ギルモア博士は彼等の悪戯を楽しそうに聞きながら、お気に入りのパイプに火をつけ、一服しようと口元に近付けた。


ところが、とたんに怪訝な顔になり、

「ソレイユ?ルナ?お前達儂のパイプにも何かしなかったかの?」

「ええ、いい匂いでしょ?」

事も無げににっこり笑うルナ。

「ルナ?」


「だっておじいちゃまは好きなんだけど、そのパイプは臭いんだもの。だからあたしがバラの香りをつけてあげたのよ。いいにおいでしょ?」

「???何を入れたんじゃと?」

「ママン・フランがこの前買ってきた『お香』なの。これって火をつけないといい匂いしないんだって。あたし達、ピュンマの飛行機のせいで火気厳禁って言われちゃったから、そこに入れておけばおじいちゃまが火をつけてくれると思って・・・」


「それは、儂の為ではなく、自分が試したかっただけなのじゃないのか?」


 博士が無駄とはおもいながらも、ルナの『正当ないいわけ』に反論してみる。

火気厳禁になったのも『ピュンマの飛行機』のせいではないはずなのだが?とも思いつつ・・・

「うん、そうとも言うね。あっそれは僕は関係ないからね。」

「ずるい!それ、いい考えだって言ったじゃない!」


どちらが考えたにしても悪戯されたことには変わりない。

「・・・儂もしてやられたわけか?」


 ギルモア博士は、大きな溜め息をつきながら『お香』入りパイプを繁々と眺めていたが、やがておもむろにデスクに置いてあるインターホンからリビングに声をかける。


「ジェットはおるかのう?5秒以内に儂の部屋のドアの前までこれたら、悪戯の犯人を引き渡せるがどうするね?」

「やっぱりそこに逃げ込んでたな!博士今いきますよ。覚悟しろ〜!」

ふたりにとっては運が悪かったようだ。

ジェットはリビングにいたようで、即答が返ってくる。

「え〜っおじいちゃま、僕達をジェットに売っちゃう気〜っ?」

「反則よ〜!いままでいつも匿ってくれたじゃない?!なんで〜?」

あわててソファーから立ち上がり部屋から脱出を図ったが・・・既に遅かった。


 ジェットは加速装置を使用したのか、彼等があわててドアを開けようとした時にはもうドアの外に立っていた。

逃げる間もなくジェットによって身柄を確保されたふたりはそのままリビングへ強制的に連行された。


「ジェットがあんな本持ってるのがいけないのよ〜スケベ〜」

「うるせ〜!あれは芸術だ〜!よくも俺の大事な逸品を〜!」


 リビングではジェットをはじめ、悪戯をされたピュンマやグレートも加勢してきている。3人に取り囲まれ、身動き出来ないふたりに容赦のない愛情たっぷりのお仕置きがなされる。

ふたりはなんとか3人の間をすり抜けようとするが、その度に誰かに掴まり、体中をくすぐられてもがいていた。


「パパ・ジョ−!見てないで助けて!キャア〜〜〜!あたし、くすぐり殺されちゃう!キャハハハッ!」

「そうだよ!オトナが3人がかりで、ズルイ!アハハハッヒ〜ヒ〜!クルシイ!」


 もみくちゃにされて涙が出る程くすぐられて、ジョ−に助けを求める二人だったが・・・ジョ−は離れたソファーに深々と座ったまま、ちょっと真面目にちょっと冷たい声で、

「もう人の部屋に無断で入らない?」

「入らない!入らないから〜!」

「人のモノを勝手に持ち出さない?」

「しない!しないから〜!おっお腹が苦しい〜ッ!」

ふたりのかる〜い返事にジョ−はひとつオーバーに溜息を吐く。

それを横で見ていたアルベルトが一言。

「全然反省しているようには聞こえんな。」

「やっぱりそう思うだろ?と、言う事でソレイユもルナも助けてあげない!もう少しお仕置きされてなさい!」


「「白状もの〜!パパ・ジョ−のケチ〜!」」


 連行されるふたりについてリビングまできていたギルモア博士が、ニコニコと笑ってその光景を眺めていた。

 リビングを覗いたフランソワーズが、博士に近付いてきて声をかける。

「あーあっ、みんなのいいおもちゃね、自業自得ってとこかしら。もう、みんなも剥きになって。今日の標的はジェット・・・って私があの本燃やした事、根に持ってるのね?」


「ジェットだけではなかったようじゃぞ?ほれ、このパイプ、珍しい匂いがするじゃろう?」

博士がフランソワーズの鼻先にパイプをもっていった。

「あら?バラのかおり?博士のお好みですか?」

「まさか!きみの『お香』をまぜたそうじゃぞ?」

「ええっ、まあこの匂い!この前買ったばかりのだわ!いつの間に?」

「君がピュンマの一件で火気厳禁にしたので、ここに入れたんじゃと。ここならいずれと思ったそうじゃ。」

「呆れた・・・確信犯ね。」


 ふ〜ッと大袈裟に溜息をつくと、フランソワーズは博士の方に向き直って

「博士?、あの子たち研究所に戻ってくると決まって悪戯してると思いません?どうしてかしら?」

「ふおっほほほっ!さあ?」

 博士がにこやかな表情で気の無い返事をしたため、フランソワーズはいぶかしく思うが、あえてそれ以上はきかなかった。


そのわけは・・・


以下、数日前のギルモア博士と双子たちの会話より


「お前達ドルフィン号から下りて研究所に戻ってくると決まってみんなに悪戯を始めるようじゃが、ドルフィン号の中はそんなに退屈かね?」

「ううん、違うよ。退屈だったから悪戯するんじゃないよ。それに悪戯しているつもりじゃないんだけどな。」

「ほう?どういうつもりなんじゃ?」


「あのね、ドルフィン号に乗っている時は『仕事』でしょ?邪魔はできないよ。でもここでは、みんな『お休み』でしょ?それにね、『仕事』が終わってここに帰ってきた時って、みんななんだか暗いんだよね。やっぱり疲れちゃうのかな?」

「うん。みんななんだか、悲しそうなのよね。」


「悲しそう?そう見えるのかね?」


「そう。うまく言えないんだけど、おしゃべりが少なかったり、ママン・フランなんか泣きそうな時あるし。ジェットなんか機嫌が悪かったりするし。」

「あっパパ・ジョ−なんか落ち込んじゃってるってわかるし。」


「君らにはみんながそんなに見えるのかね?」


「うん。大人はお料理がいつもより豪華になるよ。」

「グレートおじさんはいつもよりいっぱいお酒飲んでるし、ジェロおじさんはすぐに森にこもっちゃう。」

「イワンはお昼寝が多いからよくわからないけど、ピュンマはお部屋から出て来ない時が多いわ。」

「アルベルトは恐い顔していつもよりもっと黙ってる。」


「そうかい・・・よくみんなの事を見ているじゃなあ。」

「おじいちゃまも疲れた顔するよ?気がついてなかった?」

「儂もか・・・そうか・・・」

ギルモア博士がちょっと言葉に詰まってしまった。


「うん。だからね、みんなが元気になるように、僕達でもなんかできないかな?って思うんだけど、『何か』を色々みんなのお部屋で探しているうちになぜかこんな事になっちゃうんだよね。」

「探す為にかれらの部屋まで入るわけかい?」

「そう。だから、悪戯してるつもりじゃないんだけど・・・でもみんなが笑ってくれるとあたし達もなんか嬉しいからはりきって探しちゃうの。何か見つかるのよ!これが!だから辞められないの。ねっ!ソレイユ!」

「そんなとこかな?」


「だって笑うと元気が出るでしょ?」


ギルモア博士は、『悪戯』をする双子たちのそれなりの理由を知っていた。

だから彼等のする事を怒らずただ見守っていたのだ。


今、彼は、目を細めて彼の前で繰り広げられている光景をただニコニコと笑いながら見ている。

不思議な香りのするパイプを手にしたまま。

リビングではまだ双子達とメンバー達が笑顔で邪れあっていた・・・もといお仕置きが続いていた。

笑顔で・・・すっかり元気を取り戻して・・・


 〜〜〜おしまい〜〜〜


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煙草の匂いとバラのお香の香りが混ざったら・・・けっこう強烈?

ジェットさんごめんなさい。あなたがお持ちになっている本や雑誌ってきっとこの手が多いだろうなあ〜って自然と思い付いたのはなぜでしょう???

ソレイユもルナもくすぐり殺されてなければよいのですが・・・ジェットはきっと容赦なかっただろうから・・・ピュンマさんが加減してくれたかしら・・・グレートさんは、ツボがわかっていて1番強烈だったりして!!!


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