護りたい<2>


ソレイユを抱えて逃げる男。

それを追い掛けるフランソワーズ。


「大人!ルナと車で避難して!車から応援の連絡を!私は追い掛けるから!」


 大人は急いでルナを車にのせると、アクセルを踏み込んだ。と同時に車に搭載してある緊急連絡用の通信機のスイッチを入れると研究所にいる仲間に連絡をとる。


「大変アルー!、スクランブル、アルよー!」

「張大人か?どうした?」

無線の向こうでピュンマが答えた。

「大変アル、B.G.に襲われたアル!ソレイユが攫われたアルヨー」

「なんだって!今どこだ?」

ピュンマが大声をあげると同時に脳波通信のチャンネルを全員にむけて開いた。

すぐさま、全員が反応する。

「どこだ?006」

「ワテは車の中ネ!ルナと脱出したアルね。003は●●●スーパーの地下駐車場でソレイユ連れてった奴を追い掛けてるね!応援たのむヨロシ!」


その頃、ソレイユを抱えて逃げた男を追っていたフランソワーズは、車にのっている男達の動きを捉えていた。車は逃げてくる男を確保しようと横から出てくる所だった。

『目』でその動きを捉えていたフランソワーズは、持っていた銃の照準を運転席の男にあわせるとトリガーを引く。弾は運転席の男の右肩に命中すると、ハンドルをとられた車は横にすべりながら駐車場の柱にぶつかって止まった。運転席の男は運転席と壁に挟まれてもう動かない。そのうちに、助手席から下りてきた男もフランソワーズの銃がクリーン・ヒットする。フランソワーズにしては珍しい手加減のない銃捌きである。


「あと一人!」

フランソワーズが、さらに追い掛ける。ソレイユの泣き声が聞こえる。

最後の一人は、駐車場のスロープに向かって走っていた。だが、そのスロープは出口ではなくて入口だった為、ちょうど駐車場に入ってきた車が、走ってきた男に驚き急ブレーキをかけた。車が斜に止まったため、進路を塞がれてしまった。

ソレイユを抱えた男は仕方なく右に折れ走り出すが、そちらに出入口はなく逆に奥へとは戻る事になっていた。後を追ってきたフランソワーズが、追い付いた時には男を駐車場の奥、壁際に追い込む格好となった。


「チャンスだわ。なんとか、ここでくい止めなきゃ、誰かがきてくれるまで。ソレイユを護らなくては!」


ソレイユを取り戻す事しか考えられないフランソワーズが、男に向かって銃を構えた。全速で追いかけた為息が荒い。一つ息を吸い込むと、

「さあ、ここから出られやしないわ。もうすぐ仲間も駆け付ける。そうすれば、あなたの命は確実にないわよ。今のうちにその子を返しなさい。」


男を蒼い瞳がじっと見据える。低く冷たい澄んだフワンソワーズの声が天井の低い地下駐車場に響く。

「そっちこそ、その銃を捨てるんだな。こんな赤ん坊、このナイフがちょっとでも刺さりャ、一コロなんだぜ。へへへっ、やっぱりこいつは003、おまえの子供か?お笑いだな、子供が産めるとはな!しかもこんな街中で子連れで買い物だと?家族ごっこのつもりか?はっ、報告しがいのある情報だぜ。さあ、早く銃を捨てやがれ!」

男はナイフをソレイユの顔の前に突きつけながら、フランソワーズに向かって毒々しく脅してくる。

ソレイユが手足をバタつかせながら泣叫ぶ声がいちだんと大きく地下駐車場に響く。

フランソワーズはそれでも少しも怯む事なく、もう一度静かに言った。


「あなた、私が誰だかわかって襲ったんでしょ?003を甘くみないでよ!すでにあなたの仲間は倒したわ。後はあなた一人よ。さあ、ソレイユを返しなさい。あなた自身が死にたく無かったら!」


フランソワーズの更に冷たい声が響き渡る。その声を聞いた男は、少し身をひいた。


「なんだこの気迫は?こいつ一人で何ができるっていうんだ?ひとりで・・・まさか仲間がもう?」


 男があたりを見回そうとした時、フランソワーズが叫んだ。


「そのまま入口から下りて来て!すぐ左の奥!」


と同時に男が首筋に後ろから手刀をくらってその身体が崩れていく。

弛んだ腕から救い上げるようにソレイユをキャッチしたのは、

加速装置を解除したばかりのジョ−だった。

ジョ−の一発をまともにくらった男に息はなかった。

ジョ−にも手加減はなかったらしい。