「ねえ、グレート叔父さんどこにいるかしらない?」
リビングのドアを入ってくるなりソレイユとルナは、ソファーでノートパソコンを叩いていたピュンマに尋ねた。
ルナの手には数枚の紙がひらひらとしている。
「グレートなら張々湖飯店だよ。大人といっしょに。」
「えーっそうなの?なんで?」
「調査の手は足りているから、稼げるうちにもう少し稼いでおくんだってふたりで張り切っていたよ」
ついこの前まで街のインターナショナル・スクールに通っていたソレイユとルナであったが、通学途中でB.G.らしき者に誘拐されかけ、今はギルモア研究所に戻ってきていた。
平和な時には普通に学校にも通い、極平凡な暮らしをしていたつもりだが、何かと生活を脅かす影がちらほらと現れる。その度に安全第一に考えギルモア研究所またはドルフィン号を居住まいとする彼等であった。
子供達のとっては不自由な暮らしにもみえなくもないが、当人たちは到ってスクスクと成長し、満更この生活も悪くもないらしい。
どうやら、ジョ−やフランソワーズをはじめとするメンバー達の溢れかえらんばかりの愛情の賜物なのかも知れない。(単に甘やかしているだけともとれるが)
誘拐事件にB.G.が係わっているか、まずは情勢を調べようとメンバー達が、ここギルモア研究所で情報網を駆使して収集している最中であった。
そして、これからの自分たちの出方も合わせて検討中。
そして、ここはそのギルモア邸のリビング、比較的落ちついた午後の昼下がり。
「なんだあ。いないんじゃあ仕方ないなあ。どうしようか?」
二人は思案顔でソファーに腰掛け、ルナの持っていた紙っぺらに目を落とした。良く見るとそれは便せんのようだ。
ピュンマはキーボードを打つ手を止めて二人に尋ねた。
「何か用事でもあったの?」
「うん。学校の友達に手紙をかいたの。ゆっくりさよならができなかったから。それで英語のスペルをチェックしてもらおうと思ってさ。」
「だったらジェットにしてもらったらいいじゃないか?僕でもいいんだけど、仕事溜めちゃったからなあ。」
小さな声で遠慮がちにいったにもかかわらず、彼等の後ろから声がやってくる。
「げっ!いたの?」
「いたの?はないだろ!失礼なやつだなあ。ところでなんで俺じゃだめなんだよ?」
怪しいと言われて黙っているジェットではない。ちゃんと二人に詰め寄ってくる。
「だってジェットのチェック甘いし、この前見てもらったらけっこうスペル間違ってたし。それにスラングに気付かないでそのまま話して驚かれた事もあったしね。すっごく恥ずかしい思いしたんだから。まあ、スペルは気付かないでそのままかいちゃった僕達も悪いとは思うけど。」
「あれは痛かったわ。読書感想文の宿題だったのよ。」
「話し言葉と文章は別の話だろ?」
「だからこれはちゃんとしたお別れのお手紙だからグレートおじさんにって思っていたのに。」
「もっともな理由だね」
黙って聞いていたピュンマの冷静な一言が響く。
「ちぇっ!なんだようピュンマまで・・・」
「まあまあ、ジェット気を取り直してスペルをみてやってよ。君しかいないんだし。」
口をとがらして拗ねているジェットに言い過ぎたかな?と反省しながら取りなすピュンマ。
「そうね、まあしかたないか。ジェットおにいさまお願いしま〜す」
ルナも諦めたのか、背に腹は変えられないと思ったのか、極上の笑顔でお願いしてくる。
「なんでえ、散々こけにしておいて。」
ジェットの機嫌はまだ直らないようで、どっかりとソファーに足を投げ出すように座った。
「まあまあ、悪かったよ。僕までちょっと調子に乗り過ぎた。機嫌直せよ。それにこれから本当にこの子達の英語を見てもらおうと思っていたところだし」
