Seasons


それは、気持ちの良い夏の風が吹いている頃に始まった

秋が深まる頃には穏やかな空気が流れていた

冬の木枯らしと共にそれは運ばれ、春の日差しとともにいくつが溶けて流れていった

そして、春がやってくる


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<1> はじまり


 「お〜い、ソレイユ!まだか〜?おいていくぞ〜?」

 「おはよう!ルナ〜早くいきましょう?」


 「あ〜たいへん!もうきちゃった〜!は〜い♪待って〜いまいくわ〜」

 「待てよ〜いまいくから!」


 早朝、澄み切った空気の中に子供たちの元気のよい声が響き渡る。

 「いってきまあ〜す♪ママン・フラン!」

 「いってきまあ〜す!パパ・ジョーが起きてきたら、おはよう、あたしのかわりに言っておいてね!」

 ソレイユとルナが学校のリュックとランチボックスをつかんで勢いよく飛び出していった。

 「お待たせ〜おはよう〜シャロン。」

 「おはようルナ!見てみて!あたしマフラーこんなに編めたのよ!」

 「わあ〜はやいのね!あたしなんか昨日やっとママン・フランから鎖あみを教えてもらったばかりよ。冬の間にできあがるかしら・・・」

 ルナが迎えに来た女の子と仲良くおしゃべりしながら飛ぶように学校へ向けてかけていった。

 「遅いぞ〜ソレイユ!」

 「いつもの時間じゃないか?遅くなんかないよ?」

 「何言ってるんだよ?昨日、学校に行く前に黒スグリの実のなっているところを教えろっていったのはお前だろっ!」

 「あっそうだった・・・ごめんごめん!・・・で、どこっ?♪」

 「ったくもう・・・こいよ!まだ始業のチャイムまでには間に合うな?いくぞっ!」

 「あっ待って〜」

 ソレイユが男の子とちょっと学校とは違う方向に走り出していってしまった。

 コテージの玄関から二人を見送っていたフランソワーズの耳には双方の会話は筒抜けである。

 『ルナったらあの女の子の影響だったのね?急に編み物を教えてだなんていいだして。挫折しなければいいのだけれど・・・。ソレイユったらどこに寄り道する気かしら?遅刻しなければいいけど・・・』

 いってらっしゃいと二人の後ろ姿に手をふりながら見送る。


 そんなフランソワーズの背後には、今の双子の騒々しさでやっと目を覚ましたジョーが大あくびをしながら起き出してきていた。

 「ふぁああ〜おはよう、フランソワーズ♪二人とももう学校にいっちゃったの?早くない?」

 寝ぼけ眼をこすりながら、フランソワーズにおはようのキスをする。

 しながら、その目は彼女の肩ごしから玄関の外を見遣るが、双子はとうに遠くにかけていってしまっていた。

 「何言っているの?ジョーったら!お寝坊したくせに!ルナがあなたに自分のかわりにおはようを言っておいてっていわれたわ。もう!ちゃんと起きてね?」

 少し呆れたようにジョーへと振り向きながら話し掛けるフランソワーズも、ジョーの唇に優しいおはようのキスをする。

 ジョーもちょっとバツの悪そうな表情を浮かべてフランソワーズの小さな唇にもう1度先ほどよりもほんの少し長いキスをした。

 季節は秋が深まり、あと2週間もすれば雪が降り出してもおかしくない季節だ。


 「今日も友達が迎えにきてくれていたんだろ?ずいぶんと仲がいいね?」

 「そうね?あんな最悪な出合いだったのに・・・フフフッ・・・おかしなものね。」

 「折角馴染めたんだ・・・もう少しいられるといいね、ここに。」

 「・・・そうね。今の所、大丈夫・・・あの子たちも『普通』の生活ができているわ。なによりね・・・」


    彼等はサイボーグ戦士。

 いつどんな状況で戦いが始まるとも知れない生活は、双子がうまれてからもそれ以前からの日々となんら変わりはしなかった。

 大きな移動が必要な戦いの時は、常に双子をドルフィン号に乗せて護ってきたし、ミッションで必要ならば住居も変えてきた。

 だから、今現在、比較的落ち着いて家族としてここに住まい、学校に毎日かよい、友達と毎日日没まで遊び回っている・・・そんな子供らしい日常は貴重な時間でもあったのだ。

 日本のギルモア研究所が生活の拠点ではあったが、双子がうまれてからの時間の1/3はそこ以外での生活だったと言えただろう。


 「やあ、おはよう。子供たちはもう学校にいったのかね?」

 「おはようございます、博士。ええ、もうとっくにいきましたわ。博士もずいぶん夜更かしなさったんですね?」

 ギルモア博士もまだ眠そうに目を擦りながら起きてきていた。

 「ああ・・・ついな・・・昨日送られてきた学会の報告書を読み切りたくてな・・・」

 「何か必要なものはありますか?僕は今日は街まで出ますけど・・・」

 「そうじゃなあ・・・ちょっと試してみたいことがるんじゃが・・・実験装置がたらんなあ・・・」

 「・・・手が必要ならジェロニモ呼びますか?運びこんでもらいますけど?それともやっぱり地下の研究室、拡張しますか?」

 「いや・・・そのうち必要になればドルフィン号にいくわい。ここではムリじゃて・・・」

 「・・・わかりました。その時は、また言って下さい。」

 「ああ・・・ところで、あの子たちはこの土地にずいぶんと溶け込んでいるようじゃな?」

 「ええ、そうなんですよ。今もジョーと出合いは最悪だったのにって話していたんです。」

 「フォッホッホッホッ、そうじゃったのお〜」

 フランソワーズが用意した朝食をゆったりととりながら、3人はこの家に移ってきた時の双子に降り掛かった災難とそれから始まった子供達との交流を思い出していた。


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 それは3ヶ月前の事。

 あるミッションのためにこのコテージに居を構えることとなったジョー達。

 その初日に双子の身に降りかかったアクシデント。

 それはBGとの戦いなどと比べれば些細なこと、いや子供らしいものだった。


 新居の前に大型のファミリーバンが1台やってきて止まった。

 「うわ〜すてき!煙突があるってことは暖炉があるのね?」

 「へ〜ここから村が一望できるじゃん?なかなかいいところだね?」

 ルナとソレイユは車を降りるなり、大声で彼等の目の前にある新しい家とその周りをみて、歓声をあげた。


 ここは、某国のとある静かであまり大きくはない村。

 すぐ隣の街にはいくつかの大きな工場や会社があり、ここはそのベットタウンのひとつだった。

 村で一番目立っているのが、この村には不釣り合いなくらい大きな規模と最新の技術を誇る病院。

  これがこの村ののどかな雰囲気とはちょっとチグハグな感じで村の眺望の一角にデンと座っている。

 この新しい家はまさにそうした村の風景が一望できる高台にある1件屋だった。

 双子はジョーとフランソワーズ、イワンそれからギルモア博士とここで『普通』に生活する為に今日移動してきたのである。

 そう、ここでの『家族構成』はジョーとフランソワーズ夫妻とその子供の双子と赤ちゃんのイワン、それにギルモア博士という『6人家族』となっている。

 車からおりるとそれぞれが家や周囲を見渡す。

 「うん、なかなか住みごごちはよさそうだろう?どうだい?」

 「ねえ?あそこに見えるのが学校かしら?」

 「ああ?そうだね。君たちが通う学校だよ。・・・明日にでも手続きにいかなくちゃね。」

 「あまり大きくないわね?・・・友達どのくらいできるかしら?」

 「・・・言葉のこと気にしているの?」

 「ううん?そんなことないわ。ちゃんとアルベルトおじさまが特訓してくれたから、なんとか大丈夫よ。」

 「あらっ、それは頼もしいわ。」

 「ねえ、アルベルトおじさんはいつくるの?学校に行き出したら宿題とかみてもらいたいな・・・会話は大丈夫だろうけどね・・・僕はやっぱり不安だよ。」

 楽観的に考えているルナとは対象に、ソレイユは現実的なようである。

 「そうね・・・相談してみたいわね、ジョー?」

 「そうだね、あっちがどれぐらい手がいるかにもよるけど・・・ジェットもグレートもいるしね・・・連絡をとってみようね」

 ちょっと不安げなソレイユの肩を優しく抱くとソレイユがほっとした笑みをかえした。

 「やはり、標高は高いだけあって過ごしやすそうじゃのう・・・ちと秋がはやそうじゃな?」

 ギルモア博士がサワサワと音をたてる周りの木々をみわたしながら、呟いた。

 「そうですね、博士。でも空気がきれいで気持ちがいいわ。」

 「博士・・・秋が深まる前には・・・終わらせますよ。」

 「ホホホッ、そうじゃったな・・・。どれ、家の中を拝見しようかのう?

 和やかな家族の雰囲気のなかにひとすじの緊張感が存在していた。


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