「確か5回めだよ。」
彼女のお怒りモードをサラッとうけているのは、これまた茶色の髪を持っている男の子である。名前はソレイユ。彼の瞳はちょっと珍しく赤みがかった茶色をしている。
この二人、実は双児の兄妹で、もう少しで12才になろうとしていた。
ルナのお怒りの原因は・・・なんと誘拐未遂事件であった。確かに世間一般ではあまり遭遇する事件ではないはずだが、それに5回も係わっているとなれば、頭にもくるかもしれない。
「ほんとうに懲りないやつらね!私達だって段々大きくなっているんだから、やりにくくなるってわかんないのかしら?もういいかげんに諦めればいいのに!」
失敗した相手もこの言われようでは立つ瀬がないだろう。
「あっちから見れば、やっぱり僕らがみんなのウィ−クポイントなんだろう?まだまだ僕らがガキってことなんだよ。きっと。」
同じ被害に会っていながら、方やお怒りモード、方やこの冷静さ。もっともソレイユの場合、怒っていても声を荒げる事は滅多にない。多分、これでもかなり怒っているはずである。その証拠に声がやけに冷たい。
「まあそう怒るな。今回も未遂に終わった事だし、何よりお前達が無事だったんだ。」
彼等の怒りを少しでも静めようとアルベルトが声をかけた。
「無事だったですって?よく見てよ、アルベルトおじさま!この傷っ!」
(ルナがアルべルトをおじさま呼ばわりする時は、かなりの御機嫌斜めの時である。)
ルナはみごとにひざ小僧を擦りむいてていた。もうすでにフランソワーズの手によってきちんと手当てされており、白い包帯が巻かれる膝をアルベルトに向かって突き出した。
「あまり興奮しないで。足首だって捻っているのだから、そんなに急に動くとさらに悪くなってよ?」
いきなり立ち上がったルナを軽く諌めながら、フランソワーズはルナを再び椅子に座らせた。
「悪かったね。また君たちを巻き込んでしまって。おまけに今回は怪我までさせちゃったね。やっぱりガードが甘かったかな。」
ジョ−が残念だと言わんばかりにため息まじりで話し掛けてきた。
今日起こった誘拐事件は、学校からの帰り道に堂々と(?)正面きって近付いてきた二人組に、強引に車に連れ込まれそうになったというものだった。無事だったのは、ふたりがいっしょに行動していた為と、かなり暴れた為、そして彼等がこういうに慣れていたので(???)大声が容易く出せたので、結構まわりの注目を集められたという結果だった。(とっさの事に普通に場合、なかなか大声は出ないものである。)その注目の中、なんとか魔の手から振り切ることが出来た、という次第であった。
が、その大立ち回りの際、勢いあまったルナは足をひねって転び、膝をしたたか擦りむいてしまったわけだった。逃げだせた所で、たまたま迎えに来かけていたアルベルトに出会って難をのがれた、という経緯である。
「やっぱり日本じゃ目立ってしまうのかしらね。」
フランソワーズもため息混じりである。
彼等が目立たないと言えば嘘になるだろう。ジョ−とフランソワーズのカップルは勿論、彼等二人の子供であるソレイユとルナも人目を引くには十分目立つ容姿だ。それが、いつも二人一緒なのだから、余計である。それでも今回は、できるだけ目立たないようにと都会のインターナショナル・スクールを選び、様々な国籍の人間の中に紛れてやろうという作戦のつもりであった。
そのためにできるだけ近くのセキュリティの整ったマンションを選び、通学途中には気を配っていた。学校の中にいればそれなりに紛れもしたが、なかなか思惑通りにはいかなかったようである。
通学し始めて5ヶ月、そろそろ落ち着いてしばらくここに落ち着けそうだ、と感じた頃に起こった事件だった。

誘拐未遂事件に巻き込まれ、怪我をしてしまったルナに向かって、申し訳なさそうな顔をしているジョ−。
それを見ていたソレイユがジョ−にむかって少し大きな声を出す。
「パパ・ジョ−!また、そんなこと言い出す・・・だめだよ!そうやってすぐに自分を責めるんだから。僕達だっていつまでも送り迎えが必要だなんてなさけないって思っているんだよ。僕達がもう少し注意していれば、事前に回避できたはずなんだから。今回は僕達が油断していたよ。」
心配顔のジョ−を覗き込むように言うその声は、ハッキリとした意志を持っている。
「そうよ。現にちゃんと自力で逃げ出して来れたんだし。私達がもっと気をつけなくちゃいけないのよね、ソレイユ。」
二人から見つめられ叱咤されて、苦笑するジョ−をみて、フランソワーズも複雑な表情を浮かべている。
「でもね、また移動しなくてはいけないし。折角慣れてきた所だったのに。友達ともまた別れる事になるよ、いやじゃないのかい?」
あくまでも優しく声をかけるジョ−。それに対する二人の答えは・・・
「そりゃあ、折角友達もできて仲良くなれたのに、離れなきゃ行けないのは悔しいさ。でもね、今更言ってもしかたがない事でしょ?僕らが持って生まれた運命ってやつ?」
あっさりと言ってのけたソレイユに、フランソワーズが思わず悲しそうに小さく叫ぶ。
「そんな、悲しい事言わないで!」
一気に喋るルナの瞳にも強い意志が光っていた。視線は一度としてジョ−とフランソワーズから外れない。
「パパ・ジョ−は僕達の事負担なの?」
「なにをバカなこと言い出すんだ!」
ソレイユにいきなり尋ねられて声を荒げたジョ−。ソレイユは彼と同じ色の瞳で視線を真直ぐに返しながら、はっきりと言った
「僕達はパパ・ジョ−やママン・フランの所に生まれてきたことを誇りに思っているよ。みんなのことも大好きだよ。みんなが僕達の事をどれだけ大事に想ってくれているかもよくわかっているつもり。僕らはみんなに護られてきた。それも知っている。みんなは僕とルナの自慢なんだ。それはね、学校に通う事や友達の事とは比べられるものじゃない。何より1番に大事な事なんだから。だからね、パパ・ジョ−がすまなかったなんて言う必要はこれっぽっちもありゃしないんだよ。」
11歳の子供にあまりにはっきりと自分達の誇りだと明言されて驚きの空気の中、アルベルトが静かに口を挟んだ。
フランソワーズは目を潤ませ、なんと声をかけたらよいものかと思案しており、ジョ−にいたっては、驚きのあまり先程叫んだ勢いで腰を浮かしかけたそのままの姿勢で、固まってしまっている。
それに対してルナとソレイユの方は、曇りのない瞳でにっこりと笑いかけながら、言葉を続けた。
「だって、私達本当にずっと護られて来た事を知っているわ。どこに行こうともどんな所でも、いつもみんながいてくれて護ってくれた。」
「この生活結構好きなんだよね。」
ことさら軽く言われてジョ−は、小さなため息と共に浮かせていた腰をソファーに沈めた。
「そうだね。君たちこそ僕らの誇りだよ。僕らの夢や希望そのものなんだよ。」
フランソワーズが二人に近付きそっと抱き締める。その目からはもう耐えきれなくなった涙があふれていた。
「あなたたちを産む時、不安がなかったと言えば嘘になるわ。生まれてからも、色々と考えたわ。本当に産んで良かったのかって。戦いの中、護りきれるかと不安だったわ。平和な時にはあなた達の笑顔に癒されて・・・これは、私の単なる自己満足であって、あなた達に甘えているだけじゃないかとも思ったし、あなたたちはこれで本当に幸せなのかって・・・ずっと考えていたわ。・・・ありがとう。ここに、私達の所に産まれて来てくれて・・・あなたたちこそ私達の誇り、私達が生きている証なんだわ。」
フランソワーズの涙まじりの優しい声に、ソレイユとルナの顔が少し恥ずかしそうに赤く染まった。ジョ−も近付き二人の頭に優しく手を添えた。
「ここからは、もう離れなくてないけないよ。関係ない人達を巻き込むわけにはいかないから。どこかに落ち着くまでまたしばらく研究所とドルフィン号の生活だけど・・・。」「だからあ、それって結構居心地いいんだよ。」
「このマンションだとみんなで来ると目立つからって、一人づつしか来てくれなかったけど、またみんないっしょね。」
明るく答える二人。.ジョ−とフランソワーズも二人を見つめ頷いた。
アルベルトがフっと笑みを口の端しにのせて二人に話しかけた。
「そうだな。お前達の方がずっと覚悟ができているのかもな。さあて、ソレイユ?、ルナ?。研究所に帰ったら、またいつもの見慣れた連中と付き合わなきゃならないぞ。今度はどこに落ち着きたい?ゆっくり検討しようぜ。俺たちもお前達が一緒にいてくれると嬉しいよ。」

・・・少々出来過ぎ・・・の子どもらに仕上がってしまった気がする・・・←自分の願望の表れ?
都心のマンションで家族4人で暮していたらしい?・・・結構目立っただろうなあ〜そこにジェットやらアルベルトやら・・・どでかいジェロニモさんやらが尋ねてきたら・・・
『自分でセキュリティ完璧のマンション』って設定しておきながら、ここの管理人さんや警備員さんにはかなり不審がられたんじゃないでしょうか???なんて矛盾だらけ(泣)・・・気がついた時にはもう遅い・・・ので黙・・・
フランソワーズの笑顔一発で帳消しにしてもらおう!(ってこんなことでイイのか?)
