ハロウィンの楽しみ方

〜 ギルモア研究所による一例 〜


「ルナね〜やっぱりこのお洋服がいい〜〜〜!」

「僕はこっち!お願い!子供用に作りなおして!」


 ギルモア研究所のリビングの一角。

 パソコンのモニター前に、なにやらわらわらと数名が群がっている状態。

 しかも・・・かなり賑やかだった。

 頭を寄せ合っているメンバーは、双子の兄妹・ソレイユとルナ。

 ママン・フランことフランソワーズ。

 そして、パソコンを操作しているピュンマ。

 ジョーは、一歩離れたソファーで成り行きを見ていた。


 「今から注文して、お直しして・・・間に合うかい?フランソワーズ?」

 話を聞きかじったジョーが心配そうに尋ねてくる。

 「・・・そうねえ〜ルナの方は、買っちゃいましょうか?サイズは・・・これあたりで多分大丈夫だわ。ソレイユの方は、こっちを買って、手を加えることにしましょう。」


 「よし!じゃあ、申し込んじゃうよ?」

 「ええ、お願いねピュンマ。」


 どうやら、ジョーの心配は全くの無駄だったようで・・・。

 余裕のフランソワーズは、ノリノリの状態のようだ。

 一体?何を子供用に「作り直す」というのか?


 「ピュンマ?どのくらいで到着するかしら?」

 「ちょっと待って・・・。ウン!シーズンモノは早いね。3日で到着するってさ。」

 「やった!それなら、全然、余裕で間にあうわ。」


 シーズンに多いに関係ありらしいが・・・。



 実は、この賑やかさの原因は、10月の末に催される子供のためのお祭り、<ハロウィン>のせいだった。

 その仮装用の衣装を何にするか?・・・で、ピュンマを巻き込んで(使って・・・とも言う(^_^;))、ネットショップで物色していたのである。


 「うわーい!ありがとう!ピュンマ!ママン・フラン!」

 「どういたしまして。ルナ、ソレイユ?気に入ったのが見つかってよかったね。楽しみじゃないか?」

 「「うん!」」


 双子に話しかけながら、鮮やかにパソコンの操作をするピュンマは、あっという間に2人分の衣装を申し込んでいた。

 そして・・・

 「ハロウィンね・・・日本でもやっているとは、思わなかったけどな?」

 操作を終えたピュンマが、椅子をくるっと反転させて、ジョーが座っているソファーの方に向きを変えながら、話しかける。

 「最近の現象じゃないかな?僕の子供の頃には、ハロウィン自体、よく知らなかったよ。」

 「あっ、そんなもんなんだ・・・。」

 ジョーの返答に、ちょっと「納得」の表情を浮かべるピュンマ。


 「そうさ・・・。日本人は「行事」が好きだからね。」

 「そうね・・・これからのシーズンは特に忙しいわよね?ジョー?」


 フランソワーズは、リビングとキッチンの間を行ったり来たりしながら、器用にもしっかりと会話に加わる。

 「うん・・・クリスマスが終わったら、すぐにお正月の準備をしなくちゃいけないしさ。2月には節分で厄よけして、春になれば・・・花見だし・・・。」

 「あっ、花見は歓迎だな!・・・あれは、楽しいよ。」


 ・・・ピュンマって案外「飲む」んだよな?・・・

 ジョーは密かに心の中で、今シーズンの「花見」の情景を思い起こす・・・。


 その時突然、フランソワーズがそこにいるみんなに聞こえてしまう程度の声で呟いた。

 ・・・誰に話すでもなかったのだろうが・・・。


 「でも・・・危ないわよね?子供達だけじゃ。この子達だけじゃないし。」


 「フランソワーズ?何の話し?」

 たとえ、離れていてもきちんと反応を示すのは、やっぱりジョー?

 「あっ、ごめんなさいね。ハロウィンのコトよ。この子達が、家家を廻るわけでしょ?その時のこと・・・。」

 「そうか・・・暗くなってからだものね。誰か、ボディガードがいるかな?」

 「フランソワーズ?ソレはぼくが・・・。」


 しかし・・・

 ジョーが当然のようにガードを申し出ようとした、その献身的は台詞は・・・リビングの戸を荒々しく開け放した大きな音と、妙に明るいその音を出した張本人の声で、見事にかき消されていた。


 「うお〜〜〜い!聞いてくれよ!!!」


 リビングの面々の視線が一斉に、その主・・・ジェット・・・に集中した。


 「・・・何があったの?」

 「まったく・・・相変わらず騒々しいね?君は・・・。」

 「何事?ジェット?」

 「また何か壊した?」


 ・・・一応に、少々冷たい反応・・・と、言えなくもない・・・。


 「!!!違げーよ!勝ったんだよ!勝ったの!念願の1勝だぜ!」


 ジェットは人差し指を突き立てて、みんなに向かってぐいっと突き出す。

 これぞ、No.1だぞっ!・・・と、いわんがばかりに・・・。


 「・・・何の話し?」

 なおも冷たい反応は・・・フランソワーズか???


 「勝てたの?それって・・・オセロのこと?」

 かろうじて、ジョーがジェットの「勝った!」の理由に気が付いたらしい。

 「オセロ?ああ!昨日からずーッとアルおじさんに負け続けていた、あれ?」

 ソレイユ=お子ちゃま は、オトナでは憚られる台詞でも全く詩にもせずに発言する。←よくある話で・・・。


 「・・・悪かったな?負け続けで・・・!そうだよ!それ!とうとう1勝したんだぜ?」

 多少の冷たい視線よりもこの「1勝」は大きいらしい。


 「ふうん?よかったわね?ジェット・・・。」

 「なんだよ?ルナ?やけに冷たいじゃないかよお?」

 ジェットがつきだした「No.1」の指の代わりに唇を突きだして、ルナにくってかかる。

 「だって・・・やっと『1勝』なんでしょ?」

 今日のルナは、あくまでも冷ややかだった。


 「いいんだよ!1勝すれば!だってよお〜この1勝はオプション付きだったんだぜ?」

 どうやら、特別な理由がちゃんと存在していたらしい。

 ジェットはそれこそ「鬼の首を取った」が如く・・・ニコニコだ・・・。

 「???オプション?」

 これには、ルナも興味津々で、反応する。


 「そう!アルベルトが、も俺の言うことをひとつだけ聞いてやるっていうオプション!」

 満面の笑みのジェット・・・それに対して・・・目に見えて落ち込んでいるアルベルト。

 ・・・なるほどね・・・<一目瞭然>


 「なにそれ?アルベルト?本当にそんな気前のいいこと言っちゃったわけ?」

 フランソワーズが、みんなのお茶を用意しながら、呆れた・・・と、言いたげな口調と同情の視線でアルベルトを見やった。


 「・・・ああ・・・まさか俺が負けるなんて・・・。」

 「自分でも、思ってもいなかったんだね?アルおじさん・・・。」

 「その通りだよ!・・・ソレイユ。ああ・・・近年にない失態だな・・・・、俺としたことが・・・。」

 アルベルトにしては大げさな態度をとりながら、ソファーにどっかりと腰をおろした。


 「かなり、落ち込んでるのね?アルおじちゃま?元気出してね。」

 「ああ・・・ルナ、ありがとうよ。」

 アルベルトに対しては、やけに優しいルナだったりする。

 「策士、策に溺れる・・・ッテヤツだね?」

 「・・・ソレをいうなら・・・単に油断した・・・でじゅうぶんだ・・・ピュンマ・・・。」

 笑いをかみ殺したピュンマに、アルベルトが一睨みするが、どうも弱々しい。

 いつもの迫力は・・・まるで影を潜めてしまっている。

 それだけ・・・ショックだったと、いうこと・・・らしい。


 「気の毒に・・・。」

 ジョーには、もはや、彼にかけるべき言葉が見つからなかった。


 「で?ジェット?アルベルトに何をさせるつもり?」


 「へへへっ!ソレはこれから考えるのさ!」


 フランソワーズに大事なところを突っ込んでもらって嬉しいジェットだった。

 が、彼もこのリビングに飛び込んできて以来、気になっているコトを尋ねてみることにした。


 「ところで・・・お前達、パソコンの前にたかってなにしていたんだ?」


 「ハロウィンの準備だよ。」

 ソファーに落ち着いたピュンマが、お茶を口元に運びながら明るく答える。

 「ハロウィン?あの俺様の国でやる、あの子供の祭りのことか?」

 ジェットとアルベルトもソファーに落ち着いて、フランソワーズからお茶をもらいつつ、話が進む。


 「そうだよ。最近、日本でもやるところが出てきているんだよ。」

 「この子達もね?今回、初めて参加したいって言い出したの。その為の衣装選びをしていたところよ。」

 「へえ〜〜?日本で、やっているのか?コレを?」

 「知らなかったな。」

 先程のピュンマと全く同じような反応を示すジェットとアルベルト。


 「ええ・・・この辺の子供会では、協力家庭にカボチャやカキのランタンを門柱においてもらって、ソレを目印に子供達が廻るのですって。」

 フランソワーズはひとりひとりにお茶を配る手を止めないで、簡単な説明をしてくれた。


 「そうなの!お友達から誘われちゃったの。」

 「ふーん?それで、どんな衣装にしたんだい?」

 話題が自分達の方に向いてきて、双子達は、ご機嫌だ。

 「僕はこれ!ちょっと大きなサイズしかないから、こっちのヤツをママン・フランが直してくれるって!」

 「へえ〜かっこいいじゃないか?」


 ソレイユの衣装は・・・ちょっと気障な、タキシード着用の魔界の紳士・・・がコンセプトらしい。

 黒いタキシードに黒マントとハット。蝶ネクタイが似合いそうである。


 「アタシはこれ〜どう?かわいいでしょ?」

 「あれっ?コレって・・・アニメのキャラじゃないか?」


 「そうなの〜ちょっと憧れちゃう!」

 ルナの衣装は、真っ黒なワンピースと、頭に真っ赤な大きなリボン。

 必須アイテムのほうきを持って、シンプルだけど、かわいい見習い魔女さんである。

 アニメのキャラさんは、このいでたちで、荷物を届けてくれる。


 「そうか。で、ルナはコレ着て、何か「お届け」してくれるのか?」

 「いやん♪アルおじちゃまに頼まれたら、なんでもOKよ♪頑張っちゃう!」

 「はははっ、そうか・・・。考えておくな・・・。」

 「は〜い♪」

 アルベルト・・・少々浮上気分か?


 「ふうん・・・大人用の衣装もそろっているんだな・・・ずいぶんと・・・。」


 アルベルトは、再び開いたハロウィン関連のショップのサイトを覗き込みながら、興味深げに眺めている。

 「そうなのよ。ほら?みて!よくできていると思わない?」

 「ああ・・・仮装パーティーだな・・・まるで。」

 俺には関係ないな・・・といった顔をしながらも、ちょっと楽しそうである。


 「おもしろそうだな・・・。俺もこれあたり、着てみたいかも♪」

 ジェットの方がよっぽど、素直な反応だ。


 「あははっ♪ジェットにはお似合いかもね?もっとも君ならほうきにのって、ソレらしく空を飛ぶことも可能じゃないないかい?」

 「そりゃそうだな・・・だけど、ほうきって魔女の専売特許なんジャないか?」

 「ふむ・・・確かに・・・男性は・・・悪魔か?魔法使いか?」

 「そおか?だけどよお?俺さあ、男の魔法使いが、こーんなとんがり帽子被って、魔法のほうきもっていたって記憶があるんだけどなあ?確か・・・その帽子が、魔法を強くする作用があってさ、弟子が失敬してとんでもない魔法をかけちまって、大騒ぎになっちまうっていうの・・・どこかでみたような・・・?」

 「その弟子っていうのは、もしかしたら、お前の国出身の世界一有名なネズミじゃなかったか?」

 「そうそう!やっぱ、いたろ?そういうの!」

 「確かに・・・うーむ。ほうきは魔女特有の持ち物ってわけでもないのか。」

 「魔法使いには男女の差なく、ほうきは必須アイテムってことなんだね?きっと!」


 ピュンマの突っ込みにいつしか真剣に答える男ども・・・。


 「ソレイユは魔法使い?魔王か?」

 「うん♪そう♪魔法が使えるの!」

 「吸血鬼でも似合ったんじゃないか?」

 「うーん・・・。でも、吸血鬼じゃ、魔法は使えないでしょ?」

 「魔法が使えるかどうかと牙があるかどうか、程度の違いしかないと、思うが・・・。あの衣装ならば?」

 「だけど〜僕は魔法使いの方がいいの〜!」

 ・・・あまり意味はないがやけに熱が入っている。

 どうやら、みんなイベントはキライではないらしい。


 「そうだ!ジェット?貴方、仮装してみない?」


 フランソワーズが、唐突にジェットに振ってきた。

 「俺が?仮装か?なんでだ?」

 「今、着てみたいって言ったでしょ?どれでもジェットが気に入ったものを用意してあげるから、子供達と一緒にご近所を廻ってくれないかしら?ああ!そうよ!そう言えば、あなた達がここの入ってきた時、ちょうどボディーガードが必要ね?ッテ話していたところだったのよ。」

 「ボディーガード?」

 「ええ、暗くなってからのお祭りでしょ?小さい子も沢山いるし、いつもはお母様方が数人で付き添ってくれるらしいけど、男の人が引率するって言えば、とても喜ばれるわ。どう?衣装はプレゼントするわよ?」


 フランソワーズの力説はともかく・・・仮装してお祭りが楽しめるのは、悪いコトじゃない。

 人様の役に立って、自分も楽しめて・・・ジェットに断る理由は見つけられなかった。そこで、彼は、もっと「いいこと」を思いつく。

 ジェットにとっては最高の思いつきだったろうが・・・ある人にとっては、「余計なこと」意外のなにものでもなかった・・・のだが・・・。


 「そうだな・・・いいけど・・・。俺、コレがいいな!それと・・・。なあ?フラン?こっちも一緒に注文してくれないか?」

 ジェットが、モニター画面の中のある1点をゆびさしながら、フランソワーズに向かって言った。

 「えっ?これも?どうして?」


 問い返されたジェット・・・にっこりと、実にアヤシイ笑みを浮かべると、首をぐるっと回して目標人物に視線をあてる。そして・・・

 「へへっ!アルベルト!今決めたぜ!俺の言うこと何でもひとつきくんだったよな?」

 「・・・ああ・・・一体何、とんでもないことを思いついたっていうんだ?」

 「お前も俺と一緒に子供達をガードしようぜ?」

 「・・・そんなんでいいのか?」

 一瞬身構えたアルベルトだったが、予想もしていなかった、簡単な要求に拍子抜けした・・・かに思えた。

 しかし・・・ソレは「甘い」と言うモノ。


 「おっと、まだ全部言ってないぜ?」

 「・・・・・(やっぱりな・・・。一体なんだ?)」

 再び緊張するアルベルト。


 ジェットの留めの一言は・・・

 「この衣装着て、俺と一緒に子供達をガードしながら、ハロウィン・パーティーに参加するぜっ!しかも、俺様がばっちり「変装」させてやるからさ!本格的なハロウィンにしてやろうぜ」

 「???なんだと?」

 「これ?この衣装って・・・。じゃあ、仮装は???」


 今ひとつ、事態が飲み込めていないアルベルト。

 他も面々もジェットが指を指したその衣装を見て、初めてジェットの真意が見えてきた。


 「うわーい!アルおじさんも仮装してくれるんだね?」

 「一緒に歩いてくれるの?コレを着て?ルナも嬉しいな!」

 双子は単純に大喜びである。


 が・・・アルベルトは・・・「・・・・・」・・・絶句の状態。


 「・・・ジェット・・・素晴らしい要望だね?」

 「だろっ?いい案だろ?」

 「うん・・・確かに。・・・アルベルト?ご愁傷様。」

 「・・・・・」

 「アルベルト?こうなったら・・・覚悟して楽しむコトね。」

 「フランソワーズ?お前、ヒトゴトだと思っていやがるな?」

 「ええ・・・その通りよ。ピュンマ?コレとコレも一緒に注文しておいてくれる?」

 「OK!お安いご用さ。」

 ジェットの妙案に感心するやら、同情するやら・・・。

 一体、アルベルトはどんな仮装をさせられるのか???


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