

★★
ユング心理学
放送大学(大場 登)

ユング心理学は、日本の心理学第一人者として知られる河合隼雄氏が 日本に持ち込んだ。精神分析と呼ばれるフロイトと同時代に生きたユングは、、 最初はフロイトとともに人間が見る「夢」に興味を持ち、「夢分析」から人間というものを 理解しようとした。フロイトは「性」を中心に人間を理解しようとしたようだけれど、 ユングは「神話」や「昔話」に秘められたイメージ=原型という概念で、理解しようと 試みた精神分析家であるようだ。「神話」は、それぞれの地域で作られた昔話であるにも 関わらず、なぜかどの神話にも共通するような話があるということに注目し、人間のイメージには 普遍的に持っている何らかの「型」があるとユングは考えた。現代「父性」「母性」などの 言葉で表されるように、「父親的なイメージ」「母親的なイメージ」を誰しも、時代や地域を越えて 持っているという。ユングの言うような原型が、人間誰しも共通するものとして、 存在するかどうかは、分からない。しかし、ユングの精神分析のほうが、人間の 不可思議さや奥深さに焦点を当てようとしているようで、フロイトよりも好きだ。 人間をどう理解するかという命題は、おそらくどの時代でも消えることは無い。 そう思うと、どの理論が正解・不正解かでなく、どれが自分には合うか合わないかの 問題であるのかも…と思うし、その理解の仕方は相手を評価するものでなく 、自分と相手との 付き合い方に指針を示してくれたらラッキー!程度のものだと思ったほうが 良いのかもしれない、と思う。

 

★★
現代の社会心理学
放送大学(亀田達也、他)

放送大学の教科書の中でも、一番の面白さだった。他の動物と異なり、人間だけが なぜ「意識(心)」「文化」「社会」を持つことになったのか。今まで 私はそんなことを考えたことが無かった。人間には意識と無意識があり…、 といった精神分析的な切り口で“心理学”を 考えていた私には、目からウロコのような本だった。社会心理学とは、人間だけ どうして社会が発達したのか? また社会がどのように人間に影響を与えているか、を考える学問のようで、 人間の心が発達した原因は自然現象から身を守るということだったのではないか? という。意識とは 社会でいかに適応するかということと大きな関係があり、無意識に行動していることが 実は社会に適応するための反射的な行動だったりもするということらしい。 差別意識がどうして出来上がるのか、サブリミナル現象とは?集団で「間違った答え」が 選択されたときに受ける個人の影響など、様々な社会的に生きる人間というものの 特性を分析している。たとえば「嫉妬」がなぜ起きるのか?に関してはこんな具合である。 ヒトの配偶システム(性と繁殖形態)は、子どもへの投資が大きい (子育て期間が長いという意味)ため、基本的に「一夫一婦制」であり、 女性にとって遺伝的な優劣さよりも、子育てにおけるリスクが低い男性を選ぶ傾向が 大きい。たとえば「所得能力」「将来の経済力」などが男性を選ぶポイントである、 というのは、世界各国共通している。ところが、男性は 女性の繁殖能力によって、自分の子どもの数が決まるため、若さや健康さなど肉体的な 面に魅力を感じる。なので、性的嫉妬に関しても、女性は男性の心変わりによって、 資源投資先を変更するリスクを負っているため、感情的な浮気に対して敏感であり、男性は、 ペア外交渉によって、別の男性の子どもができる可能性があるため、女性の肉体的な 浮気に対して敏感であると分析している。多岐にわたり様々な現象を 取り上げていて、どの章も眠くならなかった唯一の本!

 

★★★
境界性人格障害=BPD
ポール・メイソン(著),その他

最初はそんな人だと思えない。むしろ「人が良い」「親切」 「優しい」などという印象を持つ。だから、何かがオカシイ、と気がついたときには すっかり関係にはまってしまった後だ。そう、オカシイのは自分なのか、相手なのか 分からなくなっている。いや、むしろこの関係を元に 戻すために「自分が何とかすれば、何とかなるのではないか」 「自分が何とかしなければ、いけないのだ」という考えになっている。これは依存症の人との 共依存関係と同じ状態だ。コントロールのサイクルにはまり込んでいるのだ。そう、境界性 人格障害の人と関わる人というのは、コントロールのサイクルに巻き込まれている人なのだ。 なぜそうなったのか、などということは二の次である。そうなってしまう関係を分析し、 そういうことに巻き込もうとする人たちの思考パターンを解説し、そのパターンにはまらずに どう関係を続けるか、その対処方法についてが詳しく書かれている。自分のパートナーが、 自分の子どもが「境界性人格障害」かどうか、ということは問題ではない。医師に診断名を つけてもらっても、周りにいる人は何の助けにもならない。人格障害であろうと、 そうでなかろうと、 他人をコントロールしようとする人に、どう対応すれば良いのか、 診断してもらうことは重要でなく、対処方法を知ることが大切なのだ という信念に貫かれて書かれた本である。 論理が通じない人、見捨てられ不安が強い人、 優しいか攻撃的かのどちらかしかない人、などなど対応に困る人が身近にいる方は 一読あれ!

 

★★
考えないヒト
正高 信男

京都大学でサルを中心に研究している著者であるが、子育てや人間に関する著書も多い。この本では最近急速に普及したケイタイが与える大きな影響を示唆している。なぜ著者は題名にわざわざ「ヒト」という言葉を使ったのか?それは「人間」は社会化された生き物である反面、「ヒト」という動物としての本能から逃れられないという現実がある。その一方で、「ヒト」から「人」という存在に変化するためには、他者や社会という存在を無視できない。社会化した人間は科学を発達させた。「ヒト」という動物としての存在をを忘れてしまったかのように。しかし人間が開発したケイタイによって、実は「ヒト」にもどりつつあるのだというのがこの著者の仮説である。携帯。パソコンがもたらすネット社会は、人間同士のコミュニケーションのとり方自体を変えてしまった。フェイスtoフェイスよりもネットを通して人間関係が作られていく。その弊害が端的に現れるのが実は恋愛、とくに性交渉という私的空間でもあり、動物としての本能でもある場面なのだという。著者の仮説が正しいかどうかは別として、人間とは、社会とは、科学とは、恋愛とは、性交渉とは、コミュニケーションとは、言語とは・・・ケイタイが一つの道具でなく、多くの問題を含んでいることを伝えてくれるスゴイ本である。

 

★★
安心して絶望できる人生 
向谷地 生良・他

北海道の浦河という過疎地域に「べてるの家」はある。ここは精神疾患を患った人々が生活する場所である。向谷地さんはべてるの家のソーシャルワーカー(精神保健福祉士)。べてるに来る患者さんはみんな「人生に絶望した」人たちだ。ここでは「安心してますます絶望できる」場であり、そのため争いだけでなく笑いが耐えない。絶望の淵にあるものは「救い」であり、「助け合い」であることが生き生きと語られている。この本を読むと、こんな人たちの集まりなら病気になることも悪くないな〜と羨ましく思う。べてるの家のように自分の失敗をさらけ出しても、それでも見捨てられたり差別されたりしない世界があるのだろうか? 「人に優しい」ということの意味を考えさせらる本である。 当事者研究がまとまって載っていて、支援者としては当事者理解に参考になる。精神科医の書いた本とはまったく異なるが、困った人に対応するためにこの本は非常に参考になる一冊だ。

 

★★★
少年期の心 
山中 康裕

この本は児童心理を扱った本の中で、大変評価が高い一冊だと知っていたけれど、なかなか読む機会に恵まれず、やっと今回読むことができた。やはり大変面白く興味深い内容であった。この本を読むと「ユング心理学」は魔法の学問ではないか?と勘違いしたくなるほど…子どもの病的状態が治ってしまう。現場では「みるみるうちに直る」というものではなかっただろうが、この本を読んでいるとみるみるうちに直っていく様が描かれていて、「すごい」と感じる。子どもの力もすごいし、それを引き出す山中さんの力もすごい。思わずユング心理学、特に箱庭療法に飛びつきたくなるほどだ。子どもたちの中にあるさまざまな思いや問題が、明らかになるにつれていかに子どもたちも大人の事情に振り回されたりしているかがよくわかる。この本を読んでユング心理学の奥深さを知ると同時に「子ども」「家族」というものの奥深さを感じた

 

★★
子どもの精神科
山登 敬之

10年ほど前の流行りはLD、その後ADHDそして今は発達障害…。子どもの病気にも流行り廃りがあるのか?と思うが「ある」のだろう。この本は子どもに起きる精神的な病状を幼児期学童期と思春期の二部に分けて書いている。幼児期学童期は「自閉症」「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「学習障害」などの問題。「チック」「吃音」「おねしょ」「恐怖症」などの問題。思春期は「不登校・ひきこもり」「統合失調症」「対人恐怖症」「摂食障害(過食・拒食症などとも言われる)」などの問題をわかりやすく解説してくれている。この本の特徴は単なる病気の症状の紹介ではないところだ。なぜこういうことが問題とされるのかといった時代背景や歴史などが書かれている場合もある。また筆者自身が「治せなかった」正直に告白している内容もある。結局、精神科医といえど「人の心の動き」なんてわかるようでわからないものだ…、ということだろう。相手にどういうレッテルを貼るかが問題ではなく、今起きているトラブルにどううまく対処できるかがわかればそれで良いのだ…、と思う。肩に力の入らない内容であるが、いろいろな意味で参考になる本だと思う。子どもの様子が心配な人にお勧めの一冊だ。

 

★★
 高機能自閉症・アスペルガー症候群
「その子らしさ」を生かす子育て
吉田 友子

これは児童精神科医である著者が、軽度発達障害の「高機能自閉症・アスペルガー症候群」について、医学的情報だけでなく子育てのアドバイスも含めて詳しく書いた本です。特に乳幼児期から就学期にかけて起きる問題と対応に関して、具体的に説明されています。

子どもに障害がある、というとほっとする親がいる一方で、非常にショックを受ける親もいます。障害は「個性」なのか、私にはとても難しい問題と感じていました。でもこの本を読んで少し納得できた気がします。

こ の著者は「障害」か「個性」か?という二分法ではなく、関わりの中で…その時々の状況で…いずれかを選択できるしなやかさがあっても良いのではないか。生 きていく中で起きる様々な予測不能な体験を受け止める作業は、実はとても奥深い体験であり、「障害」もそんな奥深い体験として「個性」的に味わうことをお 勧めしてくれています。

そして医療という専門家であっても「障害」と診断された親子の思いに簡単に立ち入って はいけない。どう味わうかは当事者が時間をかけて考えればよいこと。できれば楽しみながら受け止めていけるよう、周りがそれぞれの立場からサポートすれば 良いのでは? というメッセージも書かれていて、私はそんな姿勢に共感を覚えました。

障害という問題が起きたとき親は「診断」「治療」という関わりだけでなく、今ある問題や状況に“慣れ親しむ”ことも大切という、子育て全般にも通じる親へのエールを感じた一冊でした。