第一話〜誕生〜
「・・・血圧、脈拍、共に正常。このまま薬を投与し様子を見ます。」
白衣を着た医者らしき男達が部屋を出て行った。
「(・・・ここは・・・?)」
”彼”が目を覚ますと目の前にいくつもの光が見えた。しかし目が霞んではっきりとは見えなかった。
「(俺はここで一体何を・・・その前に俺は誰・・・ううっ!!)」
突然頭に激痛が走った。思い出そうとするとひどく頭が痛くなる。彼は全ての記憶を無くしていた。
自分の身分、名前、年齢、そして自分の姿さえ・・・
だんだん目が回復し、周りの景色がかすかだが見えるようになった。目の前にはいくつもの照明・・・
そして壁は鉄板で囲まれ、左側には大きな鏡があった。そして自分は冷たいベッドらしきものの上で手足を拘束されていた。
どうやら手術台のようだ・・・そこには自分一人しかいないようだった。換気扇の音だけが部屋に響いている。
「(俺はこんな所で何を・・・?いや、考えるのはよそう。嫌な予感がする。早くここから出よう。)」
しかし手足は鉄の”枷”で封じられている。だがこのような状態で決していい状況ではないと重い、彼は腕に力を入れた。
「くっ・・・ぐぅぅぅぅぅぁぁぁぁああ!!」
彼が腕に力を入れ上に上げると、枷を止めていたネジが飛び、枷が外れた。
「なんて馬鹿力なんだ・・・いや、”さっきの奴ら”がしっかりネジを止めていなかったんだろうな。」
彼は足の枷も外し、軽く準備運動をしながら部屋を一周した。部屋全体は暗く、床はまるで冷凍庫の中にでもいるかのように冷たかった。
そしてふと彼は壁の大きな鏡に目をやった。
「・・・これが・・・俺の姿・・・」
見た目はまだ10代半ばで背丈は約170くらい、体格は太ってもいない、痩せてもいないごく平均的な感じだった。
彼は部屋のドアを開けようとしたが、鍵がかかって開かなかった。彼はドアに拳を叩きつけた。
するとドアは勢い良く吹っ飛んだ。奥の部屋へ入ると、なにやら見慣れない機械がズラリと並んでいた。
「!?貴様・・・どうやってあの拘束ベッドを・・・!!」
椅子に座って機械をいじっていた白衣の男が驚いた様子で立ち上がり、目を丸くしてこちらを見ていた。
「・・・ここはどこだ・・・?言え。言わねぇとタダじゃおかねぇぞ・・・!」
男は白衣のポケットからナイフを取り出すと彼に構えた。
「・・・どうやら失敗作のようだな。まだ”力”のこともしらないようだし・・・小僧一人なら俺一人で充分だな。死ね!」
白衣の男はメスを構えながらと彼に突進していった。彼はかろうじて急所を免れたものの、肩に切り傷を負ってしまった。
「っ・・・なんのつもりか知らねぇが、俺はこんな所で死ぬわけにはいかない!!!」
彼は拳を握り締め、男に殴りかかった。するとみごとに男の頬に直撃し、男は吹っ飛び壁に叩きつけられた。
男は白目をむき、鼻や口から血を流しながら気絶していた。
「こ・・・殺してはいないみたいだな・・・こいつが気絶してる間に早くここを出よう。」
彼は足早に部屋を出た。
部屋を出ると中央の吹き抜けを囲むように廊下が続いていた。吹き抜けの下は深く、真っ暗で何も見えなかった。
彼は一つ一つ廊下のドアノブを回したがどれも鍵が掛かって開かなかった。残りは一つ・・・彼は神にも祈る思いで
そのドアノブを回した。すると廊下中に響き渡るくらいの重い音をたてながらドアが開いた。
目の前にはまた扉が立ちはだかっていた。奥の鉄の柵の向こうには階段があるのが見えるがどんなに力をいれてもギシギシいうだけで
開く気配はなかった。彼が大きくため息をつくと横の扉が開き、警備員風の男が出てきた。
「実験室から危険なラットが逃げ出したって聞いたが・・・ただのガキじゃねぇか。お前には悪いが、ちいとおねんねしてもらうぜ。」
警備員は腰から警防を取り出すと彼に向かって振り下ろした。彼はとっさに回避し、スキをついて警備員から警防を奪った。
「こんにゃろ・・・!てめえ何を・・・」
警備員が殴りかかろうとした瞬間、警備員の腹部を警防で突いた。警備員は床に倒れ、気絶した。
彼はあの警備員が出てきたドアを開け、中に入った。するとそこにはモニターがいくつもあり、もう一人の警備員がモニターを見ながら
ドーナツを頬張っていた。彼が部屋に入ってきたのに気づいた警備員は慌てた様子で椅子から飛び跳ねた。
「おわっ!!鈴木の奴どうしたんだ!?まさかやられたなんてこと・・・」
「そのま・さ・か。あのオッサンの警防奪って腹突いたら泡吹いて寝ちまったぜ。あんたもやられたい?」
「う・・・たっ、頼む!何でもするから助けてくれ!!何がほしいんだ?か、金か?」
「階段の柵を開けろ。それとここは一体どこなんだ?言え!」
「え!?わ、わかった。えぇと・・・ここは聖ナタリー病院の64階の研究フロアだよ。ちょっと待ってろ・・・今柵を開ける・・・」
すると扉の向こうから鍵の開く音が聞こえた。
「よし・・・ってお前!何やってんだ!!」
警備員はトランシーバーで何やら話していた。
「50階警備本部、応答願います!!俺らだけじゃ歯が立たない!至急スナイパーを・・・」
彼は足早に警備員に近寄り、腹を殴って気絶させた。
「・・・やばいな・・・厄介なことになっちまった。どうやら堂々とうろつけるような状況じゃないみたいだ。」
彼は暗い階段を下りた。その先に何があるとも知らずに・・・
つづく