「あのね・・・どうも、ソレイユ・・・クラスの男の子の一部と、上手くいってないみたいなの。」
ルナが、少し言いにくそうに、ジョーとフランソワーズに向かって、説明し始めた。
2人の心配顔をみながら話すのが辛いのか、ルナは2人の顔を見ようとしない。
少し俯き加減に、声のトーンは低めに、ひとつひとつ言葉を選ぶ。
「全員と、上手く言っていない・・・って、わけじゃないらしいのよ? だけど・・・どうも一部にちょっと「強い」男の子のグループがあってね・・・5,6人程度なんだけど。それがほとんどソレイユのクラスの子で・・・その子達、ソレイユが何かするたびに突っかかってきているらしいの。」
「突っかかる?」
「ソレイユに?」
リビングにいるおとな達全員が、ルナの情報に耳を傾ける。ルナは、ひとりひとり、表情を確かめるように、顔を巡らせた。
「うん・・・誰かに優しくすれば、冷やかされるし、マラソンの時には、走りながら妨害されたって、ぼやいていたわ。・・・勿論先生の見えないところでね。」
「ふうん・・・それから?」
「そんなことが始まってから、その子達がいると、関係ない子達も、ソレイユに近づこうとしなくなっちゃうみたいなのよ。」
「・・・そいつらが睨みをきかせているってことか?」
「うん・・・基本的には、リーダーひとりらしいわ。」
「それって・・・いわゆる「いじめ」なんじゃ?」
「そんなに影響力あるのか? そいつ・・・。」
おとな達が口々に発する質問に、ルナは、ひとつひとつ丁寧に答える。
「うん・・・身体は大きいし、ちょっと乱暴なところがあるみたい。噂では、そんなだから、ソレイユのクラスに初めから決まっていたんだって。」
「決まっていたって? どういうこと?」
「ソレイユのクラスの先生って、男の先生なのよ・・・。あったことのあるママン・フランなら、わかるでしょ?」
「ええ・・・体育が専科の先生らしいの。体格のいい若手の先生よ。」
「・・・そいつでなくちゃ、押さえ込めないって訳かい?」
「そういうことみたい。・・・噂だけどね?」
自分の言葉が100%真実かどうかは不明よ・・・と、あくまでも「噂」のレベルの情報だと言うことを強調するルナ。
「そいつに睨まれて、ソレイユは孤立しているって事?」
「アタシが知っている範囲ではね。」
「だけど・・・なぜ、そんなことに?」
ルナの説明に、なかなか合点がいかないおとな達は、ただただ首をひねるだけ。
ルナもどう言ったら、的確に説明できるか、懸命だ。
「ルナはどうなの? ルナのクラスでは、そんなこと、ないの?」
ルナの状況が心配になったフランソワーズが、質問の標的をルナに変えてくる。
ルナは、にこやかに、努めて明るく、それに答えようと努力する。
「アタシの方はいたって平和よ? そんなに心配しないで。で・・・それが始まったのは、どうやら・・・この前の参観日当たりらしいのだけど・・・。」
「参観日? フランソワーズが行ったときのこと?」
具体的な事柄にジョーが反応した。
フランソワーズは、自分が絡んでいるのか?・・・と一瞬緊張する。
「そう・・・。ママン・フラン? 参観が終わって、ソレイユとお話ししていたでしょ?」
「ええ・・・。」
「その後にね、その子が、擦れちがいざまにソレイユに向かって、『母ちゃんにひっついて、ガキだな!』って、悪態ついてきたそうなの。」
「あらっ? いやだ・・・そんなにべたべたしていなかったはずだけど?」
思わぬ事を持ち出されて困惑するフランソワーズ。
「全然してないわよ! アタシも見ていたし、そばにいたし・・・。だけどね、確かに、それかららしいのよ? 彼が、ソレイユに必要以上に突っかかってくるようになったのは。」
それには、ルナが猛烈な勢いで反論に出た。
「そんなことばあって、学校がイヤになっちゃったのかな?」
「それだけで、めげるようなソレイユじゃないはずなんだけど・・・。なにか決定的なこと・・・あったのかしら? そこまでは、わかんないのだけど。
まあ、自分は普通にしていても、周りはそいつの存在で態度を変えちゃって・・・たまんなくなっちゃったんじゃないの? ソレイユ・・・。普段、いいこしてるから、溜まっていたのね?」
いつも一番身近にいるルナ。お互いの性格もクセも知り尽くしている。心配顔のおとな達を安心させるためにも、自分は明るく振る舞う。
「ルナ? お前・・・ずいぶんと冷静だな・・・。こうなること、読んでいたのか?」
アルベルトに顔を覗き込まれて、ルナは方を少しすくめて見せる。
「・・・うん。いつか爆発しそうだなって、思っていたのよ。今回は、特にね。ソレイユって、我慢強いからさ・・・パパ・ジョー? わかるでしょ?」
「えっ? あっ、確かに我慢強い・・・かな?」
「自分一人で抱え込んで・・・親子でそっくりだよ・・・お前達。」
ルナの一言とアルベルトの断言・・・周りは納得顔だった。
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