<9>
「どうだ? なにか出たかい?」
ジョーとフランソワーズによって、オープンにされていた脳波通信と、イワンがトレースして送ってよこしたキャサリン女王やアラン・ラゼル大尉の会話を、コテージ内でずっと拝聴(?)していたのは、居残り組メンバー達。
徐々に話が見えてきた段階で、話しに出てきたクルツ・リーマン将軍とその一派について、また、内密に行われたという調印について、そして、モナミ王国が新しく建設した「基地」について・・・の資料を集め始めていた。
「この調印・・・キャサリン女王っていうのは、ずいぶんと頑張ったんだね。 あの時の王女様のイメージは払拭しないといけないな・・・。」
コンピューターを駆使して、積極的に資料集めを開始しているピュンマが、次々とプリントアウトされてくる資料を手にしながら、感心したように息をついた。
「そんなにすごいことやってのけたってい言うのかい? あの女王様は?」
「まあね・・・昔から、モナミ王国が、商業的要所であったのに対して、ガラリア国は地理的なことから交通の要所だったんだよね。 歴史的にはずいぶんとハードな時代もあったみたいだし・・・。 特に隣のガラリア国は、小国ながらも充実した軍備が、整っているわけなんだね。 だからこそ、今回みたいな軍部で「勘違い」をおこすヤツが出現するんだろうけど。」
「「勘違い」?・・・か?」
「そう。 ガラリヤ国は古くは交通の要所。 現代はそれは、軍事的要所とも言えるんだよね。 ここは、東西南北、何処の国に行くにも都合がいいんだ。 つまりは・・・前線基地となり得る。」
「確かに、ここには冷戦時代、東西両方の情報機関が設置されていたことは、公然の秘密だったようだな。」
手元の資料に目を通しながら、アルベルトが情報の整理をしていく。
「それに対抗するためにも、ガラリヤ国は、自衛に力を入れざるを得なかった・・・と、いうことかの?」
「グレート卿、ご名答。 だから、小国ながらも「強い」軍隊をもっているわけさ。 そして、「強い」軍隊はイコール独立心が強くて、一歩間違えれば国勢にも口を出してくる。」
「それが暴走すれば、勘違いもおこす・・・ってことアルね?」
「うん。 ずっと議会と軍部はいい意味で均衡状態を保てていたのに、最近ちょっとそのバランスが崩れかけていたんだね。 きっかけは、まだ調査不足だから、はっきりしないけど・・・。 内外にバランスが崩れたことが漏れれば、それだけで、周囲からの脅威に晒されるわけだし。 それを大義名分にして、軍部は主導権を握ろうとする。 今回、議会は、このままでは、軍部が暴走しかねないと認識していたんだね。 だから、早いウチに手を打ちたかった。 そこにキャサリン女王っていう、旨い橋渡しが、名乗りを上げてくれた。 議会派は、事が大々的にならないウチに、早期に手を打てた・・・って、わけだ。」
「平和的に解決できて何より・・・だったわけだよな?」
・・・それって、大団円ってことじゃないのか?・・・
ピュンマの懇切丁寧な解説に対して、ジェットが、少し納得いかない・・・といった様子で、確認してみる。
それに呼応したピュンマの講釈は、まだまだ続く・・・。
「大衆的にはね。 大方の軍部だってそうだったんだろうけど・・・。」
「その「枠」に、収まらなかった「はみ出しもの」が、存在しちまったってことか?」
「何時の時代もいるんだよ・・・貪欲に名誉欲と支配欲に取り付かれるヤツがさ。」
・・・お約束、ってやつかよ・・・
ジェットが再び盛大な溜息と共に、大げさに呆れてみせた。
そして・・・
「で、このリーマンって親父、今、行方不明なんだって?」
「うん・・・実際にクーデターが勃発したわけではなくて、極めて平和的に収まっているから、彼がいなくなっても国際的なニュースには、ならなかったんだね。 だけど、確かに彼は、彼の直属の部下を引き連れて、行方を眩ましているらしい。」
ピュンマは、冷静にさらっと言ってのけているが、表沙汰になっていないだけのことで、非常に重大な事実にかわりない。
みんなの表情が引き締まる。
「部下って何人くらいいたんだ?」
「正確な数は、まだわからない。 もう少しデータを集めないと・・・。」
「この国に潜入している可能性は?」
「それは大ありだと思うよ。 観光立国だからね、ここは。 ガラリアほど入国に厳しくはないはずだ。」
具体的に考えれば、考えるほど、自分達の予想が的中しているだろう事を確信する。
「おまけにこの2つの国って同種族だって? 紛れていても見かけの区別はつかんな?」
「確かに、偽造の身分証明持たれちゃ、その方面からの探索は無駄だね。」
「だけど、その「祭り」で、俺達は完璧なガードを求められている・・・と。」
「そう。 当然、前日までに尻尾を掴めれば、それに越したことはないだろうけど、時間的にちょっとね。 当日のガード体勢も含めて作戦を立てなきゃ。」
・・・敵が侵入してくるだろうルート、仕掛けてくるだろう攻撃のパターン、武器調達や運搬の方法、それらを分析して、一般人を含めた広大な会場の警備計画を練らなくてはならないか・・・
ピュンマは、ぶつぶつと独り言のように呟くが、その口元には、楽しそうな笑みさえ、浮かんでいる。
「2週間後って言や、イワンはおねんねか・・・あてにならんな。」
「ああ・・・だが、それまでにしっかりとプランに参加してもらっておこう。」
「女王様は、ずいぶんとやり御耐えのありそうな仕事を、俺達に廻してくれたな・・・。」
大量に出揃った資料の前で、全員が、やる気満々?・・・作戦プランを練りに掛かっていた。
コテージでメンバー達が、資料をかき集め、ガードに必要な作戦を練り始めた頃、宮殿では、ジョーがテレパシーで、イワンと打ち合わせに入っていた。
「ジョー? これからボクが言うモノを、そこにいる近衛の人たちに伝えて、揃えてもらってくれる?」
「了解、どうぞ?」
「まずは、宮殿と庭園の詳しい見取り図とセキュリティシステムの全貌。 「祭り」の計画書と全体図、それと警備図及び警備計画。 それと、一応、警備担当者のプロフィールも頼むよ。」
「身元?」
「うん・・・女王に一番近い人たちくらいチェックしとかなくちゃね。」
「わかった。」
ジョーがこれらをラゼル大尉に伝えると彼等は、大急ぎこれらを揃えるために一旦部屋を出ていく。
「あっ、それから、当然、庭園への入場の際には、荷物チェックをしているはずだから、その装置、X線探査装置だと思うけど、それの性能も知りたいって言っといて。」
ラゼル大尉の指示で近衛兵士達が、廊下をばたばたと動き回っているのが、部屋の中まで伝わる。
「30分お待ちいただけますか? プロフィールも含めまして揃えさせます。」
ラゼル大尉が答えた。 が、最後のリクエストに応えるのは、保管場所がココではないために時間がかかる・・・との返答があり、これだけは後日、と言うことになった。
さすがに軍属だ、動きがテキパキと早い。
警備の資料を待っている間に、ジョーは女王に別の質問をする。
「女王陛下、ご家族は今、どちらに?」
「主人は病院です。 娘も主人の病院へ。 今日は、ボランティアに行っていますの。」
「そういえば、御主人のレイノルズ卿は、お医者様でしたね。」
「ええ。 20年前、結婚するとき、国中に向かって「自分はどんな立場な人間になっても、職業だけは決して変えない」って、宣言した人です。 しかも現場命、当然、今でも現役でバリバリ・・・働いていますの。」
「素晴らしい事じゃないですか? しかし、警備の方は?」
「一応VIPですからね。 そう言うと、厭な顔しますけど。 ちゃんと近衛が常駐していますよ。」
夫であるロジャー・レイノルズ卿の話となると、女王の表情が少し照れたように和んで、あたりの緊張が本の少し和らいだ。
「「祭り」までの2週間ですが、こちらで近衛の方々だけでは、不十分・・・とのデータが出ましたら、その時はちょっとレイノルズ卿にも考えてもらわねばいけませんが・・・。」
「そうですね。 彼には私から話しておきましょう。 娘も同様ですね?」
「はい。 今日は病院だそうですが、普段は?」
「まだハイスクールの2年生、学生ですけど、今は長期休暇中なので、ココしばらくは病院通いだと思います。 彼女は父親に似て、医療関係に興味があるようなので。」
「ハイスクールの2年? 僕達と同い年?」
双子は、王女が同い年だとわかって、驚きの声を上げる。 と、同時に、どうして、自分達の同席を女王が許可したのか・・・想像が容易になってきた。
「ええ・・・今年の冬には18になるわ。」
「将来はお医者様ですか? ですけど、王位継承者でしょ?」
「そうですけど、今は好きなことをさせたくて。 それに私、ちょっとやそっとじゃ「退位」なんてしませんことよ?」
「・・・失言でしたわ、キャサリン女王、お許し下さいませ。」
・・・今は好きなことをさせたい・・・フランソワーズは、女王という立場にあるキャサリンの母なる部分を感じて、共感すると共に自分の不用意な一言を反省した。
弱冠21歳で即位せざるをえなかった彼女だからこそ、実感がこもっている。
「ねえ?・・・もしかしたら、アタシ達の協力って・・・この辺り?」
気が付けば、ルナがやけに瞳を輝かせながらジョーを下から見上げている。
「・・・そうだな・・・とりあえず、お友達になっておいてもらおうかな?」
ジョーも女王の思惑を計って、口元をほころばせる。
「まあ、ジョーったら! コレは遊びじゃなくてよ?」
「勿論わかっているさ。 無茶はさせない。 実際にガードするのは僕達だ。 だけどね、この子達の「勘」もまんざらじゃない。・・・そうだろ?」
ジョーが軽く双子にもガードの一翼を担わせようとしている行為に、フランソワーズは、少なからずとも、驚いてしまう。
しかし、どうやら、ジョーは本気なようだし、あてにされた双子の瞳はますます輝いてくる。
「へーー、・・・パパ・ジョー、僕達のこと随分と買ってくれていたんだね?」
「まあな。」
「そうよ、ママン・フラン。 私達、伊達にミンナを見てきたわけじゃないわ。」
「・・・そんなにおだてられて、調子に乗っちゃって・・・かえって心配だわ。」
オロオロするフランソワーズを、かえって面白がるかのように、双子の笑顔は自信に満ちている。
「ははは・・・いいんじゃないか? 今回はそいつらにも、多いに働いてもらおうぜ? フラン?・・・木に登らせておけよ?」
脳波通信を通して、ジェットがけしかける。
「そいつらの言い分のも一理あるぜ? そんじょそこらのボディガードよりも、危険回避の勘が働きそうだ。」
「すでに一種の動物的な勘だね。 よし・・・2人も含めて王女様のガード計画を立てよう。」
どうやら、アルベルトやピュンマまでがその気だ。
(全く・・・ココの男達は何を考えているのかしら・・・)
フランソワーズは、もう、呆気にとられるしかなかった。
「フランソワーズ? 大丈夫だよ。 この2人を今回の作戦に参加させることで、余計にみんなが、是が非にでも危険を回避させる方向に力が入る・・・ってものだよ。 そうは思わないかい?」
「・・・イワン? 貴方にしてはずいぶんと乱暴な発言ね。」
「そう? ・・・でもね。フラン? 考えてみて・・・将来、この子達は、自分で自分の身を守らなくてはいけなくなる。 このまま年月を重ねていけば・・・必然的にね。 そして、それは遠い将来じゃない・・・だろ?」
「確かに・・・いずれは訪れる「時」ではあるはね。」
「うん・・・。 もっともそれは、僕達の側を離れる・・・ってことで、今の状態とは比べモノにならないほど、安全性は高まる・・・って、条件の下に・・・だけどね。 それでも100%回避できるわけじゃないだろう・・・。 それを考えれば、彼等が自分達で己の危険を回避するプログラムをシュミレーションしておくことは、凄く必要なことなんだ。 今回のコレは・・・またとない機会なのかもしれない・・・とは思わないかい?」
「・・・イワン、あなた、そこまで考えていたの?」
「キャサリン女王がくれた「チャンス」さ。 ・・・ガードのオプションだと思って、利用させてもらうさ。」
「・・・さすが・・・イワン、あなたって、相変わらずに策略家ね・・・。」
「ふふふ・・・何を今更な・・・。」
部屋の片隅で、表情を出さないようにフランソワーズは、密かに苦労しながら、イワンとやり取りする。
この思わぬ「依頼」が、自分達にとっても双子にとっても大きな「一歩」になることだけは確かだ・・・と頭の隅でコッソリと思った。

あららら・・・なんだか皆さん乗り気?(^▽^ケケケ
お約束な展開で・・・すみません(汗)
国名>当然フィクションです(←当たり前だ!)モデルな国もありません(キッパリ!)
しいて言うなら、「ガラリア国」は、旧ゼロに出てきます。お名前拝借しました(^^ゞ
・・・早く、展開せんかい???(・・・逃)))))
・・・ということで〜追記です(10/29)
やっと出てきました〜捏造のかたまり(?)>ご主人様とお子様♪
完全にオリジナル設定ですので、深く突っ込まないでください(汗)
でもって、イワン>腹グロですな・・・(^▽^ケケケ
ええ・・・タダじゃ起きませんって♪
シリアス展開のはずだったのですが・・・彼等、楽しんでません??? あれ???
| index | next |