なんの変哲もない日々。
溢れる日常。
とめどなく流れる時間。
切り刻まれてもわからないかのごとく進むこの流動的な世界の中でおれは過ごし、そしてそんな流動的な中で起こった
出来事だからこそあんなことになってしまったのかもしれない。
世界はおれがいなくとも同じように流れ、おれがいなくとも同じようにキムタクはいい男だ。
おれがブ男なのはここでは関係ないだろうが!
と自分で自分に突っ込みを入れても流動的なこの世の中ではみんな無視するだけだ。
いや、無視されておれは幸せです。むしろこの場合は無視してください。
でもね、あの時は・・・
あの時くらいは・・・
おれは以前、飲食店で働いていました。俗に言うファミレスというやつです。そこでおれは厨房で食事を作っていました。ファミレスは通常夕飯時が
とても混み合い、厨房も忙しくて常にフルスピードで動いています。
そんなのは日常茶飯事ですからいつも通り仕事をこなしておりました。
お客さんがガーリックトーストを注文したようです。ガーリックトーストはそのファミレスでは丸いパンを包丁で縦に半分に切って
それにガーリックバターを塗ってお出しします。
包丁でサク♪
ああ、いつもよりもキレイに切れた。
なんとも美しい。美しすぎる。
白と赤の組み合わせがなんとも美しい絶好の色合いを生み出す。
Where is my finger??
(僕の指はどこ?ねえ、教えてタケシ!)
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!
心の中でこだまするおれの悲痛な叫び。
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!
たけしも叫んでました。
ええ、親指の上の方がちょん切れてました。
あ、でも指ありました!!そりゃもうステキに微妙な感じでした。
こんな感じで↓

こんな痛い目に遇ってるのに仕事場の人たちは未だ気付いてくれない・・・
こんなに・・・
こんなに痛がってるのに↓

おれはふと考えてみた。
そうだ、みんなが気付いてくれないのはきっとおれがあんまり痛そうにしてないからだ。今から痛そうにしてみよう。そしたら
みんなおれにかまってくれるはずだ。てきぱきと仕事するみんなが一斉におれの方を見て
大丈夫?
って声をかけてくれるはずだ。憧れのあの子もきっとおれの方を向き、乳を剥き出しにしてくれるはず。
よし今だ!!
(この間、2.02秒)
いってぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!!
みんなが一斉におれの方を振り向き大丈夫?どうしたの?なんて声をかけてくれる。
みんながおれに注目してる!ああ、おれって人気もの♪
店長「Mチカ大丈夫か?すぐ病院に行った方がいいな」
副店長「お前ほんと大丈夫か?今包帯持ってくるからな」
しかしおれは気付いてました・・・
彼らは心配したふりをしながらもめんどくさいことしやがってこの野郎といった感じでこの出来事を見ていたようです。そりゃ気付きますよ、
そんなあからさまにブッチョウ顔されたら(涙
店長「Mチカ、今店忙しいから一人で病院行けるか?今日お前車だろ?」(「めんどくさいんだブー」)
副店長「ほら包帯だ、とりあえず止血しろ。早く病院行った方がいい。」(「おれも忙しいんだから早く消えろだブー」)
1人で車で行けと?この怪我で?
これが・・・
これが指が半分取れてる人に言う言葉なのでしょうか?
ハゲてるのに・・・(ボソ
店長ハゲてるのに!!
似合わないのに・・・(ボソ
副店長めがね似合ってないのに!!
とおれ自身も卑屈じみた感情を胸に秘めつつも、たけしの容態が心配なので一刻も早く病院へ向かうことになった。店を出て車に入ろうとした直前のことであった。バイト仲間の○田君が通りかかった。
○田君「よう!Mチカ。今日はもう終わり?お疲れ〜」
彼は何も悪くない。
でもなんだか妙にむかつく。
車に乗り込んだおれは頭をかきじゃくりながら問ういた。
友情ってなんなんだろう?
ようやく病院に着いたおれは窓口で「指が取れちゃったんです」なんてまぬけな受け答えをして医者に見てもらうことになったのです。
お医者さんは思いの他冷静にこうおれに告げました。
お医者さん「麻酔打って縫わなきゃだめだね」
おれは男らしく答えてやりました。
おれ「麻酔が怖いんです。勘弁してください」
お医者さん「勘弁ならんね。このままでもいいのかい?」
おれ「じゃあ、ちょっと時間をください。深呼吸をする時間を・・・」
何故かたかが麻酔が怖いという理由で時間を与えられたおれは病院の外に出て親に電話をし始めた。
おれ「あのさ、バイトで指取れちゃった」
母「は?あんた何してんの?今どこいんの?」
おれ「病院にいる。これから麻酔打って縫うらしい」
母「だったらとっとと縫ってもらいなさいよ」
おれ「いや、麻酔がめっちゃ怖い」
母「馬鹿じゃないの?さっさと縫ってもらいなさい」
ガチャン、ツー、ツー・・・・
病院に再び入ったおれはふてくされた幼稚園児のような顔で言ってやった。
やってもらおうじゃね〜か
看護婦さんが微かに笑っている。
きっとそう言ったおれの姿はミジンコの様に小さく情けなかったに違いない。
チンカスを見つめるような看護婦さんたちの眼差しがおれにはまぶしかった。
看護婦さんはおれにとっていつだってまぶしい存在だったから。
ナース服最高♪
そして手術は終わった。
後から友達に聞いた話であるが店長と副店長がこんな話をしていたらしい。
店長「Mチカ怪我なんてしやがって、おかげであの日、厨房の人数が減って大変だったじゃね〜かよ」
副店長「ああいったのが一番困るんですよね」
店長「だいたい、いくら労災で取られたと思ってるんだよ、数十万だぜ。あいつの今までの仕事量よりも多いんじゃねえのか」
それからバイト先におれが姿を現すことはなかった。
今でもときたま指先が痛む。
人生の辛さを教えてくれた店長と副店長ありがとう。人間不信の本当の意味を教えてくれてありがとう。一生忘れないよ。一生な。
戻る
|