Seasons


<2>


 家の中にはいってすでに別便で運び込んであった荷物をほどきながら、

 「ねえ?自分の荷物の整理ができたら、家のまわりを探検してきてもいいかしら?」

 忙しく手をうごかしながら、ルナがもうその先の事を考えている。

 「いいわよ?でも部屋に運び入れてそこらに置いただけで『終わり』にしちゃあ反則よ?」

 「プッ!さすが!ママン・フラン!よくわかっているね。」

 「もう!ママン・フランたら!わかってますよ〜」

 楽し気な会話に笑い声が漏れた。


 それから1時間後、なんとか自分の身の回りのものを自分の部屋に納めたルナは元気よく家を飛び出した。

 「あっルナっ!一人でいっちゃあ、あぶないぞっ!・・・全くしょうがないなあ・・・ソレイユ?君は終わったかい?」

 「う〜ん、パパ・ジョー・・・もうちょっと・・・あとこの本を本棚に納めればおわるんだけど・・・」

 「そうか・・・終わったらルナを追い掛けてくれるかい?大丈夫だとは思うけど・・・やっぱり一人は心配だからね。」

 ジョーが両手に一杯荷物を抱えて部屋から部屋へと移動しながらソレイユに頼み込んだ。

 「うん、パパ・ジョーわかっているって!あと5分かな?」


 ルナの後を追って飛び出したソレイユは、家からそう離れていない所でルナと合流できた。

 周りは自然が豊かな森を川とに恵まれ、遊び場には事欠きそうにもない。

 大きな牧場もあって、羊や馬が群れていた。

 起伏に富んだ地形は、飽きることなく走り回れそうだった。

 何より、森の中には野生の動物もそこかしこに隠れている。

 双子はこの土地を一目見た時から、わくわくしていたのだった。


 そんな期待に胸ふくらます状況だったのに、二人は森の中を探検中、その『最悪な出合い』に遭遇する事になる。


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 「ねえ〜あそこって果樹園なのかしら?ほら、あれなんの実かしらね?」

 「そうだね・・・でもあそこからここにかけて垣根とか柵とかあった?」

 「ううん?気がつかなかったわ・・・気が付かないで入っちゃいそうね。勝手に入ったら怒られるかしら?」

 「う〜ん、柵はなかったんだし、どこから境界線なのかこれじゃあわからないからな・・・まあ、あそこのきちんと整地されていそうな所には、入らないように気をつけよう。」

 「それにしても・・・ねえ?ここっておもしろい地形ね。くぼ地があって丘みたいになっていて・・・それにここってなんか抜け道みたいにずーっと先まで続いているんじゃない?なんだかワクワクするわ。」

 「そうだね・・・どこにつながっているかちょっと調べてみようか?」


 二人がきょろきょろとあたりをみながら散歩していると、突然足下になにか引っ掛かる違和感を感じる。

 ソレイユがそれに足を取られて大きくよろけた。

 「うわっ!なんだ?今のは?」

 「どうしたの?」

 「何かに引っ掛かって・・・こけそうになったんだ。あっ!これだよ!えっこれって・・・」

 「何?なにかあったの?」

 そう言ったルナもソレイユの方に向かって足を踏み出した時、足下が急にふわっとおぼつかない感覚が走った。

 あわてて足を引きあげようとしたが、一瞬遅く、体重の係った身体がその足からずずっと沈んでいく。

 「きゃあ〜〜!」

 ルナが叫び声とともにバランスをくずして横に倒れるのと体重をかけた足がひざの上あたりまで沈み込むのがほぼ同時だった。


 「何これっ?・・・落とし穴?」


 「みたいだね?こっちなんて。みてみろよ。これじゃあ足が引っ掛かるはずだよ。」

 「あらっ?それって・・・下草を結んで・・・ずいぶんと原始的なトラップね?」

 「・・・原始的・・・ね?たしかにそうだね。御丁寧にいったい何個作ってあるんだろう・・・。

  しかも見えないようにちゃんと周りの草ででカモフラージュしてあるし・・・」

 「結構、手が込んでるわね。」

 「うん。・・・でもこれってどう見ても・・・子供の遊び?だよね?・・・少なくとも・・・本物のトラップじゃない。」

 「当たり前じゃない!や〜ねソレイユったら、そんなに怖い顔しちゃって!」


 『本物』の危険にさらされることも多い二人だったので、つい思考がそちら側へ飛んでしまっていた。

 特にソレイユには、『自分がルナを護るんだ』という自覚が芽生えてきていたので、よけいに神経質になったのだろう。

 ルナに指摘されてソレイユは自分に苦笑する。


 その時だった。

 どこからともなく突然に声が降ってくる。

 「おいっ!いたぞっ!こっちだっ!」

 「「えっ?」」

 いきなり八方からわらわらと現れた人陰に、驚く暇もなく双子がいた窪地のまわりには大勢の子供達が取り囲んでいたのである。


 「ふたりだけか?」

 「他のやつはどうした?」

 「このさいだ!ふたりでもいいさ!やれっ!」


 双子は、なにやら自分達は囲まれた上、標的になっているらしいと悟る。

 「やれって?ええ〜っなんだ〜〜???」

 わけの分からない内に、何人かがふたりのすぐそばまで土手を駆け下りて来ると、彼等の目の前で身構えた。

 咄嗟にソレイユはルナをかばうように自分の背後に背負う。

 ルナも自分の足を、落ちた穴から引き抜くと、ソレイユと背中あわせになり身構え、相手と対峙する。

 二人をかこんだ数人・・・年の頃は自分達と同じくらいだろうか?


 「えっ?こども?」


 落ち着いて当たりを見渡すと、男の子ばかり10数人程が、この場所と窪地の上から二人を取り囲んでいる。


 「なんだ?こいつらみたことないな?」

 「どうせ街のやつらだろっ?」

 「果樹泥棒にはまちがいないぜっ!」

 彼等の会話から、どうやら双子には果樹泥棒のぬれぎぬが着せられているようである事がわかった。

 「???なんだってっ?」

 「泥棒ですって?冗談じゃないわ!」

 お互い一歩も引かぬままにらみ合いが続く。


 「なにをいまさらっ!問答無用だ!やっちまえっ!」

 丘の上のほうからリーダーらしき人物が指示を出している。

 そのかけ声を合図に、近くによってきていた数人が、ふたりに飛びかかってくる。

 相手は皆、素手のようなので、取りあえず応戦する双子。

 「ちょっと!何かの間違いだぞっ!僕達は泥棒なんてしてないっ!」

 飛びかかってくるやつらを器用にかわしながら、ソレイユが反論してみるが、その言葉は相手には何の決め手にはなっていないようだった。

 子供相手にならば何の心配もない程、双子はいざというときの自分の身の処し方くらいは持ち合わせていたので、遮二無二飛びかかってくるやつらを全く敵にはしていなかった。


 だが、如何せん、足場が悪すぎた。

 先ほどのトラップに足を取られて、不覚にも後ろに転げてしまったルナに、ふたりがかりで押さえ付けようふたりがかりで飛びかかられてしまった。


  「きゃあああ〜〜〜!!!」


 先程とは比べ物にならない程のルナの大きな悲鳴があたりに響いた。


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