自註

@夢のあとさき(「余韻」「雨を待つ」「ソナタ2」「夏の余白に」「煙草のけむり」)
 詩と批評の雑誌・月刊『ユリイカ』(青土社)の投稿欄「今月の作品」に掲載された、五編。
選者は、吉増剛造さん。
なかでも「雨を待つ」と「ソナタ2」には以下のような評をもらう。

「『雨を待つ』の数詞("三階""二三時間""二度目""一気""三回目")の隙間、そこを心が歩いて行く。」
「『ソナタ2』これはいい詩だ。あたらしい肌理、なんだろう。口語が"なぜだか・・・・"やわらかく"ぬりこ"まれていて、心がやがて静かになる。継ぎかた、織り方、あみ方が。そして無意識の呼吸が。」

また、以上五編には、すべて伊藤博明さんによる英訳もあり。

A蒼い痕跡(「無伴奏の夏」「秋のダンス」「散歩」「BOTH SIDES, NOW」)
 恩師である、哲学の故・刈田喜一郎先生の退職記念論集『生と思索』に掲載させていただいたスーベニールな四編。《青=生の哲学》
耽読していたのは、ニーチェランボールネ・シャール

B主題のないリチェルカーレ(「水の頁」「風夢」「あたまのいいクラヴィーア」「春の雪」「夏になる」)
C四つのフラグメント(「冬の幻像」「春の嵐」「ラスト・ソング」「エゴン・シーレの墓」)
 以上BCは、伊藤博明さんと始めた同人誌『マイア』第二号(前者)および第一号(後者)に発表したもの。リチェルカーレ(探究)は既成の形式には合わない未生の新しい音楽形式。フラグメント=断章は、ニーチェ、キェルケゴールカフカ、などが好む表現形式。

D失われた季節のための四つの小品
(「幻滅への誘い」「何処にもない夏」「最後から二番目の顔」「終わりからの物語」)
この、ソネット的行分け(十四行形式)の、四編が、最初に、まとまって出来たもの。いわば作品一。背景には、ライナー・マリア・リルケ道造

Eオファーリング・ワークス(捧げもの)
(「みかん」「期待、忘却」「ひとりの詩人へ」)
それぞれ、かけがえのない友人におくったもの。
 シニフィアン、シニフィエ、レフェランス、の絡み合いから、リペテシオン、アンタンシテ、サンギュラリテ、そして、エマニュエル・カントへの回帰。

Fラスト・バット・ワン
(「秋の気配」)
 深い喜びと感謝とともに、グレン・グールド、に捧ぐ。

Gアペンディックス(付録)
(「ヴァリアント――夏の無伴奏〜来るべき冬のためのメモランダム〜冬の部屋」)
 「無伴奏の夏」他、の異稿・草稿類。原生状態の詩考、思考、試行錯誤がここに。『蒼い痕跡』所収の「秋のダンス」は、この「夏の無伴奏」と「来るべき冬のためのメモランダム」とのあいだに書かれたもの。異稿なし。

 自註の余白に、2つの引用を。

《哲学を少しばかりかじると、人間の心は無神論に傾くが、哲学を深く究めると、再び宗教に戻る。》(フランシス・ベーコンあるいはウイリアム・シェイクスピア

一羽の鳥が・・・

一羽の鳥が電線の上で歌っている
大地の上のこの単純な生を。
私たちの地獄はそれを楽しむ。

それから風は苦痛に歪み始め
やがて星々がそれに気づく。

おお、これほどの深い宿命を
踏破しようとは、何と気違いじみた星たち!

UN OISEAU... René Char, Fureur et mystére
ルネ・シャール詩集『激情と神秘』所収より(直接訳出)