最初にメールを受け取ったのは、いつものようにパソコンの前で仕事をしていたピュンマだった。
「ん?ルナからメール?ああ!!これだな、この前ジェットがやけに楽しみにしていたものって。」
仕事の手を止めて、ピュンマは早速、送られてきたものを確かめる。なるべく大きく引き延ばしてプリントアウトしてから、みんなに声をかけた。
『待ってました』とばかりに1番にとんできたのはやはりジェットだった。
それから、他のメンバー達もわらわらと研究室に大集合。パソコンの前にむらがる。
「おいっ!もっと大きな画面に写せないのか?」
パソコンの画面を覗き込んでいたジェットが大声をあげる。
「もともとあまり大きなものではないらしいんだ。無闇に引き延ばしても画像があらくなるだけで、アルベルトは捜せないよ。これぐらいが限度だな。このモニターに出せればよかったのだけどね。ちょっと無理かな?」
ピュンマが研究室の一番大きなモニター画面を指差しながら丁寧に説明する。これには、ジェットも諦めるしかない。
「はい、これ・・・みんなで探してみて。僕は画面でギリギリまでのばして解析してみるから。」
ピュンマは3枚のプリントアウトしたセピア色の写真をみんなの前に差し出した。
「これか〜、ずいぶんと大勢で写っているなあ〜探すの大変だぜ。」
「ねえ、アルベルトはみたの?どう?記憶は有って?」
口をへの字に引き結んだままのアルベルトに向かってフランソワーズが声をかけた。彼は3枚の写真にざっと目を通すが、ふっと口の端しに余裕をみせると、
「俺のコメントは敢えてなしにしておこう。」
「え〜っそれってお前はいないってことかよ?」
すかさず、ジェットの反論。
「そうじゃない。俺にもわからんってことだ。こう大勢いるんじゃあな。それに似たようなやつらばかりだし、結構小さいな。まあ、がんばってみてくれ。」
「よし!やってやろうじゃないか!」
電気スタンドの明かりの下でルーペ片手にふたりで1枚の写真をくまなく探しはじめる。
同じ制服を着た、同じような少年が約100人はいるだろうか。見ているうちに自分が探している人物の顔(当然アルベルト)がどんな顔だったのか判らなくなってくる。
「なんだか目がちかちかしてきたアル。」
「俺、頭痛くなって来た。」
「ジョ−?時々は瞬きしないと・・・」
「あッ忘れてた。どうりで、目が乾くと思ったよ。」
などと、さながら絵本の『ウォーリーを探せ!〜セピア色アルベルト・バージョン』をメンバー総動員でやっている図・・・である。
アルベルト本人も一応参加しているが、その表情からは見つかったのかどうか伺うことはできない。
「ねえ?これ!似てないか?」
「え〜っこんなに目が大きくないんじゃない?」
「そうだよ、もっと目つき悪いはず・・・」
「これは?」
「口元が笑っているから違いそうだね?」
「こっちは?」
「アルベルト?お前さん、長髪だったことあるか?」
「・・・ない!」
「だったら、こいつも違うな。目つきはいい線いってそうなんだが・・・」
「おい?こいつはどうだ?」
「う〜ん、不機嫌そうな顔はそれっぽいけど、なんか違わないか?」
「・・・お前達!人の顔をなんだと思っているんだ?」
アルベルトが、自分の事を好き放題言われている事に反論するが、誰も相手にしていない。
ひたすら、写真に集中しているメンバー達。見事に無視されたアルベルトは、メンバーの鮮やかな『無視』に逆に恐れ入っておとなしく探す作業に戻る始末・・・
そんな集中力の限界に挑戦しているような空気の中、
「う〜ん、こっちもこれが限界だなあ〜この写真にはいないみたいだ。」
ピュンマが自分が解析していた1枚に見切りをつけた。
「ねえ?ピュンマがみているそれは、ここにあるのとは別のものなの?」
「いや?その中の1枚だよ。ひとりじゃあ、見落とすかもしれないだろ?そっちも交換して探してみてよ。」
1枚1枚を全員で確認するつもりらしい。
「・・・御丁寧なことで・・・」
アルベルトが呆れたように、肩を竦めてみせた。
さらに5分程経過して
「だめだ〜いねえ!なんか悔しいなあ!」
「そうだね。この3枚にはいないようだね。」
なげやりで悔しそうなジェットに比べて、ピュンマが涼しい声でさらりと答えると、新たにパソコンを操作し始めた。しばらくして、また数枚をプリントしてみんなの前に差し出してきた。
「次はこれか?」
ジェットは素直に受け取っている。
「おい!いったいルナのやつは何枚画像を送って来ているんだ?」
新たに出てきた写真に驚きを隠せないアルベルトの脳裏に一抹の不安が過る。
「今回はとりあえず、10枚だって。」
やはり、さらりと答えるピュンマ。
「・・・10枚もか?それに・・・とりあえずってどういう事だ?」
「メールがきていたよ。制服といっしょに展示されていたのは、今回送られてきたこの10枚なんだけど、あの後に過去の学校のアルバムを閲覧できる事がわかったんだって。だから、ここにいなかったら、そこからも年代しぼって送ってくれるそうだよ。」
「ルナったらあなたが見つかるまで続けるつもりなんじゃないの?」
「あの子ならやるかもよ?」
「早いとこ見つからないと延々と続くのかなあ〜?」
フランソワーズ以下、アルベルト以外のメンバーは呑気にルナの事を呆れている。ルナが延々と送ってくるかもしれない写真にとことん、付き合うつもりなのであろうか???
アルベルトの背筋がゾクッと寒くなる。
「・・・とりあえず、今日のぶんは探すだろ?」
「ルナと根比べか?」
「まあ、それだけあればどこかにいそうだね。」
「ほいよ、アルベルトあんさんも探さないと終わらないアルよ?」
メンバーたちは・・・とりあえず今日は・・・まだ根気よくウォーリーを・・・もといアルベルトを探そうとしている。みなさんひたすら、黙々と・・・地味な作業にあのジェットさえも珍しく意欲的なのは・・・
『そんなに俺の制服が見たいのか?コイツラは?』
感心するやら呆れるやらの複雑な気持ちでメンバーを見やっていたアルベルトもおとなしく彼等につきあって、ルーペを握っていた。
作業は至って静かに続けられた。
さて、彼は見つかったか・・・どうでした?アルさん?
ところで、皆さん・・・確か『目の離せないポイントがあるんで待機の状態』だからドルフィン号に全員集合しているんじゃあ、ありませんでしたっけ?
・・・あっ・・・『出動の可能性は低い』からいいのか???
でもピュンマさんそれでパソコンの前でお仕事中ではなかったんじゃあ???

