インフルエンザの特効薬・・・「特効薬の称号に恥じない働きをきちんとしているのじゃな。」

ギルモア博士をも感心させたそれは、ルナの症状にも劇的に効果を見せた。

幸い副作用も発症せず、ルナは2日目の朝には、ほとんど熱も下がり、本人始めみんなをほっとさせた。

が、熱は下がったというものの、インフルエンザに感染していることには違いなく、軽い頭痛とやたらと襲ってくる眠気を拭うことが出来ずに、おとなしく自室隔離に甘んじていた。食事も当然部屋で一人きりだが、モニターには見慣れたリビングの光景が映し出され、好きなときに見ることが出来るし、自分からの問いかけには、必ず誰かが答えてくれる。

さして寂しさや不便を感じることなく闘病生活3日目までは、難なく過ごすことができた。


が・・・4日目の朝、ふと確認したカレンダーの日付にルナの意識は一気に平常モードに戻るべく活性化したのだった。






「だから〜お願い!もう大丈夫だから〜〜〜っ!」

「お前は薬のおかげで大丈夫な気がするんだろうけど、こっちが駄目なんだよ?」

「みんなは平気でしょ?感染するの?」

「お前、博士を殺す気か?」

「そんなことするわけないじゃない〜!その間だけ、おじいちゃまがお部屋にこもってよ?」

「無茶言ってないであと2日大人しくしてろって。」

「だって〜〜〜時間ないんだもの!今日、作らなくちゃ意味ないよーっ?!」

「ルナ?無茶言わないの。事情が事情なんだから、1日2日遅れたって「有効」よ?」

「え−−っ?そんなの駄目!14日じゃなくちゃ意味ないって!」

「ルナ?いい加減聞き分けなさいな?あなた・・・ウイルス入りのチョコを配る気?」

「ははは、まさしく毒入りチョコじゃないか?」

「そんな〜酷い・・・なんだったら、特効薬も混ぜ込むからさぁ。」

「ルナ?随分な力業だけど?・・・それ。ってか、それは反則!」

「・・・呆れた?それこそ駄目よ。」


モニター越しにルナVSフランソワーズ始め大人全員との攻防戦が繰り広げられている。

ルナが目にしたカレンダーの日付は2月13日。

明日は当然2月の14日・・・女の子にとって1年のうちでもっとも勇気を必要とする(?)最大イベント聖バレンタインデーの前日だったのだ。

当日、手作りのチョコレートを渡すとなると、今日がまさに「勝負の日」。

いまだ隔離状態なルナは、キッチンに入れない。しかし、あれほど辛かった高熱は、薬のおかげであっさり下がり、今は頭痛も倦怠感もなく、昨日から食欲もほぼ通常通りだ。本人からすれば、当然全快宣言もしたくなる。実際にモニター、スピーカー越しではあるが、十分に元気良くやり取り出来ているのだから。

それでも大人達は、一歩も譲歩してくれない。ルナの敗色が濃くなってきた頃、強固な態度のルナに、誰もが聞きたかった質問だったはずの一言を、まるで代表するかのようにジェットが、スピーカーに向かって話しかけた。


「おーいっ?ルナ?お前、学校でそんなに渡したい「おとこ」でもいるのか?」

「はぁ?・・・別にそんなんじゃないわよ?ただ・・・。」

「ただ?なんだよ?」

一瞬、リビングに存在した「耳」が全てスピーカー音声に集中する。


「・・・「おんなのこ」のこだわりよ。」


「なんだ?それだけか?」

「なんだ・・・って、ひどーいっ!それって重要よ?」

「はいはい・・・お前にとっては重要かもしれねぇけど、俺達にとっては、お前が1日も早く治る事や、感染を防ぐ事の方が重要だぜ?」

「う・・・。」

珍しく(?)正論で話しかけてきたジェットに、こちらも珍しく声を詰まらせるルナ。こだわりは、案外小さいのかも知れない。

「多少遅れたっていいじゃない?ルナ?貴方の気持ちはみんな判っているわよ?それよりも、ここにいる男どもはねぇ?貴方が自分達以外の誰かにあげるのか?その為にこだわっているんじゃないか?・・・の方が、重要みたいよ?本当は誰か本命の男の子がいるんじゃないの?」

「・・・残念ながら、今年も現れなかったわよ?」

「あら?そうなの?それは残念・・・って、見えてるでしょ?ここ。・・・みんな、なんてあからさまにほっとするのよ?全く・・・。」

「うん。見えた・・・ごめんね、渡すの遅れちゃうけど・・・。」

 どうやら、ルナも納得できたようだ。


「ルナ?今年も一番大きいのは僕にくれるよね?」

「うん、勿論よ、パパ・ジョー。今年は、チョコレートケーキに挑戦しようと思ってたの。」

「へーっ?それは楽しみだな?」

「はいはい・・・全快したら、手伝ってあげるから、まだ大人しくしていて頂戴ね?」

「はーい。」


・・・おとこができたわけじゃなかった・・・


ルナの妙なこだわりに翻弄された男性陣が胸をなで下ろす様子をみて、フランソワーズは笑いをかみ殺すのだった。






数分後、ルナの部屋のドアが叩かれると同時にジェットが入ってきた。

「よお?お前、確かに快復してきたようだな?退屈なんだろ?実は?」

「ジェット?・・・そうよ〜だって、熱さえ下がっちゃえば、動けるモノ。だけど、今、あたしが動けば、それだけでウイルスばらまき状態なんでしょ?」

「その通り。まだ、お前は病原体そのもの。でかいバイ菌だな。」

「・・・ひどい・・・わざわざ嫌み言いに来たの?」

正直、退屈していたルナにとって、格好の話し相手・・・いや?ケンカ相手の登場である。

早速、何時も通りのやり取りが始まった。

「違うっ!お前が退屈そうだから、遊びに来てやったんじゃねぇか?俺様が話し相手になってやるよ。ありがたく思え?」

「えーっ?うつっちゃうよ?」

「安心しな。俺様は絶対にうつりゃしないから。」

話だったら、モニター越しで十分に事足りるのに、なんでわざわざ?・・・ルナは椅子を引きだし、居座りたい生を決め込もうとしているジェットの顔をしげしげ眺めてしまった。

「???その妙な自信は何処から来るの?」

「さあな?だけどよ?俺ってここんところ、風邪ひかないと思わないか?」

「・・・確かにね。あ・・・そうか!馬鹿とジェットは風邪ひかないって言うしね。」

「なんだとーっ?!」

遠慮のないルナの言葉に、ジェットも相手が(一応)病人な事も忘れて反撃に出る。そこに・・・


「ねぇ?ジェット、聞こえる?」


「おお?音声繋がったまんまだったのか?あん?ピュンマか?なんだよ?」

「知ってるかい?馬鹿は風邪ひかないっていうあれね。正しくは「馬鹿は風邪をひいても気が付かない」なんだってさ。」

「はぁ?なんだそれ?・・・って、そう言えば俺、なんかおかしいときもあったような気もするけど、いつの間にかなんでもなくなってたし・・・あれって俺、風邪ひいてたのかな?・・・って、そう言うことか?」

「・・・自覚あるじゃない?きっとそれがそうだよ。」

目の前で自分で自分にツッコミを入れるジェットがおかしくて、ルナはつい笑い出してしまった。

会話はモニターをはさんでますます弾む。

「ジェットって、やっぱりお馬鹿だったんだ。」

「ルナ?わざわざお前の相手をしてやろうとしている俺様に向かっていう言葉か?」

「ふふふ。これでこのままずーっと、ジェットがピンピンしていたら証明できるねーっ?!」

「ルナ?本人が気が付かなかったら・・・だよ。」

「あ、そうか?みんなでちゃんと観察していてねーっ!」

「おいっ!!!!」


先程は笑いをかみ殺していたフランソワーズも、今回は耐えられずに笑い出す。

あと3日もすれば、みんなはちゃんとチョコレートケーキを手に出来るだろうに。

今年は数日遅れる上、「観察」の付録付き。

毎年一筋縄では終わらないバレンタインデー。


・・・しばらく楽しめそうね・・・フランソワーズは、再び1人、こっそりと笑みをこぼした。


〜 おしまい 〜


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相変わらずお馬鹿ですみません。

サイボーグでもインフルエンザになるんだろうか???

軽く風邪ぐらいはひきそうですけど(根拠はありません(^^ゞ)

ちなみに我が家では「ジェットみたいなヤツ」がおります ヘ(^^ヘ)(ノ^^)ノ

ええ、妙な自信と確信を持ち合わせてます(苦笑)

まあ、健康第一ってことで・・・えっ?

ルナにはみんな甘いんです(^^ゞ


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