悪戯じゃないよ


バタバタバタバタ!  ドンドン!

「はい?だれじゃな?どう・・・ガチャ!バタ〜ン!・・・ぞ。なんだやはり君らか。

今日は何をしたんじゃ?」


「ジェットに追いかけられてるの!」

「今日は何を?って、まあ確かに昨日も駆け込んでるけどね。」

「小さな事は気にしないでね。おじいちゃま。」


 ここはギルモア研究所。

この部屋はギルモア博士の書斎。


 博士が調べものもしくは、なにかの研究でここに隠っている時にズケズケと断りもなしに入室できる者は、この研究所がいかに大所帯といえどもイワンの他には、今ここに乱入してきたソレイユとルナぐらいなものである。

 現在8歳。あのジョ−とフランソワーズの子供達にしては、かなりの悪戯盛り。


 勢いよく駆け込んできた二人は、部屋の真ん中にあるソファーに当然のように落ち着く。

そんな二人を見て、ギルモア博士は書籍やレポートの山から目を上げて彼等に話し掛けた。


「昨日はピュンマで、その前はグレートだったような。」

「グレートおじさんはピュンマの前の前。一昨日はアルベルト。」

律儀に説明するソレイユ。

「おおっそうじゃったな。それで、今日はジェットかい?毎日御苦労な事で。」

「ありがとう。そんなに誉められたら照れちゃうわ。」

「誉めとるわけでは、ないがのう・・・そうそうグレートが参っておったぞ。顔に描かれた悪戯画きが1日消えなかったといっておった。」

「あれは、グレートおじさんが酔っぱらって爆睡していたから、たっぷり時間使って画けたからだよ。ほかのみんなってすぐに気がついて目をあけちゃうんだもの。成功したのがはじめてだったから、嬉しくてついね。」

「うん!力はいっちゃったの。」

「たしかに力作だったのう。」

「でしょ?油性のマーカー全8色使いよ!」


のんびりと話すギルモア博士には、彼等の悪戯を怒る気はどうやらないらしい。

ふたりにも勿論悪びれた所は微塵もない。


「あっそうだ。ピュンマで思い出したわ。おじいちゃま!飛行機にリモコンつけられない?」

「なんでピュンマからリモコンなんじゃ?」


ころころとぶっ飛ぶルナの話についていけない。

ソレイユが詳しく説明するところによると・・・


「昨日、ピュンマに作ってもらった飛行機にね、これってネジ巻き式のレトロなやつでさあ、ピュンマが飛ぶようにしてくれたんだけど、折角飛ぶんだったら、派手に流れ星みたいにしたいねってルナが言うもんだから、花火背負わせて飛ばしてみたんだ。そうしたら上手く真直ぐに飛ばなくて、なぜかピュンマのお部屋に突っ込んでいっちゃったんだよ。」


「それで彼の大事な専門書を焦がしたんじゃな?」

博士は、昨日リビングで、彼にしては珍しく大きな声を出して嘆いていたピュンマの姿を思い出していた


「そうなのよ!だから、リモコンが必要かな?って。」

「その前に花火は止しなさい。危ないぞ。」

「それは大丈夫。花火は、火気厳禁だってママン・フランにとめられちゃったから、もう使えないんで」


「・・・それはそれは・・・考えておこう。で、今日のジェットには何をしたんじゃ?」

「部屋に置いてあった雑誌をママン・フランに見せただけよ。」

あっさりと答えるルナ。


「それでどうしてジェットに追い掛けられとるんじゃ?」

「ママン・フランがさっき、その本、燃やしちゃったから」

「燃やした?なぜフランソワーズはそんな過激な行動にでたのじゃ?」

「だってしょうがないよ。とってもHな写真ばっか載ってたんだもん。」

「それで、『おれの 大事な本を〜っ』て追い掛けてきたの。ジェットってほんとにHなんだから!」

 軽く答えるルナには、『人の部屋から人のモノを勝手に持ち出した事の善し悪し』についての部分が完全に欠落している。

博士はその事に気が着いていないのだろうか?


「ホッホッホッ!なるほどのう。ふむ?それでは、アルベルトには何をしたんじゃ?」

「カギがついている黒い大きな本を見つけたんだ。これ何?って聞いたら、すんげえ怒られた。」

ソレイユがオーバーに『すんげえ』を強調して答える。


「本がらみが続くのう?それで?それだけで、怒られたんかい?」

「うん、実はね、それ、本棚の奥の方にしまってあってね。ちょっと妖しい感じがしたんだ」

彼にも『人の部屋に立ち入りは自由』が大前提にあるらしい。


「隠してあったのを掘り出したんじゃな?」

「そうともいうかな?それでね、アルベルトはリビングにいたからそこまで持っていったんだ。鍵がかかっていて中がみえないから、鍵を開けてもらって読ませてもらおうとおもってさ。そしたら、『こんな所に持ってくるな〜!』って怒鳴られた。」

「ほう?アルベルトにしては、珍しいのう?それでその本の中は見せてもらえたのかね?」

「ううん、だめだった。」

「残念、ダメだったのか。では、ちゃんと本は返したのかな?」

「すぐに返したのに、あんなに怒ったのよ。ねえ、おじいちゃまあの本やっぱり怪しいわ。タイトル何もかいてないし、カバーがやけにしっかりしてたし、やたらと厚いし。」

「しかもそのカバーね、お手製みたいだったよ。それにパパ・ジョ−もいっしょになって怒り出すし。」

 余程怒られた事が不本意だったのか、ルナも加勢して説明する。

「ジョ−も、か?」

「そう。人の大事なものを勝手に持ち出しちゃあだめって。」

「そのとおりじゃな。ふむ?アルベルトの大事にしとる本ねえ?儂には、よくわからんが???」

「でもね、ちょっと不思議なの。パパ・ジョ−もアルベルトに怒られてたのよ。『おまえのせい』だって。なんであたし達があの本持ち出したら、パパ・ジョ−のせいになるのかしら?」

「ふむ?よくわからんが?」

ギルモア博士にもますます不可解な状況になってきている。

「うん。パパ・ジョ−はね、アルベルトに『その本、まだ持ってたの?』って聞いてたけど。そしたら『この本のおかげだろっ!こいつらは!それを仇で返すようなやつに育てたお前が悪いっ!』って。ねえ?どういう意味かわかる?」

「さあ?『仇で返すようなやつ』はきっと君達なんじゃろうが、心あたりは?」

「ないけど?」

「ほう?さっぱりじゃな?アルベルトかジョ−にききなさい。」

 博士もアルベルトがそんなに大事にしている本に心当たりは、ない。が、興味はでてきたので自分から尋ねてみようと思っていたりする。


「・・・恐くてきけないよ。」

ソレイユはあからさまに肩を竦めてみせた。


「うん!やっぱり妖しいわ。絶対に今度こそあの本の正体みてやる!」

ルナは両手に握りこぶしを作って力んでいる。


「・・・そんなに張切らんでもよかろうに。」

こんな数々の悪戯告白をギルモア博士はニコニコと微笑ましく感じながら聞いている。

やはり怒る気はないらしい。


そしてパイプに手を伸ばす。


そのパイプにも悪戯が・・・ 


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 さて、ここに出てきた『アルベルト所蔵の鍵付き黒カバーのぶ厚い本』ですが、発見場所が別にございます。所在地は・・・『悪戯じゃないよ』の最後に入口がございますので、そちらからお入り下さい(^▽^)


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