「君たち・・・なにしているんだい?」
そろそろ梅雨入り宣言でも出そうな、シトシトと霧雨が降り続いていた午後・・・ギルモア研究所のリビングのテーブルの上には、双子が盛大に「工作道具」を並べていた。
「あのね〜これをこう、切って、ここにはると・・・ほらね?お屋根が出来たでしょ?」
「ふーん・・・こんな「本」があるんだ?楽しいかい?」
「うん♪、見てみて〜綺麗に切れているでしょ?」
「そうだね。これは・・・「窓」かな?」
「そうなの〜♪」
(これって・・・幼児向けのコラージュってことなのかな?)
双子の手元を興味深そうに覗き込んでいるのはピュンマだ。
静かに黙々と手を動かす双子を眺めていると、
「よくできてるわよね。こんなモノがあるなんて、私も知らなかったわ。」
「やあ・・・フラン。2人ともやけに楽しそうにやっているものだから、ついね。」
「そうなの。えらく気に入っちゃてね。幼稚園にも似たような教材があるらしくて・・・そこで覚えて来ちゃったの。さっき、一緒にお買い物いったときに本屋さんでこれを見つけて・・・買うってきかなかったのよ。」
「ふうん・・・買ってもらったばかりなのか。どうりで・・・大人しく取り組んでいると思ったよ。」
「ふふふ・・・はさみの練習と、上手にノリで貼る・・・練習ね。これ、レベルがあるのよ?最初は簡単で大きなモノを切るところから始まって、だんだんと細かく丁寧に切らなくては、完成しないらしいの。それに、最初の段階は貼る場所も決まっているけど、最後には、自分で「絵」を作ることが出来るのよ。」
「想像力も養える・・・ってわけか。」
「そんなところね。」
2人の会話を頭の上で聞きながら、双子は一心不乱に1枚の「絵」を完成させようと懸命だ。
「なるほどね・・・。」
そして、それ以上にその作業に興味を引かれたピュンマ。
まさか、自分も幼児と同じ「本」を購入して切ったり貼ったり・・・そこまでは手を出すわけにもいかず、彼は、おもむろにPCの前に座ると起動させる。
そうして・・・彼はある操作を始めた。
しばらくして、双子の「絵」が完成する。
「ピュンマおじちゃま〜見てみて。綺麗に出来たでしょ?」
得意げに完成品を持ってきたルナの表情は満足感で一杯だ。
「どれどれ?うん、上手だよ。いつの間にか、はさみも上手に使えるようになっていたんだね。」
2人の作品は、ところどころはさみで切りすぎていたり、ノリが多すぎてぶよぶよしていたり・・・でこぼこではあったが、5歳に成り立ての彼等にしてはなかなかの力作だった。
「切ったり貼ったり・・・楽しかったかい?」
「うん!」
ピュンマはちょっと自慢げにPCの画面を2人に示す。
「じゃ・・・こんなのはどうかな?」
「あれれ?・・・これなんだか変じゃない?」
場面には一枚の写真。しかし、どうも・・・普通じゃない。
「これはね、はさみものりも使わないけど、今君たちがやっていたと同じように「絵」がかけるんだよ。」
「面白そう!」
好奇心旺盛な5歳児・・・さっそくピュンマの「絵」を覗き込む。が、どうもおかしい?
野原の風景の中に双子もおなじみのおじさま達がおさまっているのだが・・・どうもちぐはぐな印象だ。
どうやら・・・身体のバランスが酷く悪いようだ。
双子もそこまでわかるが、理由までは???
首を捻っていると、ピュンマが種明かしをしてくれる。
「これはね、あちこちの画像を合成してあるんだ。ほらここ・・・ソレイユ?君の身体にジョーの顔をくっつけちゃったんだよ。わかるかい?」
「ああーっ!本当だ!僕とパパ・ジョーが合体してる?」
「そう。この部分だけ、全然別の背景にもできたりして・・・ほら?どう?」
「すごーい!僕にも出来る?」
「ははは・・・やっぱり食いついてきたね?いいよ、教えてあげよう。」
ピュンマは、2人を自分とPCモニターの前に挟み込むように招き入れると、2人の背後から操作する。
やる気満々な2人は、簡単な操作をすぐに覚えて自分の手で作業をしたがる。
ピュンマは自分が持っていた写真をいくつか取りだして、双子に自由に提供してやると、ふたりであーでもない、こーでもない・・・と「絵」を作り出す。
「この写真かわいーっ!ねっ?これ使っちゃおう♪」
「これ持たせようかな?」
「うーん・・・こっちのお顔の方が、ルナ、好きだな♪」
「後ろはこれでいい?」
「いいよー。 あっ!このおりぼんつけてみて!」
「ピュンマ〜ここちょっと変になっちゃったーっ。直して!」
「・・・・・」
「きゃははは♪ パパ・ジョーかわいいーーーっ!」
できあがった1枚の「絵」・・・モデルはジョーだったのだが・・・。
(ははは・・・こいつらやるな・・・)
操作を教えてしまったピュンマ・・・一瞬、できあがりに絶句したが、あまりにも単純に楽しんでいる双子とそのできあがりの「作品」に笑いがこぼれる。
(・・・確かにこれは「かわいい」や。)
「2人ともすごいね。ちょっと貸してごらん。」
仕上げに細かな修正を施してやると、りっぱなコラージュが完成する。
「これ・・・ジョーにプレゼントするかい?」
「「うん♪」」
「よし・・・じゃあ・・・。」
ちょっと悪のり気分のピュンマ。
高画質で丁寧にプリントアウトしてやる。
「ありがとう。ピュンマおじちゃま♪」
「どういたしまして、おっと・・・それをジョーに見せにいく前にそこ・・・テーブルの上! 片づけておけよ?」
「「はーい」」
写真は、その後、研究所中を駆けめぐることとなった。
絶句して煙草を落とした者や、目に涙を浮かべるほど笑った者もいたが・・・「改造」された本人は・・・案外まんざらでもなかったとか・・・?
貴方も1枚いかがですか?
鬱陶しい梅雨を爽快な気分にさせてくれる・・・1枚ですよ?


