「関係ないだろっ! 放っといてくれよっ!」
「ソレイユッ!」
バターン!
ギルモア研究所のリビングに響いた、普段からは想像もできないようなソレイユの罵声。
それは、確実に、その場にいたジョーとフランソワーズに向けられたモノだった。
紅い瞳に、ギラギラとした光だけを湛えて、キッと2人を睨みつけて、ソレイユはリビングから飛び出していってしまった。
「なんだ?どうした?」
リビングには、この親子の他にも、メンバー数人が、それぞれの定位置でくつろいでいる最中だったにもかかわらず、あまりにも突然の展開で、当事者以外、事の成り行きに、ついていけた者は、ほとんどいなかった。
かろうじて、ジェットが、関与していたらしい。今のジェット・・・酷く機嫌の悪い、そして、傷ついた表情をしている。
しかし、その他の面々は、取り残されたジョーとフランを、ただ、呆然と見やるしかなかった。
「あーあ・・・とうとう爆発しちゃったのね?」
凍り付いた空気の中、深い溜息と共に、ルナが一言、吐き出した。
その言葉に、おとな達は、彼女に、事の真相を求めてくる。
「ルナ? 一体、ソレイユ、どうしちゃったの?」
「この2・3日、様子がおかしいな・・・とは思っていたのだけど、突然・・・。」
ソレイユが出ていったドアに向かって、呆然とするしかなかったジョーとフランソワーズが、ソファーに深々と腰掛けて、事の成り行きを目撃したルナの方に向かって、振り向く。
2人は、彼女が、今まで見たことのない困惑の表情を浮かべていて、ルナは内心驚いた。戦いの最中に、危険な目にあったこともある。
誘拐未遂に遭遇したことも・・・。
自分達の危険に、いつも駆けつけて、助けてくれた。
その時にちらりと見せる、心配と怒りと安堵の入り交じったの表情・・・。
・・・そんな顔はよく見知っている。
しかし、今は・・・ルナが知っている2人の表情ではなかった。
確かに困惑と不安のはずだけど・・・ルナ自身、どう表現していいのかわからない、「パパ・ジョー」と「ママン・フラン」の姿が、そこにあった。
「う、うん・・・じつはね・・・。」
ルナ自身の困惑も隠すことなく、彼女は、自分が知りうる情報を話し始める。

双子のソレイユ&ルナ・・・現在は地元の小学校の6年生に編入している。
それまでは、ミッションの関係で1年ほどヨーロッパ過ごし、現地の学校に通っていた。
ココに編入したのは、小学校生活もあと4ヶ月となった秋本番の時期。
普通、余程の事情が無い限り、こんな時期に転校生などないものだ。
クラス内だけでなく、学年全体からも興味の的だったことは事実。
その点は、ジョーやフランソワーズも理解しており、学校と連絡を取り合ったり、事情を説明したりと(もっとも、「それらしい」でっち上げだが・・・本当のことは当然・・・言えるわけがない!)細かな気配りをしていた。
編入して3週間。
言葉の問題も、話すこと、聞き取ることの心配はない。が、「書く」ことになると慣れるまでに多少時間を要する。
元々、勉強の面では、メンバー達のバックアップがあるので、何処に行っても心配はほとんど必要ない。
特に日本語は、一通りの漢字の読み書きをマスターするのに時間がかかっていた。しかし、それもそろそろ、問題解決の時期に差し掛かっていた・・・矢先である。
当事者の双子も、「親」である彼等も、彼等の「家」での生活の戻ってきたな・・・と、実感しかけていた・・・そんな時期だった。

しかし、ここ2・3日、確かに、彼はいつもと少し様子が違っていた。
少々、ふさぎ込んでいたソレイユを気にしながらも、もうそろそろ落ち着くはずだ・・・と、周りも楽観視していた。
「彼もソロソロ年頃だからな」と、あまり大げさに考えることなく、時間が過ぎるの任せていたのだった。が、ここに来て、いきなり彼が「切れた」。
考えてもいなかった展開だけに、ジョーもフランソワーズも何が起こったのかの原因の見当もつかずに、今はタダ呆然とするばかりだった。