月刊東京 第244号(2004年2月15日)東京インプレッション掲載


 本誌の読者なら、「世界社会フォーラム(World Social Forum)」という名前を聞いたことがあるだろう。二〇〇一年一月にブラジル・ポルトアレグレで産声をあげ、毎年一月に世界の現状批判勢力、非戦平和勢力が集う新しいインターナショナルな運動だ。もっとも二〇世紀までの第一、第二、第三、第四インターといった系列とは出自も性格も異なり。「生命系民主主義」をめざした「多様な運動体によるひとつの運動」「多様なネットワークによるひとつのネットワーク」だから、「グローバル・ネットワーク」とよんだ方がいいだろう。

 もともと世界の政財官指導者が毎年一月にスイスのダボスで開催する新自由主義グローバル化推進の「世界経済フォーラム(World Economic Forum、ダボス会議)」に対抗して、「反グローバリゼーション」を掲げるNGO・NPO・社会運動が集ったものであったが、最初の年の九・一一同時テロ以降、非戦平和運動の中心になり、昨年二月一五日には、世界の千五百万人を、イラク反戦のグローバルな街頭行動に駆り立てた。今年は初めてブラジルを離れ、一月一六日から二〇日、インドのムンバイで開かれた。世界一三二か国から一二万五千人、日本からも三五〇人が参加した。

 ちょうど試験期で、私自身は行けなかったが、日本で関心を喚起しムンバイをもってもらおうと、世界社会フォーラムの全体像を紹介した初めての本、フィッシャー=ポニア『もうひとつの世界は可能だ』(日本経済評論社)を、若く活動的な大学院生に協力してもらって翻訳し、昨年クリスマスに刊行した。「もしも世界が百人の村だったら」の池田香代子さんは、早速NHKテレビ「週刊ブックレビュー」でとりあげてくれた。折から自衛隊のイラク派兵も始まったが、参加者たちからは連日感動の参加記が電子メールで送られてきて、インターネット上では、十分臨場感を持って、世界の民衆と連帯することができた。当初の「反グローバリゼーション」が、新自由主義と政策的に対決し代替案を示す「もうひとつの世界は可能だ」に転化してきたことも、ライブのウェブ報道から実感することができた。

 ところがこれに、日本のマスコミは全く無関心だった。写真やポスターだけでも十分イメージがわくし、会場では一三の言語で画期的なIT通訳システムも機能したというのに、共同通信配信の「反グローバル化の波拡大、印のフォーラムに一二万人」という短く不正確なニュースのみ。わずかに「しんぶん赤旗」が記者を送ったが、マスコミが追ったのは国会議員の学歴詐称スキャンダルばかり。イラク派兵が本格化し、改憲が焦点に浮上した今、マスコミを監視すると共に、私たち自身のネットワーク構築が急務である。